http://www.asahi.com/articles/ASG577GG7G57UTFK01H.html
安倍政権は他国を武力で守る集団的自衛権行使を容認する閣議決定の時期について、6月22日に会期末を迎える通常国会の閉会後に延期する方向で最終調整に入った。行使容認に慎重姿勢な公明党への配慮だが、秋の臨時国会までに閣議決定する方針は変えていない。
欧州訪問中の安倍晋三首相は7日午後(日本時間同日夜)、ベルギー・ブリュッセルでの記者会見で、閣議決定の時期について「期限ありきではない」と明言。「与党においてもご議論をいただきたい」とも述べ、公明党との協議を尊重する考えを強調した。また、首相は、有識者会議が来週中に提出する報告書を受けて示す「政府方針」について、「政府がどのように検討を進めるかについての基本的方向性を示す」と語った。
与党内では、公明党への配慮として、秋の臨時国会に予定していた集団的自衛権行使容認の関連法案審議を来年の通常国会に先送りする案も検討している。自民党の石破茂幹事長は、自衛隊が防衛出動する段階には至っていない「グレーゾーン事態」に関する法案審議を秋の臨時国会で先行させる可能性に言及した。公明党がこの問題を優先すべきだとしているのに配慮したものだ。菅義偉官房長官も7日の記者会見で「そういうこともありうるのではないか」とした。
しかし、首相は秋の臨時国会召集前には閣議決定に踏み切る考え。政権幹部も「絶対にやる」と強調する。首相は集団的自衛権を政権の最重要課題に位置づけ、国会でも繰り返し言及してきた。閣議決定まで大幅に先送りすれば、この課題に取り組む機会自体を失い、首相の求心力も大幅に低下するからだ。
ただ、国会閉会後になれば、国会での議論がないまま閣議決定が行われるおそれがある。政権はその場合、閉会中審査を開くことを検討するが、審議時間を十分に確保できないという懸念がある。
首相は閣議決定後、内閣改造し、秋の臨時国会に臨む考え。首相側近は「常識的に言って夏の遅いタイミングだ」と述べ、8月後半から秋の臨時国会開始前を示唆している。
(朝日新聞デジタル 2014年5月8日05時53分)
この件に関して、閣議決定を急ぐ安倍晋三と、先送りしたい幹事長の石破茂の対立があり、石破の言い分が通ったとの観測がされている。その理由として、公明党に連立を離脱されると、今秋の沖縄県知事選や来年の統一地方選、さらにはそのあとに控える参院選や衆院選にも多大な影響が出ることが挙げられているが、裏を返せば公明党が激しく右傾化する自民党政権を今まで支えてきたことの罪は極めて重いと言うべきだろう。
インタビュー:集団的自衛権は必要=安保法制懇座長代理 | ロイター
インタビュー:集団的自衛権は必要=安保法制懇座長代理
2014年 05月 7日 21:13 JST
[東京 7日 ロイター] - 安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」の北岡伸一座長代理(国際大学学長)は7日、ロイターとのインタビューで、現在の安全保障環境にも個別的自衛権や警察権で対応できると主張する公明党に反論し、集団的自衛権の行使容認の必要性をあらためて訴えた。
<「憲法解釈変えない法整備は手品」>
同懇談会は今月12日の週に報告書を提出する。北岡氏によると、憲法が認める必要最小限の自衛権に集団的自衛権が含まれるとの見解を示すとともに、行使が可能になるよう憲法解釈の変更を提案する。
安倍政権はその後に政府としての案を示して与党と協議に入り、解釈変更を閣議決定したい構えだが、公明党は行使容認に慎重な姿勢を崩していない。
北岡氏は集団的自衛権の具体例として、日本を防衛する米艦船が攻撃された場合に、自衛隊が反撃するケースを指摘。公明党は個別的自衛権で対応可能と主張しているが、北岡氏は「周辺事態法をどのように変えればいいのか思いつかない。つまり不可能ということだ」と語った。「公明党や野党が(主張するように)憲法解釈を全く変えないで法整備ができるなら、歓迎したい。しかし、それは手品、奇跡だ」と述べた。
また、グアムへ飛んでいくミサイルを日本が上空で撃墜するケースについて「警察権で対応できるという主張があるが、上空を通過するミサイルをすべて撃ち落とせることになったら、日本の領空支配は宇宙にまで及ぶことになる。公明党はこのようなコンセプトを作るのか、とても危険だ」と述べた。
<中国も支援対象>
報告書には集団的自衛権を行使する際の6つの指針として、1)密接な関係にある国が攻撃を受ける、2)放置すれば日本の安全に重大な影響を及ぼす、3)攻撃を受けた国からの明示的な支援要請がある、4)首相が総合的に判断する、5)国会承認を受ける、6)第三国の領域を通過する場合の当該国の同意を得る──を盛り込む。
北岡氏は、国会承認について事後でも可能との見解を示した。
地域は限定せず、対象国も明示しない。同盟国の米国だけでなく、オーストラリアや韓国、英国なども対象になりうるという。北岡氏は「中国が攻撃されて放っておけば日本に重大な影響を及ぼす場合、日本に対応できる技術があって要請があれば、中国も支援する」と述べた。
憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を容認することには、公明党以外からも批判があるが「憲法はバイブルではない。より良いものになるよう作り直したり、解釈を変えたり、改正すべきだ」と反論。「改正は難しいので、(解釈変更など)柔軟であるべきだ」と語った。
そのうえで「日本が個別的自衛権だけで自国を守ろうとするなら、核大国になる必要がある。集団的自衛権、信頼できるパートナーに頼るのは、軍事大国になるより良い選択肢だ」と述べた。
報告書は集団的自衛権のほかに、有事か平時か判断がつかない「グレーゾーン」事態への対処や、在外邦人の救助などを可能にする法整備を提言する。
*インタビューは英語で行いました。
(久保信博、リンダ・シーグ 編集:田巻一彦)