kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

ところで天皇誕生日だが

天皇誕生日。今年で満76歳だが、長寿をお祈りしたい。

先日来の「天皇の政治利用」の件が騒がれたが、天皇に関する話題がこれだけ沸騰したのは、3年前の7月に「富田メモ」を日経新聞がスクープしたとき以来ではないか。

それにしても、「天皇の政治利用」批判が宮内庁から民主党政府に向けて発せられるとは意表を突かれた(予期しないところからの批判だったから小沢一郎が逆上したのではないかと私は想像している)。昔、高校で政治経済を勉強した頃、ちょうど福田内閣が右傾化を強めていて、次の大平内閣の時代にかけて、福田首相終戦記念日靖国神社参拝や、「富田メモ」でも話題になった靖国神社へのA級戦犯合祀、元号法制定などが相次いで議論されたものだ。その頃だったら、国事行為と公式行為を取り違えた小沢一郎の誤りもすぐ指摘できたのかもしれないが、共産党の志位氏が指摘するまで私も気づかなかった。ただ、小沢一郎の発言に引っかかるものが残っただけで、しかもそれ以上に羽毛田宮内庁長官の発言への違和感が大きかったので、「釈然としないが小沢一郎を支持する」と書いた次第だ。テレビ番組で田原総一朗に意見を求められた共産党小池晃社民党阿部知子も、小沢の国事行為と公的行為の取り違えは指摘していなかったから、日頃から日本国憲法に即した思考に慣れ親しんでいるはずの彼らにとっても、これはすぐ思い当たるような事柄ではなかったのではないか。

私は今でも、二人の比較であれば小沢一郎の方がマシだと思うが、小沢への違和感は反対者を許さない小沢の独裁志向への反感からきている。だが、重ねて言うが「真正保守」たちの復古的改憲志向は、「普通の国」を目指す小沢の改憲志向よりさらに性質が悪い。だって後者は、「普通の国」志向に加えて「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」がついてくるからだ。

そういえば、『世に倦む日日』が、

敢えて言えば、日本国憲法の第1条は大日本帝国憲法第1条(注:正しくは第3条)の「神聖ニシテ侵スヘカラス」の規定をベースにしている。

と書いたのにもぶっ飛んだ。少なくとも大昔に私が聞いた憲法解釈からはかけ離れている。それこそ憲法学者たちに訊いてみたいところだが、この主張に違和感を表明する声は、なぜかほとんど上がらなかった。NHKがもっと在位20周年奉祝祝典を大きく報道すべきだったと書く『世に倦む日日』を読んで私が連想したのは、月刊誌『正論』に中村粲という男が連載している「NHKウォッチング」だった。そこには毎月、いかにNHKの報道が「反日」的であるかを力説する文章が載っているが、皇室の行事をNHKが軽視するという批判はしょっちゅう出てくる。

もちろん、以上のように書いたからといって小沢一郎の「普通の国」志向の改憲を私が肯定しているわけではない(最近の小沢は解釈改憲に傾いていて、どうやら彼が民主党入りする際に、9条の条文は維持することで左派と政策協定を結んだようだが)。小沢の国連至上主義は、主張としてはかつての南原繁石橋湛山、今なら立花隆あたりの穏健保守に近いが、精神がどこか彼らとは異質で硬質なものを感じてしまい、小沢一郎が本物の「穏健保守」だとは私には思えない。だからどうしても小沢の主張がしっくりこない。もちろん集団的自衛権の解釈変更を求める小沢一郎の主張に私は反対である。しかし、それはそれとして「真正保守」の復古的改憲というか自主憲法制定論は、もう論外としか言いようがない。両者を区別するのもまた、私にとっては当然である。

いうまでもなく自民党改憲を党是としているが、改憲論者にも3ステージあって、一番ひどいのが「真正保守」であり、次いで問題なのが軍事大国路線を目指す「普通の国」志向の小沢ら、一方私にも理解できるのは、「時代に合わなくなった部分は変えるが、9条は維持すべき」という主張をする人たちである。

この最後のグループに属する人たちは、自民党では絶滅危惧種になっているが、それでも存在はする。私が直接耳にしたのは、香川県の前参議院議員真鍋賢二であり、かつて大平正芳元首相の秘書を務めていた彼は、2007年の参院選を前にした演説で、確かに「憲法9条の維持」を口にしていた。これが保守本流宏池会の政治家の主張というものである。しかし、参院選真鍋賢二は落選した。現在の谷垣禎一自民党総裁は、真鍋賢二とはずいぶん主張が違うように見えるし、真鍋賢二の息子・真鍋健は今年の衆院選になんと平沼一派の一員として無所属で香川3区に立候補して落選した。いうまでもなく真鍋健は「保守本流」ではなく「真正保守」の立場に立っている。こうして、「保守本流」は絶滅していく。

最近の世論調査では、改憲を求める人々の割合は減っているようだが、こと政治家に限っては改憲志向の人間が増えているように見える。私が注目したいのは、衆院選で大量に当選した民主党の新人政治家たちであり、毎日新聞の「えらぼーと」への回答を見る限り、彼らにはずいぶんリベラル派が多いように見えるが、小沢一郎の「普通の国」志向にはどう対応するのか、よく監視する必要があると思う。