ああ、またセイタカアワダチソウとススキの話が出ている。
最近、セイタカアワダチソウを見なくなったと思ったら、自前の毒素で栄養失調になったところに一度は破ったはずのススキの大反撃で追い詰められていると知って、なんというか独ソ戦の感。
— 宮永忠将@歴史&軍事もの書き (@hypaspist) 2021年5月29日
毒素戦、もとい独ソ戦ねえ。なんか発想が貧困だよな。
セイタカアワダチソウ対ススキの戦いから独ソ戦への連想は面白い。さらに広げて、毒素(軍事力)で栄養失調(経済不振)に陥る軍事大国をススキ(世界の民)で追い詰めていきたい。
— そが逸郎『「苦」をつくらない』8月出版・高文研 サピエンスを超克するブッダの教え (@itrsoga) 2021年5月29日
この人*1なんか、何やら「左」的な思想を披露しておられるつもりなのかもしれないけれど、この人とそっくりの発想でネトウヨがブログ記事書いてたんだよ。一昨年に弊ブログで取り上げて批判したことがある。
当時引用して批判したネトウヨのブログ記事にはもうリンクは張らない。その代わりに、上記記事の結論の部分だけ再掲しておく。
セイタカアワダチソウもススキも、人間が何もしなければ(=人為的攪乱がなければ)、草原が滅亡して低木林に取って代わられる段階で一時的に覇権を握るに過ぎない植物なのだ。そんなものにネトウヨ的価値観を持ち込んで、ススキに「がんばれよ」と声をかけろ、ススキは、私たち日本人の仲間なのだから、などとはいったい何を考えているのか。
ブログ主も愚劣なら、このブログ記事を無批判に引用した人たちも情けないとしか言いようがない。
私は1970年代の子ども時代にずっと鼻炎に苦しめられたことがあって、セイタカアワダチソウのせいではないかと疑っていた。そんなこともあって昔からセイタカアワダチソウは大嫌いだが、上記ブログ記事で引用したネトウヨのブログを知って、それまで好きでも嫌いでもなかったススキにも反感を持つようになった。しかし、ススキもセイタカアワダチソウのあとを追って低木林にとって代わられる運命にある。
そういや世界史でも、ソ連はナチスドイツを破ったけれども、スターリンもヒトラーのユダヤ人大虐殺に匹敵する大量殺人(いわゆる「粛清」)をソ連国内でやらかした。ヒトラーとスターリンは文化大革命で中国国民を大虐殺した毛沢東と併せて20世紀三大大量虐殺犯に数えて良いのではないかと思うが、ソ連全体としても独ソ戦を数少ない例外として負の歴史ばかり積み重ねたあげくに1991年末に終焉を迎えた。早いものでもう30年になる。
ただ、そのあとも新自由主義だの民族主義だのがもたらす災厄の時代が続いている。ススキを持ち上げてセイタカアワダチソウを悪者扱いをする愚行は、その悪しき民族主義の表れではなかろうか。一昨年に公開した前記記事で書いた通り、アメリカでは、ススキは現地でゴールデンロッドと呼ばれるセイタカアワダチソウの生存を脅かす獰猛な外来種として憎悪の的になっている。そもそも自然界での現象に人間の勝手な価値観を当てはめて悦に入ること自体が傲慢だ。仏教がそんな考え方を許すはずがないと私は思うのだが、いかがだろうか。