鴻池祥肇の「こんにゃく」の一件、あれは政権側の意を受けて「すべてを森友学園と籠池夫妻のせいにする」作戦の一環と見るほかあるまい。その件をめぐる読売の記事と、その記事に対するネットの反応には、いくつもの問題があると私は思う。
http://www.yomiuri.co.jp/politics/20170304-OYT1T50045.html
森友問題追及、共産に主役奪われ民進党内に不満
2017年03月04日 09時47分
民進党の玉木雄一郎幹事長代理は3日、国会内で記者会見を開き、森友学園への国有地売却問題について、参院予算委員会と並行して衆院の各常任委員会でも追及する方針を明らかにした。共産党が独自に入手した資料を基に政府・与党への責任を問う姿勢を強めており、民進党も同調した格好だ。
玉木氏は3日の衆院国土交通委員会で、国有地の賃料が下がったとして、政府側に経緯をただした。その後の記者会見では「政府は森友学園側に配慮したのではないか」と指摘した。
この問題を巡っては、共産党が自民党の鴻池祥肇元防災相の事務所の「陳情整理報告書」を独自に入手。学園側による政治家への働きかけを裏付ける文書と位置づけ、政府・与党の責任を追及している。野党第1党の民進党は追及の主役を奪われた格好で、党内からは「もっと早くからこの問題を調べるべきだった」(中堅)と執行部への不満の声も上がっている。
(YOMIURI ONLINEより)
この件に関して、ネットには「なぜ鴻池が民進党ではなく共産党にリークしたのか、その理由を民進党は考えてみろよ」などといった反応がみられた。しかしこの反応には、最近、特に蓮舫・野田体制になって以来民進党批判を強めて「民進党信者」たちの不興を買っている私とて首肯できない。
実際には鴻池のリークは多方面に対して行われていた。たとえば菅野完。
https://twitter.com/noiehoie/status/837031253098422272
菅野完
@noiehoie
小池さんと鴻池さん本人に抜かれたの悔しいけど、やっぱり生の資料は面白い。「どこが教育者やねん!」「ウチは不動産屋ではありませんから!」と、鴻池のオッサンのリアルなログみながら、「俺もこれ持ってたのに抜かれたぁ」言いながら一晩飲んでた。
12:06 - 2017年3月1日
菅野完はこのように(単純に)悔しがってみせるが、上西小百合の反応はもっと斜に構えている。
https://twitter.com/uenishi_sayuri/status/837881882259775489
上西(うえにし)小百合
@uenishi_sayuri
今回の森友学園問題、メディアは民進党や共産党の調査能力を舐めない方がいい。確実にいろいろな連携をしている。その証拠に鴻池議員の資料など、民進党どころか私“でさえ”持っていた。そして自由党は完全に態勢を整えた。私は大阪の膿を出しきって、事実のみを野党へ提供する。#森友学園
20:26 - 2017年3月3日
上西議員はその前にはこんなことも呟いていた。
https://twitter.com/uenishi_sayuri/status/836962255044399105
上西(うえにし)小百合
@uenishi_sayuri
今日発売の文春も、この公設秘書の話しも信じたら間違えますよ。メディアは気をつけて下さい。これを信じたら自民党の思うつぼ。幸い一部の野党議員は気づいています。
http://www.news24.jp/articles/2017/03/01/07355418.html
独自:森友学園が議員に“働きかけ”の記録(日テレNews24)
2017年3月1日 19:31
「森友学園」の国有地取得をめぐる問題で、日本テレビは森友学園の籠池泰典理事長が、自民党の鴻池祥肇元防災担当相側に土地の価格を安くするよう働きかけを行っていた記録を独自に入手。籠池理事長はこれまでに「政治家による便宜は一切なかった」と説明。(後略)
7:32 - 2017年3月1日
つまり、鴻池のリークは少なくとも日テレ、共産党、民進党、菅野完、上西小百合の5者に対して(実際には上西議員が言及した自由党を含め、もっと多方面にわたるだろう)行われた。そして共産党は取捨選択してこれを取り上げ、民進党は取り上げなかっただけの話だと考えるべきだ。
そして、今朝(3/5)のTBS『サンデーモーニング』を見ていてはっきり悟ったことだが、上西議員の1日付のつぶやきは的を射ていた。わずか16分間と、そのあとの小池vs.石原のバトルと同じ重みでしか報じられなかったこの事件についてTBSがクローズアップしたのは、1日の小池晃の質問のあと、同日午後7時から行われた鴻池祥肇の記者会見だった。こんにゃくの箱を投げ返したという鴻池のパフォーマンスは、「森友学園・籠池夫妻=悪」の印象を視聴者に強く植えつけるものでしかなかった。
私はこれを見て、ああ、上西小百合が「今日発売の文春も、この公設秘書の話しも信じたら間違えますよ。メディアは気をつけて下さい。これを信じたら自民党の思うつぼ。」と言っていた理由がわかった*1。鴻池のリークも文春や新潮の記事も、紛れもなく政権側の「森友学園切り捨て作戦」の一環なのだ。文春も新潮も立ち読みしたが、文春の記事は「こんな小物が口利きできるわけないだろ」と思わせる、いつもの「文春砲」らしくないしょぼいものだったし、新潮に至っては「安倍昭恵が名誉校長になったことを安倍晋三は知らなかった」などという噴飯ものの記事だった。鴻池の一件は、文春や新潮の記事ほどひどくはないにせよ、こんな件ばかりクローズアップされるようでは、それこそ安倍晋三や松井一郎や橋下徹の思う壺だとしか私には思えない。
そもそも鴻池祥肇はもう76歳だ。再来年(2019年=ナントカ元年?)の改選時には立候補せず政界を引退するだろう。仮に鴻池の口利きが問われても、自民党の受けるダメージはたかが知れている。鴻池としても「最後のご奉公」くらいの意味で、自ら多方面にリークしたのではないか。
私が連想したのは2006年の「偽メール事件」だ。あの事件では嘘の情報に民主党議員が引っかかり、議員辞職を経て3年後に自殺に追い込まれた。今回は偽ではなくある程度本当の情報で、政権側が鴻池を盾にしただけだから追及する側も安心だ。だから小池晃が食いついたものだろう。
しかし、調査能力に定評のある共産党が食いついたのがあの程度の話だったことはかえすがえすも残念だ。私はむしろ、あんな話なんか民進党に任せておけば良かったのではないかと思う。
そういえば少し前にも小池晃に不信感を抱かされる一件があった。千代田区長選に小池百合子が応援する多選の現職が勝った時、「自民党が推した候補が負けた」ことを喜ぶかのようなツイートを発信した時だった。あの時には怒り心頭に発し、この日記で強く小池晃を非難した。そもそも私は小池晃に対し、2007年の都知事選の時にテレビ番組で社民党参院幹事長・又市征治と口汚い罵り合いをした一件(当時社民党は浅野史郎、共産党は吉田万三をそれぞれ推していた)以来、必ずしも良い印象を持っていない*2。
「悪い人ではないが、どこか軽い」というのが、小池晃に対する私の率直な印象だ。
もちろん共産党の調査能力はこの程度ではないはずだ。今後の奮起に期待したい。
それと上西小百合が言及していた自由党。このところ影が薄いが、相手が安倍晋三や大阪維新であれば元維新だろうが小沢一郎だろうが私としてはウェルカムだ。自由党は今のところ山本太郎の「アッキード事件」発言程度でしか存在感を示せておらず、同党所属ではないが関係の浅からぬ三宅洋平など安倍昭恵とのつながりを咎められてバッシングを受けている始末だ。少しは自由党にも良いところを見せてもらいたい。