kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

自民党総裁選のポイントは、85歳の麻生太郎の思うがままにことが運んだということ

 自民党総裁選のポイントは、85歳の麻生太郎の思うがままにことが運んだということだ。第1回投票の結果にも決選投票の結果にも「選挙ドットコム」の3人のキャスター(うち1人は朝日新聞記者)が驚いていたし、私も驚いたが、麻生の指示通りに自民党議員たちが動いたという情報が直後に流れて、なんだそういうことだったのかと多くの方は思われただろう。私もその一人だ。

 私が思い出したのは昨年秋の立憲民主党(立民)の代表選だ。あれも当時82歳の小沢一郎が思うがままの結果になった。立民支持層の多くは泉健太の無投票再選を推していたが私はそれにずっと反対していて、枝野幸男の路線の後継者が一番良いが昨年の4候補だったら枝野自身を選ぶしかないとの論陣を張った。しかし泉も枝野もよしとしない小沢の意向が反映される結果になった。その後立民は衆院選にこそ勝利したものの、今年の参院選では泉執行部下での2022年参院選を思わせる惨敗を喫した。前年の衆院選と比較しての比例票の下落ぶりは、泉時代の2022年をさらに下回る惨憺たるものだったが、立民は2022年参院後に真面目に敗因を総括した時とは対照的におざなりの総括しか行わなかった。私はこれを非常に良くない傾向だと考えている。

 自民党も民意の多数に反して長老、それも2009年に自民党を歴史的大敗に追い込んだ麻生太郎の思い通りの総裁選をやってしまった。石破茂の退陣を説得したという小泉進次郎を過大評価する向きが「リベラル」にも多かったがなんのことはない、小泉は麻生の掌の上で踊らされていたに過ぎなかった。

 昨年の立民代表選と今年の自民党総裁選、この2つの政党の党首選で両党が民意を反映させるような選挙をやっていれば、橋本健二氏が思い描いたような、二大政治勢力が再分配重視では一致しつつ、憲法や安全保障問題などで立場を異にして議論を戦わせ、その対立構造に少数派の「新自由主義右翼」、俗にいう「岩盤保守」が支持する少数政党が絡むという政党の枠組になったかもしれない。しかし立民も自民も小沢一郎麻生太郎という二大長老の意図が反映されるとんでもない選挙結果を出してしまった。今後の日本政治の混迷をさらに長引かせる、最悪の結果だったといえる。

 既に決選投票が高市と小泉との間で選ばれる異になった時点でどうしようもなかった。小泉もまた強烈な新自由主義者だからだ。この点で小泉を高く評価した木下ちがや(こたつぬこ)氏らの分析は決定的に間違っていると私は思う。

 5人の候補者のうち一番マシなのは明らかに林芳正だった。しかし総裁選が「フルスペック方式」で行われると知った時、それだと高市と小泉の決選投票にしかなりようがないと私は思った。木下氏はそれでも林が選ばれると当初主張していたが、その読みはまたしても派手に外れた。いったいにこの人はまともに政局を読めたためしがない。恥ずかしくないのだろうか。なぜか朝日新聞のコメントプラスをやっているが、少し前のWeb論座の「Dr.ナイフ」といい、近年の朝日は人選がすっかりおかしくなったとしか思えない。

 木下氏の悪口はともかく、自民党のやるべきことはフルスペックではなく従来ずっと総裁退任時に行ってきた簡易型の総裁選であって、それで粛々と林を選ぶしかなかった。それがフルスペックの総裁選になった時点で麻生太郎の意向が強く反映されていたのだろう。その見方はこんな結果になることによってほぼ確定したといえる。

 公明党はあれだけ派手に高市への忌避を表明したにもかかわらず、多くの人が予想される通り連立の離脱はやらない、というよりできない。ただ自公だけだと少数与党であり、そのままだと総理大臣が石破から高市に代わることにより内閣不信任案を出さない理由がなくなった、野党第一党効果が復活する可能性が高い立民(そのことを喜んでいる一部立民支持者が少なからずいることに私は腹を立てている)に不信任案を出されてしまうので、普通に考えれば高市は連立工作を行う。そしてその連立の相手になるのは参政よりも維新になると考えるのが順当だ。参政は「右からの革命政党」であるからこそ支持を得ている面があるから、連立を組んでしまうとその(彼らのとっての)メリットを失って一気に衰勢に転じる可能性が高い。維新はもともと菅義偉とのパイプが太いので、菅が推していたであろう小泉なら一も二もなく連立政権入りだっただろうが高市には抵抗があるかもしれない。しかしそれでも高市はいちおう安倍晋三の後継者とされているから、その安倍を2012年にスカウトしようとした維新には組めない相手ではない。

 なお高市には連立工作以外の選択肢もある。それは立民がいずれ出すであろう内閣不信任案をあえて可決させて、自らのご祝儀相場の支持率が高いうちに(これはいずれそれなりにかなり高い支持率の数字が発表されることになると思う)解散総選挙を行うことだ。これをやれば確かに藤井聡が言うように自公が過半数を回復する可能性がかなりある。こう考えると、立民には石破時代に引き続いて内閣不信任案提出を躊躇する可能性もあるのだった。書きながら気づいたが、危うく忘れるところだった。

 最後っ屁として再び木下ちがや氏のX を批判する。

 

 

 これって単に高市が故森永卓郎らから応援されるような「ハンキン」つまり(偽りの)反緊縮論者だからってだけの話だろ。

 伊藤昌亮氏のコメントプラスを読んだが、あの日本版MMT界隈の最大の問題点は、某物理学者の「あらゆる税目の増税に反対する」意見表明に象徴されるような究極の新自由主義社会への「ハーメルンの笛吹き」以外の何物でもないということだ。そんなMMT界隈に対して木下氏自身も批判的なはずだと思っていたが、一体何を書いているんだ。

 それよりも同じ記事へのコメントプラスでは、高市の「ワークライフバランスを捨てて働く」という発言を批判した井本直歩子氏のコメントの方がよほど良かったし、ハートマークの井本氏の方が伊藤氏よりもずっと多い。

 弊ブログからも当該の朝日新聞デジタルの有料記事に、今月1本目の無料プレゼントのリンクを以下に張る。

 

digital.asahi.com

 

 リンクの有効期限は6日午前7時28分。

 何より高市は13.2%しかいない「新自由主義右翼」に支えられる総理大臣だ。その高市の「リベラルな経済政策」に希望を見出そうとするとは。

 あまりにも情けない。