新型コロナウイルス感染症の国内新規陽性者数が過去最多を上回ってから、急に倍加時間が長くなってきたが、これが感染そのものの鈍化を意味するのか、それともこれまでに経験のない件数のPCR検査が必要となったために検査のキャパが「サチって」しまったのか、両方が同時に作用している可能性もあるが、その場合でもどちらの影響がより大きいかは判断できない。
上記の「サチる」という、主に理系世界で用いられるスラングが思い浮かんだのは数日前のことで、ある日の大阪府の検査陽性率が43.8%に達したとのニュースに接した時だ。
サチる(さちる)とは、「飽和する」「いっぱいになる」「限界に達する」「最大の状態になる」を意味する日本のスラングである。主に研究者や技術者が使用し、対象が飽和状態になった様子を表す。そこから転じて、「(精神的に)いっぱいいっぱいになる」「焦る」「テンパる」など、心に余裕がない様子を表す際にも用いる。
英語で「飽和する」を意味する「saturate(サチュレート)」や、その名詞「saturation(サチュレーション)」に由来する。
解説の後半にある「焦る」「テンパる」の意味でこの言葉を用いたことは、少なくとも私にはない。純粋に「飽和する」という意味にのみ用いている。
今回の大阪府や東京都など*1の陽性率急増から「サチる」という言葉が思い浮かんだ人は少なくないと見え、ツイートのあちこちでこの言葉が観測されるようになった。たとえば、下記ツイートに対する反応がその一例だ。
現在、日本全国、第4波最悪期の大阪府と同じ状況である。
— Hiroshi Makita Ph.D. 誰が日本のコロナ禍を悪化させたのか?扶桑社8/18発売中 (@BB45_Colorado) 2022年1月20日
実効再生産数は役に立たない。
日毎新規感染者数も実態から大きく乖離しており、傾向も表していない。
この状態は2週間から4週間継続する見込み。
もはや統計の速報値を取っても無意味な状態になっている。勿論後でじっくり分析すれば良い
まー、だよねー、検査がサチっちゃっているから。 https://t.co/GLFb1xMIrI
— Hironobu SUZUKI (@HironobuSUZUKI) 2022年1月20日
実際、過去最多の新規陽性者数を少し超えたところで「検査がサチる」現象は、過去40年くらいもの長い年月をかけて新自由主義が浸透していったこの国においては大いにありそうなことだ。その点がニュージーランドや台湾とは全く異なる。
ニッポンがリソース不足ばっかり言い訳にして一向にリソースを増やす努力をしないの、「柔よく剛を制す方が格好いい」みたいな信仰でもあるのかな🤔
— shinoda soshu (@ssoshu) 2022年1月21日
愚直に鍛えて大きく強くなることを目指してもいいと思うんだけど。
「柔よく剛を制す」とか野村克也流の「弱者の兵法」だかは、いっときはうまく行ったり、昨年のスワローズのようにその伝統が突然再現することもあるにはあるが、トータルで見れば戦力が整っているソフトバンクや読売や阪神の方がヤクルトよりもずっと勝率が良い。ヤクルトは過去10年間の通算勝率がセ・リーグ最下位なのだ。何より、1940年代の連合国との戦争で、日本が最後には竹槍戦法だの特攻隊だのに頼って壮大に自爆したことを想起すべきだ。そういえば野村克也は野球では超優秀だったが政治思想的にはとんでもない極右人士だった。
コロナの話に戻ると、ここにきて「PCR検査など止めてしまえ」という暴論が幅を利かせているのを見て、本当に絶望的な気持ちになった。
気がついたら、日本は1日に5万人が感染か。。。このペースだと、来週あたりに軽く10万人超えになりそうだけど、多分、検査能力的にはそろそろ頭打ちなんだよな。。。新型コロナ 4万9854人感染確認 4日連続で最多更新 https://t.co/U82PWjMVhU
— kazukazu88 (@kazukazu881) 2022年1月21日
コロナの検査能力さえもまともに確保できなかった自民党政権がよく再選されたよな。。。検査しないって、隔離の徹底や新薬投与できないということだからな。
— kazukazu88 (@kazukazu881) 2022年1月20日
この意味でも、昨年10月の総選挙で自民党を勝たせたのは痛恨だったな。あれで今、政治の世界ではものすごい勢いで「反動側の攻勢」が起きている。玉木雄一郎だの、なぜか右側から政治に嘴をはさみまくる芳野友子だの、顔を見るだけで吐き気がする。彼らに対するほどの拒絶反応まではいかないが泉健太の顔も見たくない。
そもそもこれまで多くの人が感染したことによる免疫があるだけでなく、人口の60%にブースターを接種済みの英国の状況は、日本とかなり違うので、「風邪に近づける」とか報道するのは危ないのではとも思う。オミクロン感染者の7%以上が肺炎を起こしたという沖縄のデータの方が重要だろうと。
— kazukazu88 (@kazukazu881) 2022年1月20日
肺炎を引き起こす可能性が7%超って1日数十万規模で感染が拡大すると厳しいよな→「国内では沖縄県での初期段階のデータが示されています。1月4日の時点で無症状や軽症は92.3%、肺炎がみられる中等症1が4.0%、酸素投与が必要な中等症2が3.7%、人工呼吸器が必要な重症は0%」 https://t.co/cIE4xYcOsc
— kazukazu88 (@kazukazu881) 2022年1月19日
その沖縄で本土に先駆けてオミクロン株の感染爆発が起きたのも、自民党政権が在日米軍に入国者のPCR検査を行うことを要請しなかったからだ。在日米軍は、なぜか菅義偉が辞意を表明した直後の昨年9月3日から*2、まだ第5波の日本国内新規陽性者数が多数いた時期だったにもかかわらずPCR検査を止めていた。
人の命を大切にしない自民党とその政権を、この国の人たちはいつまで支持し続けるのだろうか。
そろそろまとめるが、もしかしたら検査がサチっている影響が出ているだけかもしれないが、新規陽性者数の倍加時間が鈍化傾向を見せ始めたことは確かだ。NHKのデータ*3に基づくグラフを以下に示す。1/21の新規陽性者数は過去最多の49,854人、死亡者数は9人だった。
さすがに鈍化してるが、この感染規模で倍加時間が7日を切ってるのは本当にまずい。せめて倍加時間を14日程度にしないと2週間後からやってくる一部の患者の重症化の波が乗り切れない。オミクロンは潜伏期が短く対策がすぐ効くし、有病期間が短いので倍加時間を延ばせれば何とかなる可能性がある。急げ。 https://t.co/vMSF4kg9cS
— nagaya (@nagaya2013) 2022年1月21日
重症者数については、小池百合子が知事を務める東京都が、「瀕死」にならないと重症と認定しないという暴挙をやっていて、その影響で実数より少なくなっているものの、それでも日本全体ではその数が目に見えて増えてきた。また「オミクロンは潜伏期が短く対策がすぐ効く」にもかかわらず、大阪府知事・吉村洋文が変な格好をつけたために京阪神の大都市圏を抱える2府1県の政府へのマンボウ要請が2日遅れた。吉村という人間はどうでも良い時にはイキって先走りたがるのに、肝心な場面になると決断がいつも遅れる。吉村の正体は「決められない政治家」だと言っても過言ではない。小池や吉村は新型コロナウイルスの側に立って戦っているようにしか私には見えない。
このように東京都や大阪府もひどいが、自民党の岸田文雄政権もひどい。岸田は平時では安倍晋三や菅義偉よりいくぶんマシだし、小池や吉村、それに玉木雄一郎らが要求した新型コロナウイルス感染症の「5類格付け」*4を当面却下する程度の見識も持ってはいるものの、自民党政権であることの制約が大きく、肝心な場面では期待できそうにもない。
*1:その前には沖縄県もいち早く「サチっている」状態になった。但し、沖縄県では新規陽性者数の減少が始まっているようだ。
*2:この件に関して、菅義偉が何らかの関与をしていたのではないかとの疑惑を私は持っている。陰謀論仮説に過ぎないが。
*3:https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/data-all/
*4:現在も新型コロナウイルス感染症が第2類に分類されているわけではなく「2類相当」であるだけなので、「格下げ」ではなく「格付け」と表記すべきだろう。この理由によって、今後弊ブログでは従来用いてきた「5類格下げ」の表記を「5類格付け」に改めることにした。