kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

緒形拳死去から連想はめぐる

俳優の緒形拳が亡くなったが、映画をあまり見ない私にとって、緒形の演技でもっとも印象に残っているのは、1997年のNHK大河ドラマ毛利元就」の尼子経久役だった。実は、NHK大河ドラマもあまり見る習慣はないのだが、この「毛利元就」は2回目だか3回目で松坂慶子演じる「杉の方」がコミカルで面白かったので、ついついひかれて毎回見ていた。元就のライバルである出雲の尼子経久を演じる緒形拳の存在感にあふれた演技は実に素晴らしく、主役の元就より経久に肩入れしてドラマを見ていたほどだ。なんでも、もともと経久役にNHKが考えていた故萬屋錦之介が、重病のため出演が不可能で、錦之助自らが代役に指名したのが緒形拳だったそうだ。

ところで、この大河ドラマ中で、中村橋之助演じる毛利元就が、「人生には三つの坂がある。上り坂、下り坂、それに『まさか』だ」と言っていた。これは、聞き覚えのあるセリフだったが、元就が発した言葉ではなかったのではないか、とドラマを見ていて思った。その後、このセリフのことは忘れていたのだが、昨年、元首相・コイズミが同じ言葉を発した。「さすがは小泉さん、うまいことを言う」などと感心していたおめでたいコイズミ信者もいたが、もちろんコイズミのオリジナルではない。コイズミの10年前に大河ドラマで使われたが、その時既に聞き覚えのあるフレーズだったのだ。

もともとの出典をネットで調べてみたら、どうやら浪曲「徂徠豆腐」らしい。現楽天ゴールデンイーグルス監督の野村克也も好んでいたフレーズだそうで、私が初めて聞いたのも、もしかしたら野村克也の口からだったかもしれない。

それにしても、3年前のコイズミの郵政解散・総選挙、それにその結果はまさしく「まさか」だった。日本の社会と国民は、あの時のコイズミ劇場によって、「魔坂」をまっさかさまに転げ落ちていった。その悪夢から醒めるまで、もうしばらくの辛抱だ。