今回の公明党連立離脱の政局は、総裁選のやり直しによる林芳正政権への移行というよりマイルドなやり方ではなく、高市早苗やそのバックにいる人たちがなりふり構わず、これまでパイプがほとんどなかったという維新との野合に走り、その上にNHK党との統一会派を組んでしまうというバックラッシュ的な方向で決着する可能性が高まった。
維新は総裁選の前には小泉進次郎の自民党と連立を組み、自公政権が自公維政権になることがほぼ確実視されていた。それが思わぬ高市当選とそれに伴う公明党の離脱によって思いもかけない自維Nプラスアルファの政権になりそうだ。
ことに自民とN党との統一会派結成は、自民党の終焉近しを思わせた。
自民がずっと育ててきた伝家の宝刀、というかポスト自公政権のための保険をついに使ったという感じか。関西のゴロツキたちが政権入りという前例にもなった。 https://t.co/CK1Ec8O21d
— kazukazu (@kazukazu881) 2025年10月15日
「駅前は朝の七時」のような、もの知らないというより歴史を知らない右翼的な民主・民進系の支持者は、維新も大民主党の一部だなどと言っていたが、松井一郎の経歴や2008年大阪府知事選で橋下徹を担いだのが自公だったことからも明らかな通り、維新のルーツは自民党にある。だからkazukazu氏のいう「ポスト自公政権のための保険をついに使った」という指摘には説得力がある。
ただいずれ衆院選をやるにしてももはや公明票は自民候補に乗らないし、維新は2024年衆院選の時には既に勢いに翳りが出始めていたとはいえ、その後さらに政党維持率を落とした現在の維新としては過大な議席を有しているといえる。次の衆院選では全然あてにならない。それ以前に維新が崩壊する可能性もある。
公明党の連立離脱が自民票にどのような影響を与えるかについては、三春充希氏が下記の長文のnote記事を公開した。有料記事だが無料部分が長い。
以下に無料部分の終わりの方から記事の一部を引用する。
今回のポイント
国会における公明党の議席数は少なく見えるかもしれません。また政党支持率は自民や立憲、国民などと比べて高くないかもしれません。しかし公明党には、そうしたことからは見えてこない存在感があります。
たとえば公明党は最多の市区町村議会議員を有する、地方に根を張った政党です。また、その支持基盤である創価学会は、学会員の高齢化はあるものの、現時点でも単一組織として国内最大の組織票を持っています。日本会議や神道政治連盟の組織票は、創価学会には桁ひとつ及びません。旧統一協会と創価学会の票などは、タミヤのプラモデルと本物の重戦車ほども違います。
その離脱はどれほど大きなインパクトを持つでしょうか。
「公明党は特に小選挙区で選挙協力を行わない。公明票の3割が自民党にとどまり、7割が他党へ分散する」というようなマイルドな想定でも、自民党の受ける打撃は絶大であることを本シミュレーションは明らかにしました。
「自民党の受ける打撃は絶大である」、これは直感的にもわかりやすい。ポートフォリオでいえば、安定的で(長期的には低落傾向とはいえ)変化の少ない上乗せ分を自民党は失うのだから。公明票とは税収全体に占める消費税の税収のようなものであって、消費税の税収は景気にあまり影響されない。北欧などの「大きな政府」の国で間接税が占める比率が「小さな政府」の国よりも高いのはそのためではないかというのが、少し前に弊ブログが唱えた仮説だ。そういえば、先の総裁選で封印したとはいえ高市早苗はもともと消費税減税に前向きな政治家だった。維新も、新自由主義極右たちには勝手に「増税勢力」扱いされているが、もともと減税志向の強い、相当に強烈な新自由主義政党である。
私の見るところ、公明党離脱が国政に与える最大の影響は、衆院の解散総選挙が遠のいたことではないかと思う。三春氏のシミュレーションにある通り、高市が解散総選挙をやろうとしても自民党が勝つ目処が立たないからである。公明党が連立に留まっていればそうはならなかった。高市が仮に「ついに」総理大臣になった場合、日本初の女性主将ということで就任直後にはかなり高い内閣支持率を叩き出すことは今なお「目に見えている」に近いと思われるから、その勢いで一気に解散総選挙で自公が過半数を回復するというのが私のもっとも恐れていた流れだった。選挙ドットコムの「山本期日前」も、総裁選での高市勝利を見て「これは解散総選挙だ。今なら参政も民民も選挙の態勢ができていないから自民党が勝てる」などと口走り、それを見た私は、なんだこいつもつまらない「右」の人間なのかと鼻白んだが、公明の連立離脱で流れが大きく変わった。本質的にチキンなTACO高市には下野する可能性が高い解散総選挙という博打など打てない可能性がきわめて高い。衆院議員の任期はまだ3年も残っている。政権を運営して成果を挙げて支持率を上げようとまずは思うのが、何もTACOでなくとも普通の人間なら当たり前のことだ。
それにしてもN党との統一会は結成には呆れるほかなかった。
自民党、高市早苗で底抜けたな。しかも全く驚きがないという。 https://t.co/zRoFK9r7Wu
— kazukazu (@kazukazu881) 2025年10月15日
ジェラルド・カーティス氏も同じだろうが、私は統治能力を失いつつある自民党政権はいずれ確実に崩壊するが、公明党の連立離脱はその最後の段階で起きると予想していた。しかし高市早苗とそのバックにいる麻生太郎は、その自民党崩壊を加速させた。
どう考えても自民党を中心とした政権の残り時間はもうそんなに長くない。野党(特に立憲民主党)は今までのように「来た球を打ち返す」だけではダメだ。どのような社会を目指すのかのビジョンをはっきり打ち出さなければならない。いわゆる「エッジを立てる」というやつだ。
実際は8−2ぐらい高市政権樹立が濃厚です。マジックは点灯しています。ただ少しの手続き無視がマジックを消滅させるどころかポストシーズン進出も怪しくなる可能性もあります。私はずっと来た球しか打てない民主党と言っていますが、自民党のボールも大味なものです。直球と死球しか投げない。 https://t.co/OCEWs5c72r
— レバ子@Labor Struggle (@laborkounion) 2025年10月15日
今回の「自N統一会派結成」はその「死球」だろうか。それも打者の頭部を狙ったビーンボール、つまり「危険球」であり、一発退場処分が相当だ。
「自N」というと、政権交代選挙の頃のブログキャンペーンだった「自End」を思い出す。民主党政権は「小沢vs反小沢」の党内抗争が最大の原因で自滅して自民党が政権に返り咲いたが、その後の13年間がとんでもない「反動の時代」になって日本の国力が大きく傾き、一大「斜陽国」になってしまった。
しかしその自民党政権にも終焉が見えてきた。