kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

【ファクトチェック】「大阪では第4波の方が第3波より致死率が低い」との吉村洋文のコメント(2021/5/17)は「誤り」

 橋下徹にせよ松井一郎にせよ吉村洋文にせよ、維新の連中というのははったりと強情だけで生きている人たちであって、あんな連中に盲従する(というと差別用語になるのだろうか)ことが「大阪らしい」とは、大阪出身とはいえ6歳の時までしか大阪に住んでいなかった私には全く思えないのだが、大阪でコロナ死が対全国比で目立ったのは第3波前半(宮沢孝幸流にいえば「第3-1波」)と第4波、それに現在の第6波で*1、その中でも第4波は大阪での死亡者の多さが突出していた。その第4波の真っ最中だった昨年5月にも、吉村洋文は「第4波は第3波よりも致死率が低い」との妄言を発していたのだった。弊ブログが取り上げていた。

 

kojitaken.hatenablog.com

 

 当時も第4波の死亡者数がピークを迎える前に吉村が発した妄言だったが、第3波及び第4波の致死率に関して、下記のように書いていた。

 

 私は大阪府のデータは調べていないが、全国の第3波と第4波の週間及び月間データは手元にあるので、以下に昨年11月以降の月間の見かけの致死率を示す。「見かけの」と書いたのは、上記ブコメにもある通り、死亡者数は(新規陽性者数もだが)感染の遅行指標だからだ。

 

  • 2020年11月 0.80%
  • 2020年12月 1.54%
  • 2021年1月 1.46%
  • 2021年2月 5.12%
  • 2021年3月 3.01%
  • 2021年4月 0.91%
  • 2021年5月(17日まで) 1.46%

 

  • 第3波通算(11月1日〜3月31日) 1.98%
  • 第4波通算(4月1日〜5月17日) 1.16%

 

 ご覧の通り、死亡者数のピークは新規陽性者数のピークより遅れる。ピークアウトした時期に死亡者数がなかなか下げ止まらずに積み上がるから、第3波の最初の3か月、つまり1月末の時点では見かけの致死率が1.26%だったのに、第3波の感染が終息に近づいた3月末には致死率が1.98%にまで跳ね上がった。第4波も同じ経緯をたどるはずだ*1

 それに、吉村のコメントによれば大阪府の致死率は第3波が2.5%で第4波の致死率が1.5%らしいが、感染が終息していない第4波についてはまだ結論は出ないけれども、少なくとも第3波に関しては、全国平均の致死率1.98%と比較して大阪府の2.5%という数字はかなり悪い。確か致死率では全国でもっとも悪いのは岩手県だとかつて聞いたが、現在はどうだか知らない。少なくとも大阪府が全国有数の高い致死率を誇る自治体であることを、吉村は自らの口から明らかにしたわけだ。

 

出典:https://kojitaken.hatenablog.com/entry/2021/05/18/074821

 

 当時は致死率を計算するのに、陽性者数と死亡者数の集計期間をずらさずに計算していたので、1か月ずらして計算している現在の方法と異なるが、当時の計算で第4波は最終的に全国平均で致死率1.73%になった。大阪府では第3波を超えるか超えないかのところまで行ったことを覚えているが、自ブログ内の過去記事を見ると、昨年6月11日の記事に致死率2.56%を記録したとタイトルにあった。

 

kojitaken.hatenablog.com

 

 ただ記事の中身を読むと、数え方によってはその時点で2.44%になるとも書いてある。しかし後述するが、大阪での第4波の致死率は最終的には2.8%に達したのだった。

 つまり、第3波では全国平均で2.0%の致死率だったのが大阪では2.5%の致死率、第4波では全国平均で1.7%の致死率だったのが大阪では2.8%の致死率だった。明らかに大阪の致死率は全国平均よりも高く、ことに第4波は対全国平均比で滅茶苦茶に悪かった。医療崩壊が起きたことに加えて、最近明らかになった検査漏れ、というより検査のキャパシティを超えてサチって(飽和して)しまった影響が考えられる。検査がサチると陽性判定されていない感染者が市中を動き回るから感染が拡大するのは当然だ。そして検査の漏れが多いと致死率を計算する時の分母が小さくなるので見掛けの致死率が上がる。

 私は第4波当時の印象を強く持っていたから第6波でもきっと同様だろうと思い、吉村が言った「全国の真ん中くらい」というのは本当か、と書いたのだが、これは維新がツイートで宣伝していたことだったことを、当該の記事へのコメントで教えていただいた。

 

kojitaken.hatenablog.com

 

 nanijiro-i

この第6波の死亡率/陽性者数のもとは、下記に引用されているツイートだと思います。
https://twitter.com/aomurasaki_ll/status/1493548890691616772?cxt=HHwWiIDSxbGzk7opAAAA
これは、2/13時点のデータでまとめていますが、4日後の2/17には、大阪府の死者数は302人⇒445人と、5割増近くになり、新規陽性者も4万7000人近く増えたため、新規陽性者に対する第6波の合計の致死率は、0.10%⇒0.13%とふえました。順位は27位⇒25位です。
都会のほうが若い人の感染割合が高いので、大阪救民会議さんのいうように、この数字は都会ほど低くなります。また、過疎の道県には、それゆえの医療不足があるでしょう。東京都は、第6波最多の死亡者をだしながら、若い感染者が多いためか、45位にまで下がりました。大阪はどうなるでしょう。今週の死亡者の増加が、今日明日とつづくとなると、さらに深刻な事態だと思います。
よく、維新政治家たちが、発信をした数日後に、その発信をできない事態になってしまうことがありますが、ここで陽性者数に対する死亡者の割合が発信されたのも、この死者の急増ぶりから見て、そうではないかとも感じています。これから、陽性者数に対する死者の割合は、大阪府について、順次ふえていくでしょう。いまは、23-25が僅差で福岡・愛知・大阪となっていますが、この両県を上回るでしょう。そうするとあとは、100万都市のある道県で大阪よりこの数字が上回るのは、広島と北海道と兵庫だけになるのではないかと思います。最終的には10位台の上のほうくらいまで行く可能性があるかもしれません。
でかける時間になったので、書き込みはここまでにします。
いつも読み甲斐のある記事をありがとうございます。

 

 コメントからリンクされたツイートからさらにリンクされているのは、大阪維新の会所属の横山英幸府議の下記ツイートだ。

 

 

 この維新の宣伝に乗っかったのが産経新聞と(呆れたことに)朝日新聞だった。まず産経の記事より。

 

www.sankei.com

 

 以下引用する。

 

コロナ「間接死因」2割超、大阪 第6波死者分析

2022/2/18 21:07

 

 大阪府は18日の新型コロナウイルス対策本部会議で、感染「第6波」の期間に確認された死者の分析結果を報告した。昨年12月17日から今月17日までの発表死者数は445人に上り、昨年6~12月の第5波(358人)を超過。死者の93%が70代以上で、基礎疾患がある人は全体の72%に上った。専門家はオミクロン株について、高齢者にとって特にリスクが高いと警鐘を鳴らしている。

 

 今月17日までの府内の累計死者数は3509人に上り、全国最多。厚生労働省などの集計では、第6波での人口10万人当たりの死者数は大阪がトップの5・04人となり、全国平均の1・86人を大幅に上回る。

 

 一方、第6波の感染者の死亡率をみると、大阪は全国平均(0・11%)並みの0・13%。母数の感染者数が急増し、昨年3~6月の第4波(2・8%)や、第5波(0・4%)と比べても低くなっている。

 

 厚労省自治体に対し、コロナ患者が入院中や宿泊・自宅療養中に死亡した際に「厳密な死因を問わず、全数を公表する」よう通知している。このため、基礎疾患や老衰などコロナ以外が直接の死因であっても感染していれば公表対象となる。

 

 府は第6波の死者445人について、医師の診断に基づき、直接死因がコロナではない場合でもコロナの影響があれば「間接死因」とし、影響がなければ「コロナ以外で死亡」とした。

 

報告によると、445人のうち、コロナが直接死因となったのは61%の271人。残りの174人の中でコロナが間接死因とされたのは108人、コロナ以外での死亡は66人だった。

 

 70代以上ではコロナが間接死因となった死者が2割を超え、感染が基礎疾患の重篤化などの引き金になった可能性がある。445人のうち70代以上は93%、60代も含めると97%。推定感染経路を分析すると、高齢者施設・医療機関関連が約4割を占めた。

 

 府専門家会議座長の朝野(ともの)和典・大阪健康安全基盤研究所理事長は、オミクロン株が急拡大した第6波で高齢者の死亡率が高いとし、「高齢者にとって(の死亡リスク)はインフルエンザ並みとはいえない。高齢者施設への医療介入が最も重要だ」と強調する。

 

 吉村洋文知事は18日の会議後、「陽性になった当日に亡くなる高齢者もいる。高齢者にできるだけ感染を伝播(でんぱ)させないようにすべきだ」と危機感を示した。

 

産経新聞より)

 

出典:https://www.sankei.com/article/20220218-H3Y5IXJV4ZOPFOV2BNQNEEV5KY/

 

 上記はいかにも産経らしい大阪維新提灯記事ではあるが、それにもかかわらず意外な掘り出し物だった。

 まず大阪での第4波の致死率が2.8%だったらしいことがわかった。ニュースソースは明らかに大阪府だから、府は昨年5月に吉村洋文が発した「第4波の致死率は1.5%で、実は第3波より低い」という妄言を公式に否定したわけだ。昨年6月11日の時点でも大阪でのコロナ死は収束しきっておらず、その後も死亡者を出し続けたのだろうと見当をつけ、第4波当時よく弊ブログに引用していた大阪市在住のJun K氏が昨日発信したツイートをみつけた。以下にリンクする。

 

 

 ツイートに貼り付けられたグラフを見ると、確かに昨年6月に大阪では死亡者356人を出している。

 また、第5波の大阪での致死率0.4%が全国平均の0.34%より悪かったこともわかった。もっともこの数字は大阪にしてはマシな部類かもしれない。第5波で目立ったのは東京都の陽性者の多さだったが、東京の致死率がどうだったかは知らない。第5波は東京五輪起因の波だったから大阪での陽性者数は相対的には少なめだった。

 現在の第6波だが、横山府議が示した表を見ると、死亡者数十数人の県が上位にいたりする。これは死亡者の波のピークがまださほど立ち上がっていない段階であり、多くの件ではサンプルが少なすぎることに加えて、産経の記事にも書かれている通り、第6波は高齢者や基礎疾患を持った人に厳しいため、吉村洋文が何をほざこうがれっきとした大都市である大阪には本来有利な条件であることが、現段階で大阪が中位にとどまっている(かどうかは知らないが、今もそのままだとしたら)大きな理由だろう。なお吉村の虚言については例によって宮武嶺氏の記事が詳しいので下記リンク先を参照されたい。

 

blog.goo.ne.jp

 

 いつもながら図表満載のの詳細な記事に感心するが、中でも「大阪府の高齢化率は全国でも7番目に低い」ことは是非とも弊ブログ読者の皆様にもよく覚えていただきたいと思う。

 なお、前記Jun K氏のツイートから弊ブログ方式*2による大阪府と東京都の第6波による現在までの見掛けの致死率を計算すると、大阪府は0.158%、東京都は0.060%となる。全国平均は0.137%である。やはり大阪府の成績はよろしくない。第6波の特性上有利であるはずの高齢化率の低い都市部でこの(見掛けの)致死率というのはちょっと信じられない。陽性者数の多さなら菅原琢氏の言う通り都市部では人が集まりやすいことを理由にできるだろうが、致死率はそうはいかない。医療崩壊を起こしている度合がひどいか検査数が少なすぎるかのどちらかまたは両方が原因であって、これはまぎれもなく政治の責任だ。

 それから産経の記事で特筆すべきは、第6波においても新型コロナウイルスが直接の死因となっている比率が61%を占めることだ。よく「コロナはただの風邪」論者が垂れ流している、発表されるコロナ死の大半が直接の死因ではないというのは真っ赤な嘘だということだ。確かに関連死の比率はかなりあるが、半分以上の6割程度は直接死なのだ。

 致死率の話は新型コロナウイルス感染症の問題の核心からはかけ離れている。吉村のコメントのファクトチェックにちょっと深入りしすぎたかもしれない。しかし、昨年5月に吉村が第4波の致死率に関して発したコメントが「誤り」だったと確定できたのは収穫だった。

 長くなったので、朝日新聞の維新提灯記事に対する悪口その他については別の記事に回す。

*1:第3波後半(第3-2波)と第5波は大阪よりも東京での死亡者の多さが目立った。

*2:弊ブログでは2021年12月1日以降の新規陽性者数累計を分母、2022年1月1日以降の死亡者数累計を分子として見掛けの致死率を計算している。