http://mainichi.jp/select/news/20140731k0000e040212000c.html
東京電力福島第1原発事故を巡り、東京第5検察審査会は31日、業務上過失致死傷の疑いなどで告発され、東京地検が不起訴とした東京電力の勝俣恒久元会長(74)ら元東電幹部3人について、「起訴相当」と議決したと公表した。審査会は「津波の発生を具体的に言い当てるのは不可能だが、原発事業者としては、津波の来襲を想定して対応を取る必要があった」と指摘した。
議決は23日付。東京地検は再捜査した上で起訴か不起訴か改めて判断する。再び不起訴とした場合でも、検察審査会が2度目の審査で再び起訴すべきだと議決をすれば、検察官役に指定された弁護士が強制起訴することになる。
他に起訴相当とされたのは、武藤栄・元副社長と、武黒一郎・元副社長の2人。審査会はほかに、元東電幹部2人について「不起訴相当」、1人を「不起訴不当」とした。
審査会は、地震の予見可能性について、東日本大震災以前の研究は科学的根拠に基づくもので、東電も研究を無視できないと認識しながら、対策費がかさむことなどから採用を避けていたとした。
その上で、勝俣元会長は「東電の最高責任者として各部署に適切な対応策を取らせることも可能な地位にあった。従来の想定を大きく超える津波が襲来する可能性に関する報告に接していると考えられ、重要な点について知らなかったという説明は信用できない」と指摘。武藤、武黒の両元副社長も原子力担当として、2008年に、最悪の場合に15・7メートルの津波が発生するとの試算の報告を受けており、適切な措置を取るべき立場にあったとした。
被災者や市民団体などは勝俣元会長ら当時の東電幹部や、事故対応に当たった菅直人元首相ら政府関係者を告訴、告発した。東京地検は13年9月、当時の東電幹部10人を「容疑不十分」、菅元首相ら政府首脳を「容疑なし」とするなど計42人全員を不起訴処分とした。
これに対し、福島県の住民や避難者でつくる「福島原発告訴団」は同年10月、勝俣元会長ら6人に絞って審査会に審査を申し立てていた。【吉住遊】
◇東京第5検察審査会の議決
勝俣恒久元会長起訴相当
鼓 紀男元副社長不起訴相当
小森明生元常務不起訴不当
武藤 栄元副社長起訴相当
武黒一郎元副社長起訴相当
榎本聡明元副社長不起訴相当
(議決順)
毎日新聞 2014年07月31日 11時38分(最終更新 07月31日 13時56分)
検察審査会の「起訴相当」といえば、誰もが4年前の小沢一郎を思い出すだろう。
東電元会長の勝俣恒久は、その小沢と「ジョン万次郎の会」つながりの仲だった。
http://d.hatena.ne.jp/vanacoral/20110602(2011年6月2日)より『週刊文春』の記事を孫引きする。
一九五五年の自民党誕生直後に、原子力の平和利用を促進する原子力基本法が制定された。以来、五十年以上にわたり電力業界と自民党との蜜月は続いてきた。
一方で、労働組合の電力総連も野党に議員を送り込み続け、その系譜は現在の民主党に引き継がれている。
東京電力を始めとした電力業界の触手は、政界に網の目のように張り巡らされてきたのだ。果たして、東電の“毒マンジュウ”を喰った政治家たちに、原発処理や賠償問題ができるのか。徹底取材で「東電と政治家の闇」を探ったーー。
「現役議員の中で、東電と最も長く深い関係のあるのは、小沢一郎さんで間違いない」(ベテラン政治記者)
東電と民主党の小沢元代表との関係は、二十年以上の長きに及ぶという。
「小沢さんの財界での最大の後ろ盾は、長らく東電の平岩外四さん(故人)でした。経世会旗揚げ前の竹下登さんが、財界人との勉強会で付き合いのあった平岩さんに『小沢のための会を作ってやってくれ』と頼み、財界人で小沢氏を囲む『一政会』ができたのです。それが一九八〇年代半ば、小沢さんが自民党幹事長になる前のことです」(同前)
平岩氏といえば、七六年から九三年まで東電の社長、会長を歴任し、九〇年から九四年までは経団連の会長を務めた東電、財界のドンである。〇七年五月、平岩氏(享年九十二)の訃報に小沢氏は<若い時から大変目をかけていただいた。大樹を失った悲しみをかみしめ、心からご冥福をお祈りする>との談話を出したが、三十歳近く年の離れた二人の蜜月は並大抵のものではなかった。
「九〇年十一月、豪腕幹事長として絶頂にあった小沢さんが、日米の草の根交流を図るために『ジョン万次郎の会』を設立しましたが、平岩さんはその発起人にも名を連ねた」(同前)
別の古参の政治部記者はこんなエピソードが印象に残っているという。
「九三年六月、小沢氏が自民党を飛び出して、八月に細川連立政権を作った。直後の九月、平岩さんは経団連の会長として、それまで長年行われてきた自民党への政治献金の斡旋を中止した。自民党殲滅(せんめつ)を目指した小沢さんがどれほど喜んだか分かりません」
平岩氏を源流とした、小沢氏と東電との深い関係は随所で力を発揮したようだ。ある政治ジャーナリストはこんな話を明かす。
「阿部力也という世田谷区議がいますが、彼は小沢さんが自民党幹事長だった頃の秘書です。その後、東電のグループ企業である東電不動産に入社し、区議選に立候補。今も同社から給料を貰いながら、区議の仕事をしています。政治家の秘書を辞めた人間がいきなり東電グループに入社できたのは、小沢さんの口添えがあったからに違いないと言われました」
当の阿部氏に尋ねると、小沢氏の秘書だったことも、東電不動産の社員で報酬もあることも認めたが、小沢氏の口添えで入所したわけではない、と答えた。
また前述した「ジョン万次郎の会」は、今も小沢氏が会長で、東電の勝俣恒久会長が理事を務めている。(vanacoral注;4月*1時点で勝俣氏は顧問)
さらにその勝俣氏と小沢氏は囲碁仲間でもあるという。財界関係者が明かす。「六本木のANAホテルの三十七階に、高級会員制囲碁サロンがあります。小沢さんと勝俣さんはここの囲碁仲間で、勝俣さんは『囲碁では小沢さんに負けないんだ』とうれしそうに言っている。〇九年の政権交代後、幹事長として鳩山政権を牛耳っていた小沢さんに会いたくても会えない財界人が多い中、勝俣さんは囲碁の縁を通じて小沢さんに食事会を持ちかけた。三井物産の上島重二元会長と新日鉄の今井敬名誉会長も加わって四人で数回会食したそうです」
(週刊文春 2011年6月9日号134-135ページより)
*1:2011年=引用者註