暇ネタ。
私はプロ野球のスワローズのファンだが、それ以前に読売が大嫌いなので読売が負けるとうれしい。だから昨夜、オープン戦とはいえ戸郷がドジャーズの大谷ら3選手にホームランを打たれて負けたらしいこともいい気味だったが(生中継は見ていない)、阪神がカブズに勝った試合には、またかと思った。2004年にも同じような来日MLB球団と読売、阪神とのオープン戦があって、あの時も阪神がヤンキーズに勝って読売は負けた。ヤンキーズに単独チームが日本で勝ったのはこの年の阪神が初めてだったらしい。前年リーグ優勝の阪神ファンは大いに盛り上がり、本番の開幕戦でも岡田新監督率いる阪神が堀内新監督率いる読売を3タテしたが、次に対戦した前年最下位にして阪神が22勝6敗とカモにしていた横浜に3連敗して失速し、Bクラスの4位に終わった。リーグ優勝はその阪神をカモにした中日であって、ベテラン山本昌が阪神から7勝を挙げた。山本昌が阪神キラーになったのはなんとこの年からという遅さで、2年後の2006年にも山本昌は後半戦でマジック点灯、ノーヒットノーラン、阪神の10連勝阻止という驚異の三段斬りで阪神の連覇を阻んだ。同年9月に月間4敗しかしなかった阪神の2敗は山本昌に喫したもので、これと川上憲伸に負けた1試合(阪神は川上とは9月に1勝1敗)を合わせた3敗が中日に一歩及ばなかった阪神の致命傷になった。クライマックスシリーズがなかった最後の年の死闘だっただけに、阪神や中日のファンならずとも大いに注目したものだった。
今日の阪神はドジャーズに勝てるか。そして藤川球児新監督の阪神は2004年の新監督時代の岡田彰布の失敗を繰り返すことなく勝てるか。今年はスワローズだけではなく、おそらく多くの人が優勝候補筆頭に挙げているであろう阪神の試合ぶりも気になる。読売に対してはひたすら負けてくれと願うばかりだが。
先週見たのは1959年の日本シリーズで読売が南海ホークスに4連敗した時のニュースフィルムだった。杉浦忠が1人で4勝を挙げ、前年の西鉄・稲尾和久に並んだことで有名な年だ。
試合もさることながら、私の耳を惹いたのは読売の8番キャッチャー森の名前を呼ぶ時の大阪球場の場内アナウンスだ。比較的低音の女性の発音だったが、「もり」と「も」に強勢を置いた発音をしていた*1。
そういえば阪神間で、同級生の森君も「もり」だった。
このブログではかつて、原辰徳の「原」も、昔は東京でも大阪でも「はら」と発音されていたと書いたことがあるが、「森」も同じではないかと思った。というのは、大阪球場の場内アナウンスだけではなく、標準語で発音されているはずのニュースフィルムでも「もり」と発音されていたからだ。
「原」のアクセントについては、リンクは示さないがサンテレビの阪神読売戦中継(甲子園球場)で、NHKを退職してフリーアナウンサーとしてサンテレビ名物だった後藤次男氏(1924-2016)と掛け合いをしていた岡田実アナウンサー(1919-1989)が時々「はら」と発音していて、YouTubeのコメント欄でそれが指摘されていた。このひとはまた例の弊ブログの禁句である読売球団の日本語の愛称である漢字2文字も、特にブログの禁句にはしていない一般名詞と同じく「じん」に強勢を置く発音をしていた。私は「きょ」(虚?) に強勢を置いた邪悪な発音が大嫌いなので大いに溜飲を下げた。
なお同級生の「堀」君も「ほり」と呼ばれていたが、旧兵庫2区選出の政治家だった社会党の堀昌雄(1916-1997)に対してはなぜか親は「ほり」と呼んでいた。たぶんテレビのニュースなどでそう発音されていたからだろう。
本題の「森」の発音についてネット検索をかけてみた。
上記の質問に対して、関東では「り」に強勢があるとの回答があった。しかし前述の通り、1959年のニュースフィルムでは「も」に強勢があった。時代によって異なる可能性がある。
(昔の)名古屋では「もり」だった。私が知る(昔の)関西と同じだ。質問者は標準語では「もり」だと言っているから、「昔」がいつかはわからないがその頃の関東では既に「もり」になっていたようだ。
上記の質問に対しては下記の回答が興味深い。
次の過去の知恵袋を見ると、確かに、東海地方の人の苗字の「森」の発音は「も」が高く、しかも「も」を少し伸ばすから、「も\ーり」に聞こえて、毛利さんかと思った、と言う趣旨の問答があります。「も」が高く「り」が低いのは、間違いないようです。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14283045789
次の、名字アクセント辞典のサイトを見ると、森・盛・守のいずれも「低高」が標準アクセント(東京アクセント)です
但し、私の同僚の「森さん」は東京人でしたが、電話に出る時「はい、モ\リです」とモを高く言っていました。だから、苗字のアクセントは自分の育った家庭によっては違うのかもしれません。(後略)
東京人の「森」さんが「もり」と発音していたというから、関東でも昔は「も」に強勢があった可能性が高い。
しかし、それよりも東海地方では「も」を少し伸ばすから「毛利」に聞こえたというのが興味深かった。阪神間での同級生の呼称が「毛利」に聞こえた経験は私にはなかったからだ。
そして、それには確かな根拠があった。
以下引用する。
森(もり)
「森」は地形由来の名字で、各地にルーツがあります。
「林」が人の手が入って整備されているところを指すのに対し、「森」は人の手が入らない自然な状態のところを指しています。現在のように山の中まで宅地が造成されたり、レジャー用地として開発されたりしていない時代には「森」は各地にたくさんありました。従って、こうした「森」に因む「森」という名字も、各地でたくさん生まれました。
実際、全国38都道府県で100位に入っているなど、全国に広く分布しています。都道府県単位でみると、徳島県の4位が最高で、香川県、長崎県、三重県を合わせた4県で10位入りするなど、どちらかといえば西日本に多い名字となっています。
森家の中で最も有名なのは、元禄赤穂事件の後を受けて赤穂藩主となった森家でしょう。織田信長の近習で本能寺の変で討死した森蘭丸の一族です。ルーツは相模国愛甲郡森庄(現在の神奈川県厚木市毛利台)で、ここは長州藩主の毛利家のルーツと同じ場所です。この付近はかつて「もり」と呼ばれ、「森」とも「毛利」とも書きました。やがて「毛利」に統一され、読み方も「もうり」となったのです。
森岡浩/Hiroshi Morioka
姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部在学中から独学で名字の研究をはじめる。長い歴史をもち、不明なことも多い名字の世界を、歴史学や地名学、民俗学などさまざまな分野からの多角的なアプローチで追求し、文献だけにとらわれない研究を続けている。著書は「全国名字大辞典」など多数。
なるほど、「森」と「毛利」とはルーツが同じだったのか。考えたこともなかった。毛利元就の毛利も同じなのだろう。
神奈川県の地名で「森」とも「毛利」とも書いたというから、当時の発音は「も」に強勢があったことは確実だ。昔が「愛甲郡森庄」で今は「厚木市毛利台」というから漢字まで変わった。そして東海地方での発音で「も」を伸ばす傾向があるというのは、関西などと比べて古い発音が今も名古屋などには残っているということだろう。
神奈川県といえば、地元の方が丹沢山塊最高峰の蛭ヶ岳を「ひるがたけ」、もっとも人気の高い塔ノ岳を「とうがたけ」と発音することは以前にも書いた。前者は2005年、後者は2016年にそれぞれ耳にした。後者の年数を覚えているのは、その方がテレビのワイドショーに毒されてか当時東京都知事だった舛添要一を散々にこき下ろしていた記憶が鮮烈だからだ。その後しばらくして、舛添とは比べ物にならない巨悪だと私がみなしている小池百合子が都知事になって現在に至る。
邪悪な小池の話はともかく、標準語には頭高アクセントを忌避する傾向があるために「はら」が「はら」に、「もり」が「もり」に変化しただろう。少し「ハラタツ」話ではある。「腹」も関西では「ハ」に強勢があるはずだ。江戸では昔から「腹」は「はら」だったのだろうが*2。
*1:他に南海の「半田」選手の発音が半田付けの「はんだ」ではなく「はんた」だったことも耳を惹いた。この半田春夫選手(1931-2019)は不運にも第1戦1回裏の走塁で負傷して、以後のシリーズに欠場を余儀なくされた。調べてみると日系アメリカ人選手でカールトン半田とも表記されることが多く、「はんだ」と呼ばれていたらしいが、彼の英語名はCarlton Haruo Hantaであり、大阪球場では正しく「はんた」とアナウンスされていた。日本プロ野球における優勝チームのビールかけの元祖はこの人だったとのこと。のち中日に移籍して高木守道にバックトスを伝授したという。
*2:だから1985年に丸谷才一(1925-2012)がプロ野球中継で「原」の発音が「腹」になっていると文句を言った。しかしそれを大岡昇平(1909-1988)評して曰く、「小生先生より十六年長く歳月を生きしせいか、「原」なる小学校の友人、「ハラ」より「ハラ」に転じて七十歳にして没せるを知る(無論原辰徳の出現以前)。」と書いた(『成城だより III』(中公文庫2019)143頁)。