ネットの政治談義も、ここにきてやっと不毛な「レッテルの張り合い」から少しはまともな議論をする動きが出てきたのではないか。
政治おじいちゃんお化け氏が思いがけなくXへのポストを再開すると宣言されたのもそのことと関係があるかどうか。
X 再開します! pic.twitter.com/84tSAgegvK
— おじいちゃんお化け (@micha_soso) 2025年4月29日
ところで、sumita-mさんが下記ブログ記事を公開された。
三春充希氏*1によれば、「れいわ新選組」と「日本共産党」の支持層は相殺関係にはない*2。つまり、共産党の退潮*3は「れいわ」に掻っ攫われた故ではない。
(略)
「れいわ」の表はどこから掻っ攫ってきたかといえば、自民や維新ということになる。「現在の民民及び新選組の性格は、昨年秋の衆院選以前とは様相を異にしている」。
URL: https://sumita-m.hatenadiary.com/entry/2025/04/29/115725
共産党の票にも当然ながら出入りはある。明推協のデータでは2021年も2024年も共産党投票者は47人だからnがやや少ないのだけれども、47人中9人が立民(5人)と民民(4人)に、新選組には1人が流出した。一方自民・維新へは自民に1人流出した。下記の円グラフにそれを示した。なお赤が共産、緑が自民、濃青が立民、橙が民民、黄緑が維新、桃が新選組など、政党のイメージカラーで塗り分けた。最近、三春充希氏が自民を緑で表示することにしたと書いていたのを参考にした。たまたまだろうが、自民と維新はともに「緑系」だ。両党とも緑の党とは縁が遠そうだが。

一方、共産党への流入の方は、自民から3人、維新から2人の計5人で、立民、民民、新選組からは各1人の計3人だ。以下にグラフを示す。

新選組はルーツの一つが小沢一郎なので、旧民主党系政党とみても良いと私は考えている。一方、維新のルーツの一つはかつて大阪自民党にいた松井一郎なので、維新を自民系政党と認識している。
以上の結果から、共産党は旧民主系からの流入が3人で流出が10人なので出超、自民系には流入が5人で流出が1人なので入超だ。
つまり、共産も新選組と同様に「自民・維新から票を掻っ攫った」が、それ以上に旧民主系に「票を掻っ攫われた」というのが実相だろうと思う。ただ、その旧民主系の中心が、巷間思われていた(私もそう思い込んでいた)新選組ではなく、立民と民民だったということだ。7月の参院選では昨年の衆院選よりも民民が共産から奪う票が増えることが予想される。それに、衆院選では有意にみられなかった共産から新選組への票の流れも起きる可能性がある。私がそう考える根拠は、今の流れだと参院選では消費税が争点になりそうであり、消費税減税の世論を牽引したのは明らかに民民と新選組という2つの政党だからだ。
少し前に、山添拓が消費税減税を訴えるXをポストしたが、あれは世の「減税派」たちが民民、新選組、参政、日本保守の4党を「減税政党」として、それ以外の政党と線引きするようなことを言い始めたことに危機感を抱いた、志位和夫だか小池晃だかわからないけれども、おそらくその2人のいずれかから山添議員にあのようなXをポストする指示があったのではないかと推測している。
あのあと立民の「減税派」の声が一気に大きくなって、野田佳彦の選択を誤らせるに至った。
私はこのような共産及び立民の動きは、民民と新選組を利しただけだと考えている。共産と立民からは「バスに乗り遅れるな」根性しか感じられなかった。特に立民は、党代表である野田佳彦が「ブレた」印象を有権者に与えた。これは最悪だった。
下記レバ子氏のXに私は同感だ。
タックスヘイブンなど富裕層や多国籍企業の隠し財産は60兆円をゆうに超えています。そうした事はなぜか主張せず目の前の消費税にしか目がいかないのは、曲がりなりには「資本論」の政党である日本共産党も同じなのが、がっかりする事もあります。硬骨の共産党とはもうなくSNS政党に。明日も頑張ります pic.twitter.com/0AflIMrIRj
— レバ子@Labor Struggle (@laborkounion) 2025年4月28日
上記に対しては、共産党は富裕層増税なんかずっと言っているという反論が必ずくると思うが、そのような富裕層増税が選挙の争点になるような発信を共産党が行なっていないと私は言いたいのである。それどころか、前記山添拓のポストに代表されるように、自分たちは「増税政党」ではないと言わんばかりの発信をする。それが立民で「減税を言わなければ選挙に負けてしまう」という思い込みにとらわれた(愚かな)議員たちを浮き足立たせて、4月25日の野田の決定に至らせてしまった。
2001年に唯一「小泉構造改革」に断固として反対した硬骨の共産党は今いずこ、とは少し前に弊ブログも書いたことだが、「SNS政党」という表現には笑ってしまった。
あと、共産の票が旧民主系へと流れるのを止める必要条件が「分派条項」の削除及び「分派狩り」を止めることだとも私は考えている。これなくして共産党の退潮は止まりませんよ。
今の乱世は、賢い指導者の言う通りにしていればなんとかなる時代ではない。少しでも多くの、各方面で能力を持った人たちの知恵を、それこそ「ボトムアップ」で積み上げていかなければならないと思う。しかし、現実には「分派狩り」にかまける共産党のみならず、「ボトムアップ」を合言葉にしていたはずの立民(立憲民主党)もそのような政党ではあり得ていない。それどころか「セルフ民主集中制」が立民党内でも幅を利かせている。
以下に弊ブログにいただいた立民批判のコメントを紹介する。同じ方からの異なる記事へのコメントだ。
「減税が中途半端だから負けた」という論法は、立民が負けたら必ず出てくると思いますが、小泉時代の「カイカクが不十分だから」というのと同じ論法ですよね。
Xの立憲支持層からは、今回の決定に対しては流石に強い批判が出る一方で、「江田憲司と小沢一郎はマジで許さん」とか言って減税派に責任を被せて野田氏に同情したり、「党を割らないためでしょう。分裂の瀬戸際にあったと思います」と言って擁護する人も結構いて、ちょっと甘いんじゃないかと思います。まさに状況追随・微温的・組織防衛的というべきか。
そうした人たちとのやり取りの中で、「今回の折衷案は『角を矯めて牛を殺す』ですよ」と言っていた人がいたのですが、実際、これで減税派がおとなしくなるわけではない一方、一度減税が党の政策になると撤回も容易でないし、財源探しで他の政策が犠牲になるし、いざ実現する段になるとおそらく1年限定にはならないし、と言った具合で失うものが多い。
党が決めたことであっても、批判すべきはきちんと批判していかないとダメだと思います。
コメントの最初にあるXは下記ですね。
江田憲司と小沢一郎はマジで許さん。枝野さんの発言もあえて政局に使ったんだろうな。野田さん気の毒すぎる。
— 🕊💙💛saori kono💙💛🕊 (@saori_kono) 2025年4月26日
江田はデマ撒いたし減税派頭悪い。
消費減税ぶれた立憲民主・野田代表…決断の舞台裏 外堀埋められ「もん絶、七転八倒」(西日本新聞)#Yahooニュースhttps://t.co/KL4jaStZDt
まあこの方も、今回の騒動の前には江田憲司を支持していたとか言っていて、そんな大甘な態度だからこうなってしまうんだよとは思いました。ブログ内検索で「江田憲司」で調べてみたら、弊ブログが江田に肯定的に言及していたのは最初期の数件だけで、あとは一貫して批判オンリーでした。なにしろ江田は旧みんなの党というだけではなく、大の「親橋下徹」の人物でしたから。
でも上記の方でも、野田佳彦が誤った決断をした直後には、それなら代表選に出てこないでほしかったとも書いていました。しかし、周りが野田に対する同情論ばかりなので結局江田憲司と小沢一郎だけを悪者にして野田佳彦には甘い発信をするに至ってしまったと私はみています。
このように同調圧力に屈しがちな、あるいは流されてしまいがちなところがXの議論には確かにあります。
でも、Xなどあまり見ていないと思われる『日本がアブナイ!』のブログ主などは、そもそも今の「減税主義」への批判自体が薄く、せいぜい「財政規律派」的な意見にとどまる程度なので、それよりは減税主義に対する批判が行われているXの方がまだマシではないかと思っています。『日本がアブナイ!』の記事は、枝野幸男を「ゴーマン」とか言って、枝野を批判する小沢一郎のコメントを肯定的に引用したりしていましたからね。昔弊ブログがしきりに『日本がアブナイ!』を批判していた頃の尻尾がまた出たかと思いました。あれでは、もう時代から完全に取り残されているとしかいいようがありません。
「党が決めたことであっても、批判すべきはきちんと批判していかないとダメだ」というのは本当にその通りだと思います。
今日からの3日間は連休の間の平日。私も暦通り。
ただ、連休が明けると政局の流れが変わることはよくある。今年はどうなるか。
今の政治状況だと、野党第一党の立憲が消費税減税を掲げたことの意味はかなり大きく、以前の枝野代表時代とは比較にならない。現状、何かのはずみで非自民政権が出来る可能性は一定程度あり、その時の「目玉政策」は必然的に消費税減税となり、連立ないし協力政党(さらに苛烈な減税政党ばかり)と調整した結果、1年限定という筋悪の案はまっさきに排除され、折衷案として恒久の消費税食料品ゼロあたりに落ち着く可能性が一番高いのでは。そのための財源捻出で、立憲や枝野氏がともかくも掲げているようなビジョンをかなり犠牲にせざるを得なくなる(=新自由主義的に流れる)ように思います(既に1年の時限減税分の為に、立憲が予算修正案で出した介護福祉や教育分野に重点を置いた3兆8000円の修正案にまっさきに手を付けざるを得なくなるだろうという指摘がある)。
参院選で立憲が振るわなければ野田交代になるかもしれませんが、国民民主やれいわが躍進していれば、「減税が中途半端だから負けた!」とかいう勢力が大勢になりそうで、ますます悪化しそう。今の極端な「減税ブーム」はいつかは落ち着くかも知れませんが、それでも減税公約だけは後々まで残ってしまい、色々と悪影響が大きいのではないか。そんな決断を野田氏はやってしまったように思える。
まあ自民党の政策がどうなるかとか(今回の立憲の決定は、自民減税派を刺激するだろう)、他の要素も色々ありますが、立憲が減税になびいた事の悪影響や帰結は過小評価出来ないように思え、懸念しています。