メディアの情勢調査に対して持つべき基本的な認識は、三春希充氏の下記ツイートに尽きる。
情勢報道はやがて選挙結果によって検証されることになりますから、各社とも、あえて自らの信頼を落とすようなことは行わないはずです。朝日もまた独自の分析によって、最も妥当と評価されるラインを出しているのでしょう。https://t.co/afvrgZ6dub
— 三春充希(はる)⭐第49回衆院選情報部 (@miraisyakai) 2021年10月27日
各社とも「引き締めを狙う」などということは、よほど特殊な場合を除いてやらない。その理由は三春氏が指摘する通り。特殊な場合として私が考えているのは、四国新聞が香川1区の情勢を「小川リード」と報じたようなケースだが、しかしこれとて各社の情勢調査を見ると、単に生の数字を反映した記事にしただけである可能性が強まってきた。各社接戦とはしているが、小川の名前を後にした例は、私の知る限りないからだ。
各社による総議席数の予想は下記。
衆院選2021 情勢調査(10/27まで) pic.twitter.com/PW43byeMuN
— りす 衆院選2021 (@senkyo_election) 2021年10月27日
私が注目しているのは下記の4点。
まず自民党だが、このところ選挙の開票結果は、ことごとく事前の情勢調査より自民党の当落あるいは議席数が悪くなっている。私が立てている仮説は、これは新型コロナウイルス感染症に対する自公政権の対応*1があまりにもひど過ぎたせいで、普段自民党びいきであっても投票所に言ったり自民党の候補に投票する気があまり起きないなどの傾向があるのではないかとのこと。各社ともそれはわかっていても、全国一斉に行われる国政選挙の結果との対応は、過去一度の例もないのでなかなか思い切って反映できない。たとえば朝日がこのトレンドをあまり反映させずに生の数字に近い議席予測をする一方、読売などはかなり強くこのトレンドを意識した可能性はある。しかしそれは「引き締め」という意味ではなく、これまでの衆参院の補選や再選挙、それに地方選で生じたであろう調査結果を選挙結果の乖離をいかに埋めるかの努力の反映だ。
第二に、立憲民主党も、一昨年の参院選でも今年の都議選でも情勢調査より結果が悪くなっている。これはこの政党の政策が魅力を欠くせいではないかと私は考えている。特に朝日の情勢調査記事を読むと、どの地域でも立民の支持者は高年齢層に偏っていて若年層の支持が弱い。同党の経済政策が保守的(経済右派的)に過ぎることが原因ではないかとの仮説を私は持っている。あれでは若年層は将来への希望が持てないだろう。しかし選挙区では野党共闘の効果と、前述の自公政権のコロナ対応の酷さという敵失があるために、ある程度勝負になっているといったところではないだろうか。
第三に維新の躍進が予想されていることだ。私は、維新こそ「古色蒼然たる」経済政策を掲げる政党だと認識している。立民が経済右派なら維新は経済極右であって、百害あって一利なしの政党だ。テレビ党論で松井一郎が、20年前に小泉純一郎などがよく言っていた「まだカイカクが足りない」などという使い古された言葉を未だに使っているのかと唖然とした。その維新が今回躍進するという。これほど頭の痛い話はない。おそらく立民が共産と野党共闘を組んだことで、これまで民主・民進系支持層だった人たちのうち経済右派を志向する側の人たちが維新に流れたのだろうと思うが、この一時的な(と私は確信している)維新への流れが止まらない限り、本格的な政権交代への流れには至らないのではないだろうか。
最後に某組だが、参院選から昨年の都知事選との間に既に見られた該組の衰勢が今度はどう出るのかというのが興味の焦点だ。私は2013年の参院選における生活の党と同じような結果になるのではないかと思っているが、そうなるかどうかはわからない。1人のカリスマに頼るこの組も、メリットよりデメリットの方がずっと大きいと信じているので、某組0議席という私の予想には多分に願望が込められている。従って客観性は全くない。なお同組の主張には、経済政策で見るべきところ「も」ある*2ので、そこは残念だ。同組の経済政策に賛成する人たちが、なぜ山本太郎が独裁する組のガバナンスに対して沈黙を続けて全く批判しないのか*3、私は不思議でならない。
私個人としては、コロナでさんざん疲弊したので、自民党の議席は少なければ少ないほど良いと思うが、その反面で各社の情勢調査と選挙結果の比較対象には、今回は特に興味津々だ。
今回の衆院選は「過渡期の始まり」あるいは「流動化の始まり」を告げる選挙になるのではなかろうか。