kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「消えた若山研のES細胞」と小保方晴子の疑惑、さらに安倍政権の責任

NHKスペシャル「調査報告 STAP細胞 不正の深層」の視聴率は10.6%だったらしい。

NHKスペシャル


いつもながら驚かされるのはテレビの威力であって、放送終了直後に書いた、ほとんど中身のない当ダイアリーの下記記事でさえ、アクセス数を大きく押し上げた。

ましてや、「なぜ小保方氏はES細胞を盗んだのか」とか、「小保方晴子は若山研からES細胞を盗んでいた」などとタイトルに書いたブログのアクセス数はさぞかしすさまじいものだったのではないかと思う。
確かに、小保方氏が「クロ」であるとの心証をもっとも強めたのは、若山研のES細胞が小保方研の冷蔵庫から出てきた件だ。
このニュースの第一報を流したのは、6月16日のNHKだった。

http://archive.today/FUsFT

冷凍庫内に「ES」記載容器

理化学研究所小保方晴子研究ユニットリーダーらが使っていた研究所内の冷凍庫から「ES」と書かれたラベルを貼った容器が見つかり、中の細胞を分析したところ共同研究者の若山教授の研究室で保存されていた、STAP細胞を培養したものだとする細胞と遺伝子の特徴が一致したとする分析結果がまとまっていたことがわかりました。
理化学研究所の関係者によりますと、分析結果をまとめたのは、小保方リーダーが所属する神戸市の理化学研究所発生・再生科学総合研究センターの研究者らのグループです。
それによりますと、センター内にある小保方リーダーらが使っていた冷凍庫の中から「ES」と書かれたラベルを貼った容器が見つかり、中にあった細胞の遺伝子を詳しく分析しました。
その結果、この細胞には、15番目の染色体に緑色の光を出す遺伝子が入っている特徴のあることがわかったということです。
共同研究者の若山照彦山梨大学教授は16日記者会見を行い、小保方リーダーが作製したSTAP細胞を、培養したものだとする細胞を分析した結果、緑色の光を出す遺伝子が、15番染色体に組み込まれていて、これまで若山教授の研究室で小保方リーダーがSTAP細胞の作製に使っていたマウスの細胞とは、特徴が異なることがわかったと発表しています。
今回の分析結果について、理化学研究所は「小保方研究室で見つかったESと書かれたラベルの細胞とSTAP細胞から作ったという細胞の特徴が一致したのは事実だ。
これだけでSTAP細胞がES細胞だったと結論付けることはできないが、今後さらに詳しく検証を進めていきたい」とコメントしています。

NHKニュース 2014年06月16日 19時09分)

遺伝子の解析については、その後一部誤りが判明したとのことで、山崎行太郎ら「小保方信者」が鬼の首を取ったように喜んでいたが、若山研のES細胞を、若山研の人たちは誰もES細胞小保方晴子に渡していないと言っているのに小保方晴子の研究室にあった事実は、遺伝子解析の一部の誤りでは覆らない。この件も、小保方晴子の犯行の物証がないため、例によってNHKは謎解きをしなかったが、番組を見た誰もが「小保方晴子が盗んだ」と思っただろう。ただ、それをブログ記事のタイトルにするのには勇気が要るのであって、それをあっさりやってのけるノビー(池田信夫)や『世に倦む日日』のブログ主はさすがに「手練れ」のブロガーたちではある*1。ノビーは、NHKの取材陣が小保方晴子に全治2週間の「大怪我」(治療期間は田中将大の3分の1にも及ぶというのだ!)を負わせたNHK取材陣の突撃取材はこの件に関するものだったのだろうと推測しているが、そうではなく、若山研でキメラマウス作製に成功したはずの実験に関する記述が、小保方晴子の実験ノートに記載されていなかったことを質問したものだという推測もされているようだ。

これもノビーが書いているように、何者かが小保方晴子を陥れるために若山研のES細胞を盗んで彼女の研究室の冷凍庫に入れたという、推理小説さながらの可能性もかすかに残っており、未確認だが「小保方信者」の中にはそういうことを書いている者もいるに違いない。(残念ながら)小保方晴子の窃盗容疑は、その証拠が見つかっていないのである。だが、小保方晴子が「限りなく黒に近い」灰色であるとは間違いなくいえるだろう。

今朝(7/29)の朝日新聞によると、安倍内閣の支持率がまた微減して、内閣発足以来最低の42%になったらしい。これについて、小保方晴子(や笹井芳樹理研)をいつまでも庇い続ける安倍政権(特に下村博文)は、ただでさえ少ない知識人の安倍内閣支持者をますます減らしていると言った人がいた。知識人ならずとも、われわれ一般人の間にも、今回の事件に対する安倍政権(下村博文)の介入を不審に思ったり不信を持ったりする人は少なくないだろう。今回の「『STAP細胞』研究不正事件」は、研究不正そのものの悪質さもさることながら、その対応を誤った責任も負けず劣らず大きい。関係者や安倍政権は、明らかな研究不正をうやむやにしてしまおうとしたことが傷口を広げ、日本の科学技術に対する信用を地の底まで失墜させてしまった。下村博文安倍晋三の罪は万死に値する。

*1:私など、彼らの記事が出たあと書いた当記事のタイトルにさえ「盗」という文字を入れられない小心者なのである。

小保方晴子は抜群の資金調達能力を持つ笹井芳樹に偏愛されたのかも

しつこく「STAP細胞」にからむ研究不正について書く。

NHKスペシャル*1で、ひそかに思っていたある推測がどんぴしゃり当たった。これは今まで日記に書いた記憶がないから、何だ後付けの理屈じゃないか、信用できないぞと思われるかも知れないが、それは仕方ない。

私が想像していたのは、笹井芳樹は抜群の資金調達能力を持っているのではないかということだった。

昔、ある技術者と話した時、彼は優秀なリーダーの条件として、この資金調達能力を挙げた。研究開発には金がかかる。高温超伝導再生医療の分野は特にそうだろう。良い設備は成果を上げる可能性を高める。

少し前に当ダイアリーに書いたと思うが、ヤン・ヘンドリック・シェーンの研究不正がすぐに露呈しなかった理由の一つに、彼の「研究成果」の当否を検証できるだけの設備を持った研究機関がほとんどなかったことがあるとの話を聞き知った*2。この時、もしかして笹井芳樹とは資金調達能力が際立って高い人間ではないかと思いついた。そして、その想像が正しかったことをNHKスペシャルは教えてくれたのである。

理研の政治力の源泉は野依良治ではないかと考えていた方もおられるようだが、私は野依の線はないと思った。野依は「政治力でノーベル賞を獲った」と言われる人間ではあるが、それは野依の現役時代の話であり、名誉職におさまっている現在、しゃかりきになって資金を調達する動機などあるまいと考えたからである。

資金調達能力の高い研究者は、研究それ自体の能力も高いことが多い。実績に裏打ちされた自信がプレゼンテーションに説得力を与えるなどするからだ。ただ、一概にそうとばかりも言えず、中には政治力ばかり突出して、研究者あるいは技術者としての能力は大したことのない人間もいる*3。とはいえ笹井芳樹の場合は文句なく前者であろう。

このことは、政治家にたとえればわかりやすいかもしれない。議員立法の数の多さで知られる田中角栄のような優秀な政治家もいれば、民主党への政権交代が実現した途端、議員立法の禁止を打ち出した小沢一郎みたいな人間もいる。小沢自身は、その長い議員生活でいったい何件の議員立法を提案し、成立させたのだろうか。田中角栄小沢一郎の2人の共通点は、資金調達能力の高さだけだろうと私は考えている。

ただ、往々にして専門分野の能力も資金調達能力も高い人間は、癖が強く、部下の好き嫌いが激しい。そういう人間に偏重された部下は、アンタッチャブル的な存在になって、周囲の誰も口出しできなくなる場合がある。こういう例を私は複数見てきた。別に女性に限らないというより、女性の例を私は知らない。だが、小保方晴子とは笹井芳樹にとってそのような存在だったのではないかと想像するのである*4。そして、こうした存在は、当然ながら人間関係のもつれをもたらす。アンタッチャブル的存在を激しく嫌う人間が少なからず現れるのである。

私は「STAP細胞」研究不正疑惑が勃発した当初、「小保方晴子叩きに違和感を覚える」と書いた。それは、当時言われていた「小保方晴子の単独犯」の図式、ひたすら「博士論文に含まれるコピペ」ばかりが喧伝される状況では、研究不正の全体像を想像することができなかったからだ。何より、小保方晴子とは理研が組織ぐるみで売り出した「リケジョの星」だった。その事実と、「小保方氏のインチキに理研の偉い研究者たちはみんな騙されていました」という、当初一部でなされていた説明とはギャップが大きすぎた。その説明はあまりにも嘘くさくて信じられなかった。私は「小保方晴子の単独犯」はあり得ないと思ったのである。

しばらくして、笹井芳樹の存在が大きくクローズアップされるにつれて、やっと納得のいく仮説を立てることができるようになった。それが、笹井芳樹小保方晴子の「共同正犯」の仮説である。仮に、今回の研究不正の発端が小保方晴子単独によるものであったとしても(というか、おそらくそうだろうと私も思うが)、その背景には笹井芳樹の期待ないし、笹井芳樹を助けたいという小保方晴子の思いがあっただろうし、笹井芳樹が少なくともある時点で小保方晴子の不正に気づいたことは確実だろうと思うのだ。その時点で笹井芳樹は共同正犯になった。しかるべき対応をしなかったことによって、笹井芳樹は取り返しのつかない過ちを犯してしまったのではないかと私は考えている。小保方晴子の研究不正の動機が「笹井先生のため」なら、笹井芳樹のそれは「研究資金獲得のため」だった。

笹井芳樹にとって「STAP細胞研究不正事件」とは、田中角栄にとってのロッキード事件に相当する、人生最大の挫折だったかもしれない。NHKスペシャルが放送された7月27日は、38年前に田中角栄が逮捕された日であった。

*1:http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/0727/

*2:正確にはネットで調べて知った。

*3:往々にして企業のトップに上り詰める技術者は後者だったりする。

*4:笹井芳樹田中角栄なら、小保方晴子越山会の女王・佐藤昭(のち昭子)といったところか。