kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

福島の農家をターゲットとする早川由紀夫の「つぶやき」が非人間的である理由

早川由紀夫教授ツイートの 問題について/Skeptic's Wiki - 薔薇、または陽だまりの猫早川由紀夫の問題Tweetが一覧にされている。そのソースは 早川由紀夫 (東日本大震災) - Skeptic's Wiki である。


なんともまあすさまじい発言だ。一連の早川のTweetに対する批判について、早川が本当に主張したいことは、放射性物質の拡散を止めろということであり、それ自体は正論だとする反論がある。しかし、それなら福島の農家に対する非難を強調することは逆効果であり、早川の主張が世論の支持を得て多数派を形成する可能性がほとんどない以上、早川は結果的に「脱原発」、「反原発」を妨害しているとしかいえない。

私は従来から食品に含まれる放射性物質の含有量については、その情報を開示することにより、農家の方々が農業を続けていくことができなくなった場合、国や東電が賠償を行なわなければならないと考えている。徹底した情報開示が必要だという立場だ。

しかし、それと「福島の農家の製造責任を問う」こととは別だ。

この件から思い出されることがいくつかある。たとえば「限界集落」の農家の話がそうで、限界集落でいつまでも農業を続けてその結果貧困に苦しむのは自己責任だという論調が中央のマスコミや学者から時々聞かれる。典型的な新自由主義者の主張である。

さらに、私自身の経験からいうと、2001年のITバブル崩壊の頃、当時はまだ製造業への派遣労働が解禁されていなかったから大企業の子会社に直接雇用されていた従業員の話だが、ずっと地元でオペレーターを続けていられると思っていたのに、ITバブル崩壊の煽りを受けて事業が停止してしまったために、遠方(他の地方)にある親会社の工場に職を求めて、親会社の斡旋で見学旅行をさせられたことがあった。その時に本人から直接聞いた話だが、「なんでこんなことをしなければならないのかと思うと涙が出てきた」と言っていた。幸いにも、ITとは全く関係のない別の分野の工場を誘致することができたので、彼らの一部は移住をせずに済んだ。不幸にも職を失った人たちもいたが、そういう人たちも地元に職を求め、他地方の工場を選択した人は誰もいなかった。

私なんかは地方の区分でいうと近畿、関東、中国、四国、関東の順番で移住してきた人間で、住民票を置いた都府県は1都1府4県にまたがる。仕事のために移住することは、私には苦にならない。早川由紀夫の出身地は知らないが、東大卒で群馬大教育学部教授らしいから、やはりあちこちに住んだ経験があるだろう。しかし、生まれ育った地でずっと生活したい、同じ仕事がしたいと思い、移住や転職が多大なストレスになる人々も多数いるのである。むしろこの方がスタンダードであるとも思う。前記の例でいえば、隣接する県庁所在地の市で働くことさえ選びたがらない人が多かった。そのことを思った時、福島の農家をターゲットにした早川の暴言は、真意云々の前に論外だと言うほかない。責任を問われるべきは、あくまで政府であり東電である。


さらに呆れるのは、早川がどうやら「確信犯」というよりも「愉快犯」というべき人間であるらしいことで、下記のようなTwitterもあることだし、この件への深入りはもうやめておこうかと思っている。


http://twitter.com/#!/QEnergyTeleport/status/142349483425021952

群馬大学早川由紀夫氏の非人道的発言が、まともな人達の怒りでRTされ続けているが、彼は確信犯で愉快犯。提案としては、全ての発言を無視し、彼の発言を肯定的にRTする人もブロックして、その取り巻きも世間から隔離してしまうのが一番。最低な発言を、福島や被災地に届ける手助けをしないように。


重ねて書くが、私は何も食品に含まれる放射性物質に関する議論をするなと言っているのではない。むしろ逆に、徹底した情報公開とともに議論が尽くされなければならないという立場だ。しかし、その際に早川由紀夫の暴言などを持ち出す必要は全くなく、この件を論じるに際して早川由紀夫を無視して困ることなど一切ないと言いたいだけである。


[追記]
この件における早川由紀夫に対する的確な批判を見つけた。

http://b.hatena.ne.jp/entry/d.hatena.ne.jp/sumita-m/20111209/1323372683 より。

mujisoshina
「生産を禁止する代わりに収入を補償する」という確約もない状態で農家に他の選択肢があったのだろうか。消費者には買わないという選択肢があるが、農家は補償を受ける為にも作って汚染の実態を見せるしかなかった。 2011/12/10