kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「わかりやすさ」の落とし穴

昨年の総選挙で自民党が圧勝したあと、マスコミ、特にテレビの政治番組のキャスターは言ったものだ。
「小泉さんの主張はわかりやすかった。それに比べて、民主党の主張は何ですか」
コイズミの郵政民営化法案に関する主張がわかりやすかったとは私は全然思わないが、とにもかくにもキャスターたちはそう主張し続けた。
とにかく、何でもお手軽にわからせろという主張が横行している。そして、報道する側のメディアもそれに迎合する。「コイズミ劇場」を煽る。
「わかりやすさ」には落とし穴がある。要約が的を射ていないと、肝心な部分を切り落とすからだ。そして、よほど当該分野について熟知している人でもない限り、たいていの人は肝心な部分を切り落としてしまう。だから、真に主張をわかってもらおうとするなら、詳しく、熱を込めて語る必要があるのだ。
だが、そんなに顔を真っ赤にして主張してたら、読者が引いてしまうよ、などとしたり顔で言う人たちがいる。
はっきり言って、こういう物の言い方ほど、偽善的で冷笑的なものはない。私のもっとも嫌う態度である。
そんな主張をするのは、真実に迫ろうという努力を最初から放棄している人であって、そんな人の語る言葉から得られるところは何もない、と思う。ましてや、無知を自覚しながら人々を導こうなどとするのは、傲慢以外のなにものでもないだろう。
この偽りに満ちた時代において、一人一人の人間に必要なのは、愚直に真実に迫ろうとする真摯さなのだ。そこには、必ずしも「わかりやすさ」はない。