昨日(3/8)も大阪府から52人のコロナ死が発表された。大体において大阪府のコロナ死の発表は土日月、特に日月が少ない。全国的にもその傾向はあるが大阪府は特に顕著だ。土日の分を月曜日に集計して火曜日にまとめて発表するのか、過去最多の63人だかを発表したのも2022年2月22日の火曜日だった。
大阪府のコロナ死については、3/5にも産経が記事を出していたが、読売も同じ件に関する記事を3/8に出した。まず産経の記事から。
以下引用する。
コロナ第6波で死者数が際立つ大阪の事情
2022/3/5 06:00
新型コロナウイルスのオミクロン株による感染「第6波」で、大阪府が発表する死者数に歯止めがかからない。新規感染者数の前週比が減少に転じた2月中旬以降も連日2桁に上り、人口10万人当たりの死者数は全国ワースト。医療関係者や専門家に聞くと、死者の大半を占める高齢者に関連した大阪特有の事情が浮かび上がる。
全国ワースト
府が第6波の始まりとする昨年12月17日以降、2月26日までに発表した死者数は計799人。厚生労働省の集計によると、全国最多で、2位の東京都(421人)を引き離している。
人口10万人当たりでも大阪が9・04人と都道府県別で1位となり、全国平均3・07人の約3倍。東京(3・00人)との差が際立つ。
一方、感染者の死亡率(2月26日時点)をみると、大阪は0・19%と全国平均(0・18%)並みで、吉村洋文知事は「医療レベルが低いわけではない」と弁明する。ただ昨年3~6月の第4波や同6~12月の第5波と比べて、母数の感染者数が急増して死亡率を押し下げている面もあり、東京はさらに低い0・07%だ。
第6波で府内の死者の9割を占めるのが高齢者。府は高齢者施設などへの支援策を強化しているが、それでも死者が続出している。吉村氏は高齢者と若者が同居するなど生活圏の近さが影響しているとの見方を示すが、「これが原因というのは、専門家も含めて分からない」とお手上げ状態だ。
施設の対応を調査
医療関係者はどうみているか。大阪府医師会の茂松茂人会長は「高齢者施設のクラスター(感染者集団)が一番の問題だ」と指摘する。
府によると、1月に42件758人だった高齢者施設関連のクラスターは、2月の17日間で107件1601人に急増した。オミクロン株による感染者急増に伴い病床が逼迫(ひっぱく)し、陽性が確認されても速やかに入院できない事情が背景にある。
実際、第6波で2月26日までに判明した死者799人のうち、重症病床に収容されずに亡くなったのは9割近い706人に上る。
ここには自宅・宿泊療養のほか、高齢者施設などで亡くなった人も含まれ、茂松氏は「高齢者施設で治療を受けずに亡くなるか、入院できても治療が遅れて最期を迎える事態になっている」と問題視する。
茂松氏によると、一口に高齢者施設といっても、施設ごとにコロナ対応には差がみられるという。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設は介護保険法などに基づき、協力医療機関を指定する義務があるのに対し、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や住宅型の有料老人ホームについては、国が指針で指定を促すにとどまる。住居の提供が主目的であるためだが、有料老人ホームでも、介護付き施設は医療機関と連携している。
サ高住や有料老人ホームの数は大阪が全国最多で、大阪市内の有料老人ホームの7割以上が住宅型だ。
茂松氏は「感染判明後、早期に対応する施設もあれば、対策などが行き届かず処置が遅れる場合もある。高齢者施設で感染者が出た際の対応を行政がチェックする必要があるのではないか」と問題提起した。府は高齢者施設の対応を調査し、今月中旬をめどに調査結果を取りまとめる方針。
経済格差も関係か
大阪市立大大学院の城戸(きど)康年准教授(感染症学)は経済格差の観点から分析。城戸氏によると、英国の研究で貧困地域のコロナ死亡率は富裕地域に比べて約2倍高いという。
コロナ感染は人口が密集する都市部で拡大する傾向にあるが、厚労省の令和2年度統計で全国20の政令市のうち、千人当たりの生活保護受給者数が最多だったのは、大阪市で49人。堺市は30・2人で3位だった。貧困で身寄りも少なく、医療にかからない傾向があるとみられる。
城戸氏は「収入や教育など個人の社会経済因子が、健康状態や寿命の長さに決定的に関わる」との見解を示す。その上で一般論として「西日本の人は活発に動く県民性があり、コロナ感染に一定の影響を与える可能性はある」と指摘した。(尾崎豪一)
(産経新聞より)
上記産経の記事は3月5日付なのに記事に挙げられているデータは2月26日現在であって、記事の公開より1週間も前のデータが用いられている。この時点では、吉村洋文が「全国の真ん中くらい」と威張る「致死率」は全国平均0.18%に対して大阪府0.19%だった。もっとも集計方法に若干の問題があり、昨年12月17日以降というとはまだ第5波の死亡者がかなり含まれる時期から集計されている。死亡者の極小値は年末年始頃だったから、弊ブログでは昨年12月1日以降の新規陽性者数を分母に、今年1月1日以降の死亡者数を分子にそれぞれとって第6波の見掛けの致死率を計算している。
産経の記事に高齢者の話が出ているが、前にも書いた通り宮武嶺氏の有力な反論がある。大阪府の高齢化率は東京都よりはかなり高いが、全国的には下から7番目という低さなのだ。
しかし産経のひどい記事にも見どころはある。それは「経済格差も関係か」との指摘だ。大阪では維新府政以前から既に始まっていた新自由主義の地域行政を、橋下・松井・吉村の「維新三悪」知事が極限にまで推進した結果、「貧乏人と年寄りは早く死ね」という「姥捨て山自治体」になってしまったといえるのではないか。
なお記事の最後にある「西日本の人は活発に動く県民性があり」という言説は全く信じられない。私の母方の実家はかつて大阪のど真ん中にあったが(その後豊中市に引っ越した)、三十数年前(前の前の元号の最後から2番目の年だった1988年)に母の長兄が「60歳近くになって初めて東京に出てきた」と言っていた。一人の例で全体を推し量ることはもちろん不可能だが、関西を離れたことがないという大阪人は今でも相当いるのではないか。新型コロナ第1波の頃、東京の陽性者が多く、特に芸能人やスポーツ選手に早くから死亡例があったことを考えても、もっとも活発に動く県民性というか都民性を持っているのは、間違いなく東京の人間だろう。
その東京のネオリベ都政も相当にひどいが、大阪は想像を絶しているのではないだろうか。
続いて読売の記事。
「第6波」死者、大阪がなぜ全国で突出するのか…カギ握る高齢者
2022/03/08 06:13
新型コロナウイルス感染の「第6波」で、大阪府の死者数が東京都などを上回り、全国最多になっている。高齢者施設のクラスター(感染集団)が多発するなど、高齢者の感染が広がっていることが背景にあるとみられる。
全国の16%
読売新聞の集計では、大阪府が第6波の起点とする昨年12月17日から今年3月6日までの感染者数は、大阪府が47万3985人と、東京都より約20万人少ないが、死者は大阪が1041人で、全国2位の東京の637人を大きく上回り、全国の死者の16%を占める。人口10万人当たりの死者も大阪が最も多く、東京の2・6倍の11・78人に上る。
一方、死亡率(感染者に占める死者の割合)でみると、大阪は0・22%で、全国平均(0・18%)並みだ。吉村洋文知事は「医療レベルが低いわけではない」と強調する。ただし、東京は0・09%と、大阪の半分以下だ。人口も感染者も多い東京の死亡率が低くなっていることで、大阪の死者の多さが際立っている。
若者と同居多く
府が死者増加の要因とみているのが、高齢者への感染拡大だ。
厚生労働省によると、人口10万人あたりの80歳以上の感染者数を1週間ごとにみると、1月16日から6週連続で大阪が東京を上回っており、最大1・4倍になっている。
感染した場合のリスクは、高齢者の方が圧倒的に高い。府の集計では、40~50代の死亡率は0・02%にとどまるが、60代以上では1・26%に跳ね上がる。コロナ自体は軽症でも、持病が悪化して亡くなるケースも相次ぐ。死者のうち70歳以上が93%を占める。
府内の高齢者施設3439か所のうち9・1%(313か所)でクラスターが発生しており、計5662人の感染が確認されている。府内の感染者が集中する大阪市保健所では、業務逼迫(ひっぱく)で感染者の情報を国のシステムに登録する作業が遅れた。このため、施設でのクラスターの実態把握も遅れ、対策が不十分になった可能性もある。
なぜ高齢者への感染が広がるのか。吉村知事は「専門家の意見」として、高齢者と若者との生活圏が近いことが影響している、との見方を示している。
人口に占める65歳以上の割合を示す高齢化率(2020年10月時点)は東京の22・7%に対し、大阪は27・6%。3世代同居の世帯比率(19年国民生活基礎調査)も東京の1・8%に対し、大阪は2・5%で、いずれも大阪の方が高い。
医療にバラツキ
高齢者施設で適切な医療が受けられていない可能性も浮上している。
病床逼迫を受け、府は高齢者施設に対し、感染者が出ても、症状が重くなければ施設内で療養させるよう要請している。重症化を防ぐには早期の治療が重要になるが、府によると、複数の感染者が出た高齢者施設など397施設のうち、医療機関が治療したのは74%で、残る26%は医療機関の関与がなかった。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設は介護保険法などに基づいて連携医療機関を指定する義務があるが、住宅型の有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅(サ高住)には義務はなく、医療態勢は施設ごとにバラツキがあるという。
府は高齢者施設に対し、入所者が早期治療を受けられる医療機関を確保しているかの調査を今月中旬までに実施する方針だ。
府の専門家会議で座長を務める朝野(ともの)和典・大阪健康安全基盤研究所理事長は「高齢者施設でクラスターが多発し、高齢世代の感染者が多いのが死者増加の主な原因だ。施設で感染者を出さないよう、職員への研修を強化し、対策費として介護報酬を加算することも検討すべきだ」と話している。
(読売新聞オンラインより)
読売はさすがに記事の2日前のデータを載せている。注目されるのは吉村ご自慢の「致死率」(読売の記事では「死亡率」)の数値で、産経に載った2月26日の時点では全国平均0.18%に対して大阪府0.19%だったのが、わずか8日後には全国平均0.18%は変わらないのに*1、大阪府の見掛けの致死率は0.19%から0.22%に急増している。しかしそれでも読売は「全国平均並み」だと強弁しているのだ。昨年秋にプロ野球の読売球団がヤクルトとの差をミルミル、もといみるみる広げられた時にも読売新聞はおそらく「僅差でヤクルトを追う」と書いていたのであろう。実際に僅差でヤクルトを追っていたのは読売ではなく阪神だったが。
プロ野球の話はともかく、産経も読売も基本は府の説明を垂れ流す提灯記事だが、それでも大阪府のコロナ死が異様に多いことと、その原因として発症直後の適切な時期に十分な医療を受けられずに亡くなる人が多いことを認めざるを得なくなっていることを挙げていることは注目に値する。
なお本記事を書くためにNHKの最新データに基づいて第6波の見掛けの致死率を計算したら(というよりデータをダウンロードしたら自動的に数字が出るようにしているのだが)、全国平均で0.184%だった。大阪府についてはデータを集計していないが、Jun K氏の下記ツイートに直近3日間のNHKの報道を加味して計算したら第6波の見掛けの致死率は0.221%だった(東京都は0.096%)。以上の数値は前記読売の記事と合致している。
大阪府の第6波の死亡者数は1102人、第1波からの累計では4166人を数える。ともに全国最多だ。
3月5日発表から大阪·東京のコロナ感染者、死亡者の比較をグラフに。3月の5日までの死亡者累計大阪190名、東京148名。大阪の死亡率462人、東京272人,死亡者累計各々4076名、3797名。大阪は全国一。大阪は無能首長の災害級人災継続中! 兵庫も死亡率全国ニ位に。 pic.twitter.com/oklqo4fqaX
— Jun K (@JK42779153) 2022年3月6日
これでは、宮武嶺氏のブログ記事のタイトルにいつも書かれている通り、【#維新に殺される】としか言いようがない。
なお昨日、リテラの少し前の記事を紹介しただけの下記エントリが突如バズって驚いたが、産経や読売の記事が出たタイミングと重なった影響でもあろうか。
上記記事についたはてブ(はてなブックマーク)では、下記のブコメ(ブックマークコメント)に注目した。
吉村洋文の「若者と高齢者が近いから亡くなる人が多い説」が無根拠だったことを毎日新聞・石川記者が暴いていた - kojitakenの日記
吉村をきっちり理詰めで追及してる事が大きなニュースにならず、スポーツ紙なんかで吉村の逆切れだけが大きく取り上げられる現状、プーチン下ロシアとどう違うのか。テレビも似たようなもんなんでしょ?見ないけど
2022/03/08 09:41
上記ブコメに書かれた「吉村をきっちり理詰めで追及してる」のが、リテラがなぜか実名を出さないで取り上げた毎日新聞の石川将来記者だ。今回の記事に挙げた産経や読売のような維新提灯記事しか書けない記者とは大違いである。
また、下記の批判ブコメはおそらく読売の記事でも読んだ「維新信者」が書いたものであろう。
吉村洋文の「若者と高齢者が近いから亡くなる人が多い説」が無根拠だったことを毎日新聞・石川記者が暴いていた - kojitakenの日記
『「大阪は高齢化率が高い」だの「3世代同居率が高い」だのと主張し、これらが否定されると』 大阪が東京より高齢化率が高いのも3世代同居率高いのも統計で示されてる。無根拠なのはリテラとこの記事の著者のほう。
2022/03/08 07:15
だが上記の批判は筋違いだ。それをさらに批判した下記ブコメにグリーンスターを進呈した次第。
吉村洋文の「若者と高齢者が近いから亡くなる人が多い説」が無根拠だったことを毎日新聞・石川記者が暴いていた - kojitakenの日記
高齢化率・3世代同居率の高低云々は全国比という意味なのは明らか。それが高ければ死亡率が高くなるなら山形・秋田の死者数が多くなるが、そんなことはない。愛知県は東京より高いが死者数は少ない。
2022/03/08 14:23
宮武嶺氏がブログ記事で指摘した通り、その高齢化率で大阪は全国41位、3世代同居率は全国43位という低さであり、これが示す通り大阪は堂々たる大都会なのだから、吉村を筆頭とする大阪府の説明や、それを受け売りする産経や読売の記事が著しく説得力を欠くのは当然だ。もっとも、それらの提灯記事からさえ「不都合な真実」が読み取れるというのが本記事の主旨である。
最後に、今回取り上げた読売の記事についたブコメも紹介しておく。
「第6波」死者、大阪がなぜ全国で突出するのか…カギ握る高齢者 : 社会 : ニュース
流石維新府政と連携協定結んだ熟読売さん、吉村のスピーカー化が著しい。致死率は全国並て、大阪レベルの都市で全国並だから良いのよなんて寝言に突っ込み入れないのアホすぎる。朝野じゃなくて忽那の話載せろよ
2022/03/08 09:29
今気づいたが、上記は弊ブログ記事のブコメで「吉村をきっちり理詰めで追及してる」として毎日の石川記者を称賛したのと同じid:tekitou-mangaさんのブコメだった。
*1:これはおそらく両社の計算方法が違うためで、実際には当該の8日間に全国平均の見掛けの致死率も上昇している。