海江田民主党は「日本維新の怪」でさえ石原慎太郎を除いて反対した、トルコとアラブ首長国連邦への原発輸出を可能にする原子力協定に賛成した。
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014040502000134.html
原発輸出 承認へ 民主賛成、一部造反
トルコとアラブ首長国連邦(UAE)への原発輸出を可能にする原子力協定の承認案は四日、衆院本会議で自民、公明、民主各党などの賛成多数で可決、参院に送付された。採決をめぐっては、原発の輸出政策で賛否が割れる民主党で、脱原発を唱える菅直人元首相らが党方針に反して本会議を欠席。自民党からも、政府のエネルギー政策に批判的な議員が議場から退席した。
原子力協定は、相手国に提供する関連技術や資材の利用を平和目的に限定する取り決めで、原発輸出を行う前提となる。日本維新の会、みんなの党、結いの党、共産党、生活の党、社民党は反対した。
民主党では二〇三〇年代に原発稼働ゼロを掲げる党の公約と、原発輸出を推進する協定内容が矛盾するとして、賛否が割れていた。対応を一任された海江田万里代表は野田政権時代にベトナムなど四カ国との協定に賛成した経緯を踏まえ「消極的賛成」を決めていた。
この日は承認案に反発する同党議員のうち、菅氏のほか篠原孝、辻元清美、福田昭夫の三氏が本会議を欠席。生方幸夫、近藤昭一両氏が採決前に退席した。生方、近藤両氏は退席後、記者団に「原発輸出につながる協定には賛成できない」と述べた。辻元氏の事務所は欠席理由について「反対の意思表示と受け取って構わない」と明言。菅、篠原、福田の三氏は「体調不良」を欠席理由としている。
自民党では脱原発を唱える秋本真利氏が採決時に退席したが、記者団には無言だった。承認案に反対だった日本維新の会は、原発推進を主張する石原慎太郎共同代表が「胸部の打撲」を理由に本会議を欠席した。
両国との協定承認案は昨年秋の臨時国会に提出されたが、特定秘密保護法の審議を最優先する与党方針で、採決は見送られた。今国会でようやく実質審議に入ったが、原発輸出をめぐる質疑を衆院外務委員会が行ったのは今月二日の一日だけだった。
承認案は参院でも審議されるが、憲法の規定で衆院の議決が優先されるため承認は確実。第二次安倍政権では初の承認となる。
(東京新聞 2014年4月5日 朝刊)
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140404/stt14040422580008-n1.htm
原子力協定、各党で「造反」 民主は菅元首相ら8人が欠席、棄権 自民でも途中退席
トルコとアラブ首長国連邦(UAE)への原発輸出を可能とする原子力協定の承認案が4日の衆院本会議で採決され、与党や民主党などの賛成多数で可決された。憲法の規定で衆院の議決が優先されるため、今国会中の承認が確実になった。ただ、民主党で菅直人元首相ら脱原発派8人が欠席、棄権したほか、自民党でも途中退席が出た。両党の執行部は確信的な「造反」には厳正な処分で臨む方針だ。
民主党は、脱原発を公言する菅氏だけでなく、党幹部の造反も相次いだ。海江田万里代表は採決直前まで協定賛成を求めたが、無視された形となった。党の結束が保てずに政権を降りた過去の経験が生かされることはなく、海江田執行部の迷走は続く。
「民主党の行く末も考え一致結束した行動を心からお願い申し上げます!」
海江田氏は本会議直前の代議士会でこう訴え、頭を下げた。党幹部も採決直前まで菅氏ら「造反候補」への説得を試みた。反対こそなかったが、所属議員の約15%にあたる「欠席・棄権」を出した事態を受け、本会議後の海江田氏は記者団の問いかけに無言のまま。苦渋の表情を浮かべるしかなかった。
菅氏の事務所は「体調不良による欠席」と説明した。だが、菅氏は部門会議で「2030年代の原発稼働ゼロを目指す民主党が原発を輸出するのは論理矛盾だ」と強硬に反対を主張。「体調不良を信じる人はいない」(国対幹部)と受け止められている。
菅氏は昨年7月の参院選で、脱原発を掲げる無所属候補を応援。同年8月に党員資格停止3カ月と党最高顧問解任の処分を受けた「前科」がある。大畠章宏幹事長は記者団に「よく話をうかがいたい」と述べるにとどめたが、党内からは「今度こそ除名検討だ」(幹部)との声も漏れる。
海江田氏にとって、より深刻なのは菅氏以外の造反かもしれない。欠席した辻元清美幹事長代理の事務所は「自分の国の事故処理も十分でないのに原発を輸出するのは納得できない」と説明。途中退席の近藤昭一総務委員長と生方幸夫幹事長代理は記者団に「原発輸出に反対」と明言し、常任幹事の篠原孝、福田昭夫両氏は「体調不良」、馬淵澄夫選対委員長は「所用」、古川元久元国家戦略担当相は「出張」で欠席した。
露骨な反旗は、海江田氏の統治能力の欠如にも直結しかねず、党幹部の一人は「いつまでも成熟しない党だ…」と吐き捨てた。
一方、協定に反対した日本維新の会では、反対方針に異議を唱えていた石原慎太郎共同代表が「胸部打撲」で欠席した。処分はない見通しで、党幹部は「造反ゼロで良かった」と胸をなで下ろした。(楠城泰介)
(MSN産経ニュース 2014.4.4 22:56)
15%もの「欠席・棄権」者を出したというより、85%もの議員が「賛成」したところに、民主党という政党のダメさ加減がよく表れている。
海江田万里はもともと強硬な原発推進派だから賛成したのは当然といえるし、幹事長の大畠章宏は、日立労組出身の元原発関連技術者であり、2006年に当時の民主党代表・小沢一郎に民主党のエネルギー政策を「原発の積極的推進」に転換するよう進言した(翌2007年に小沢がこれを認め、政策を転換した)。
だが、海江田がやっていることは、民主党の「脱原発依存」、「2030年代原発ゼロ」という、野田佳彦(「野ダメ」)でさえ認めざるを得なかった路線を実質的に再転換して東電原発事故以前に戻すものであることを指摘しておかなければならない。こんなことをやっている民主党に党勢回復はあり得ないことはいうまでもない。
野党といえば、現在話題になっているのは、党首が雲隠れを続けている「みんなの党」だが、民主党とみんなの党がそれぞれ衰退している現状を見ると、例の江田憲司・細野豪志・橋下徹らが今秋にも結成を企んでいるといわれる怪しげな政党が結成されて野党第一党になる日も遠くないかもしれない。これにはこっそり「生活の党」も加わるのではないかとも予想される。
しかし、仮にそんな政党ができたところで、巨大な、いや中途半端な規模の「自民党の補完政党」になるだけであり、「政権批判の言論が絶え果てた崩壊の時代」の崩壊をさらに加速させることにしかなるまい。