kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

小川淳也、東洋経済の取材に答えて良いことは言っているのだが……

 小川淳也というと「オザシン・ヤマシン」推しの政治家というイメージが強かったが、ここにきてネットの「反緊縮」論者たちから「消費税100%の増税論者」として批判されることが増えている。下記東洋経済オンラインの記事からその理由の一端がうかがわれるように思われる。

 

toyokeizai.net

 

 以下引用する。

 

いまだ支持伸びぬ野党が魅力取り戻す3つのカギ

密着取材の映画が反響呼んだ小川淳也氏が語る

 

林 哲也:東洋経済 記者

2021/11/01 4:30

 

10月31日投開票の衆院選に際しては、与党も野党もばらまき的な公約を並べた。持続可能な日本を構築するため、国民に負担増を求める政党が政権を担うことは不可能なのか。

衆院選で、平井卓也・前デジタル相(自民党)との激戦が話題となった香川1区の小川淳也・前衆議院議員立憲民主党)は、「将来的には北欧型に近い社会に」が持論だ。2020年の公開の映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』で注目を浴びた小川氏が、総選挙後の政治の課題を語った。(インタビューは10月12日に実施)。

(中略)

 

若い世代ほど「高負担、高福祉」の傾向が強い

 

立憲民主党は消費減税をうたっており、私もその必要性は理解している。しかし、長期的には法人税所得税の累進性回復、相続税や消費税なども含め、北欧型の税制改革を議論せざるをえない。

 

これは財務省的な財政収支偏重論に立ったものではない。社会全体を持続可能な形にソフトランディングさせるための、政策の全体像を踏まえた取り組みだ。

負担と受益に関して、ある思考実験をいろいろな人に提示している。

あくまで極端な例として聞いてほしいが、例えば消費税と反対給付を単純化して、「消費税ゼロ&ベーシックインカムゼロ」から「消費税100%&ベーシックインカム毎月10万円。ただし医療・保育・教育・介護など社会福祉すべて無償かつ社会保険料負担ゼロ」まで選択肢を設けて選んでもらう。

これまで圧倒的多数が選んだのは後者、つまり「高負担、高福祉」の選択肢だ。かつ若い世代ほどその傾向が強い。つまり、みんな負担が嫌なのではなくて、税を預ける政治に信頼が置けないということなのだ。

 

東洋経済オンラインより)

 

出典:https://toyokeizai.net/articles/-/465699

 

 このすぐあとに、小川淳也が示した “「消費税ゼロ&ベーシックインカムゼロ」から「消費税100%&ベーシックインカム毎月10万円。ただし医療・保育・教育・介護など社会福祉すべて無償かつ社会保険料負担ゼロ」まで(の)選択肢” が示されているが、ここには示さない。リンク元を参照されたい。

 小川は消費税率0%から100%までという、税を「消費税」に限定した上で極端な税率を示すという余計なことをやっている。その点は大いに気に食わない。単なる「税率」にすべきだった。

 しかしその欠点を除けば小川の問いはシンプルだし、立民党内のリベラル系グループ「サンクチュアリ」に属していることとも整合的だ。

 小川は「消費税ゼロ&ベーシックインカムゼロ」という選択肢でミルトン・フリードマンよりももっと過激な新自由主義の社会を表現し、「低福祉低負担」と「高福祉高負担」のどちらを選ぶかを問い、さらに「現金給付」(ベーシックインカム)と「現物給付」(医療・保育・教育・介護など)のどちらを選ぶかを問うている。小川が「高福祉高負担」の方が良く、「現金給付より現物給付を重視すべき」だと考えていることは明らかだ。そしてそれは多くの人々が選んだ選択肢であり、特に若者ほどその傾向が強いと小川は主張する。

 思い出すのは2000年代(2000〜09年または2001〜10年)のトレンドであって、あのおぞましい小泉ネオリベ政権に痛めつけられた人々の間では、高福祉高負担を求める傾向が急速に強まり、竹中平蔵が厳しく批判されるようになった。しかし2008年の大阪府知事選に当選した橋下徹2010年に「大阪維新の会」を立ち上げ、同じ2010年に河村たかしが「減税日本」を立ち上げた頃から流れが変わり、再び「減税真理教」的な動きが強まってきたように思われる。山本太郎が叫ぶ「消費税減税」及び「消費税廃止」も、税制全体で比重が上がりすぎた消費税の比重を下げるといった全体の構想をもっと山本ら論者が強調すれば良いといつも思うのに、山本はそうせずにワンフレーズ・ポリティクスに堕している。あれでは河村たかしと何も変わらないと思わずにはいられない。

 実際、研究者の論文でも、2000年代に伸びた高福祉高負担への支持のトレンドが2010年代に入って反転したと指摘されているようだ。下記は武川正吾らの論文の抄録等が掲載された学術雑誌「社会政策」のサイトへのリンク。以下に抄録を示す。

 

抄録

 

 社会支出に関する社会意識の4時点の反復横断調査の結果,2000年代を通じた高福祉高負担(福祉国家)への支持の上昇が確認できたが,2015年調査ではこの傾向が逆転した。各調査の回収率,サンプルサイズの差異を考慮し,性別・年齢でウェイト調整したデータによる再分析を実施したが,逆転の事実は変わらなかった。支持者の属性に関して,2000年と2015年のデータをロジスティック回帰モデルによって比較したところ,各種属性による高福祉高負担支持の構造が変化していることがわかった。年齢に関して,2000年には若年層(低い支持)から高年齢層(高い支持)への線形的関係が存在したが,2015年にはそれがなくなっていた。さらに年齢階層別分析と出生コーホート分析を行った結果,時系列に関する大きな趨勢は同様であるものの年代・コーホートごとに変化の仕方にばらつきがあることがわかった。とくに若い世代の高福祉高負担支持が相対的に上昇している傾向が確認できる。

 

 抄録をさらに箇条書きにすると下記のようになる。

 

  • 2000年代を通して、高福祉高負担への支持率が上昇するトレンドがあった
  • しかし2015年にはこのトレンドが反転した(つまり高福祉高負担を求める人々の比率が減った)
  • 2000年には低年齢層ほど低福祉低負担を支持し、高年齢層ほど高福祉高負担を支持し、かつ支持率と年齢との間には線形的関係があった
  • しかし2015年にはその関係が見られなくなった
  • 若い世代の高福祉高負担支持が相対的に上昇している

 

 2000年代後半(2006年)から政治ブログを書いてきた人間として、上記の指摘は肌感覚にぴったり合う。本当にその通りだと思った。今回の衆院選での維新の躍進をもっとも強く後押ししたのは30代〜40代の人たちだった。彼らは若いから、残念ながら維新の脅威はまだまだ続くとみなければならない。

 上記の研究結果と小川淳也の指摘には整合性があると思われる。つまり、2015年には若年層ほど低福祉低負担を求める傾向は既に見られなくなっていたが、その後5年経ってその傾向はさらに強まり、今や、少なくとも40代以下については若年層ほど高福祉高負担を求めるようになった、あるいはそうなりつつある可能性がある。

 一方、立民や共産の支持層は高年齢層に偏っているので、それが衆院選で伸びなかった一因になった可能性が高い。

 以下に東洋経済オンラインの記事の後半を引用する。その内容は小川淳也の主張だ。

 

立憲民主党の国会議員として、2009~12年の民主党政権が未熟さ、稚拙さもあり3年で倒れたことは、国民に対して今でも申し訳ないと思っている。国民が民主党にがっかりしただけならまだよかったが、政治そのものにまでがっかりしてしまった可能性がある。

民主党が政権を奪った2009年8月衆院選は、投票率が69.28%と近年類を見ない高さだった。だがその後の衆院選は、投票率が3回とも50%台にとどまっている。有権者の約20%に当たる約2000万人が、投票所から足の遠のく結果となってしまった。

中村喜四郎・前衆議院議員立憲民主党)が国民の政治への関心の低下について、「安倍晋三政権は、国民を諦めさせることに成功した史上初の政権だ」と言っている。投票率を見ると、まさに中村氏の指摘が的を射ていると思える。

 

政権政党として再び認められるために必要なこと

 

野党が魅力を取り戻すにはカギが3つある。

1点目は無私・無欲の姿勢だ。経済が低迷する中、拡大成長期のように「パイの分配が政治の仕事」とは言えない時代になっている。昭和の政治のように権力を私物化し、選挙区にパイを分配することは難しい時代だ。

厳しい時代だからこそ、政治家自らが無私・無欲の姿勢で政治に取り組まなければならない。自民党の長期政権が権力を私物化した。では一方の野党は無私・無欲の姿勢なのか、という有権者の問いかけに応えなければならない。

2点目はやはり政権時代の真摯な反省と総括だ。民主党が政権を担った3年間について、何を反省しどのように総括し、それを今後どのように生かすのか。その答えを国民に明確に伝えないと、聞く耳を持ってもらえない。現実に10年近く経ってもなお、野党の支持率は上がらない。国民の傷は癒えていないと考えるべきだ。

3点目は政策だ。人口減、低成長、財政悪化、気候変動といった、歴史上経験したことのない構造問題に日本や世界は直面している。このような大きな問題にどんな政策で臨むのか、体系立った全体像を国民に示す必要がある。

この3点がそろわないと、政権政党として野党が再び認められることは難しい。長期的には、日本の最大の問題は人口減少と高齢化だ。年間40万人の人口が減っており、やがて年100万人減のペースになる。また高齢化率も29.1%(2021年)が40%にまで上昇し、そこで天井を打つ。

人口減と高齢化を前提に社会の構造を大きく組み替えないと、財政危機、極端な円安、インフレなど多大な犠牲を払うハードランディングが避けられない可能性もある。(日本が経験したハードランディングである)太平洋戦争の時代を振り返り、日中戦争や日米開戦といった不可逆的な危機を避け、ソフトランディングできる可能性はなかったのか、歴史のイフを考えることがある。

今後の日本も、社会全体が持続可能性を回復しソフトランディングできるよう、政治家、政党はあらゆる不都合を包み隠さず国民に説明して、対話と説得に努めるべきだ。全体的な構造問題に触れずに、成長戦略や少子化対策といった単体だけを議論しても、国民が暮らしの不安から解放されることはない。

 

東洋経済オンラインより)

 

出典:https://toyokeizai.net/articles/-/465699?page=2

 

 ここに書かれている主張は真っ当至極だと思われる。

 問題は、こういう主張をする人がなぜテレビのワイドショーに出ると、「立民は左に寄りすぎたから失敗した」とほざく元時事通信の田崎某に同調したり、「維新は自民党の補完勢力だ」と切り捨てる枝野幸男に反駁して維新にすり寄ろうとしたりするかということだ。こういう軽挙妄動がある限り、小沢、もとい小川淳也という人を信頼することはできない。現実の政治における選択でも、小川は2017年に立民入りを選ぶことも可能だったのに希望の党を選んで小池百合子に迎合した。

 やはり、ツイッター政治おじいちゃん氏の下記ツイートが言う通りだとしか思えない。

 

 

 いくら雑誌の取材に答えて良いことを言っていても言行不一致ではどうにもならない。