kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

できそこないの陰謀史観に満ちあふれた田母神俊雄論文のお粗末

文化の日」は1946年の日本国憲法公布を記念する祝日である。
その時期に、昨年は「大連立」騒動が勃発したが、今年は前航空幕僚長田母神俊雄の論文が世間を騒がせている。

ネットで田母神論文のPDFファイルファイルにアクセスできるので、読んでみた。
http://www.apa.co.jp/book_report/images/2008jyusyou_saiyuusyu.pdf

内容を論じる前にこのファイルの体裁を批判すると、文字間隔が開きすぎていて、極めて読みにくい。かつて「一太郎」のデフォルトがこんな感じだった。PDFファイルを作成したのが田母神か編集者かは知らないが、この体裁一つとってみてもお粗末極まりない。

さっそく蒋介石コミンテルンによって動かされたという文章があり、予想通りお決まりの張作霖爆殺コミンテルン陰謀論が出てくる。現在、産経新聞が広めようとしている陰謀論である。

論文を読み進めると、次第に文章が口語体に近くなってきて、著者が頭に血を昇らせながら書いていることがうかがわれる。さらに4ページに入ると、それまでcenturyを用いていた半角英数字フォントが、突如1箇所だけTimes New Romanに代わるなど、細かな配慮にも欠ける。それ以前に、数字を全角で表記したり半角で表記したり扱いが統一されていない。ひどいのは5ページの最初の行にある「2600人」であって、「2」が全角、「600」が半角になっている。

ぶっ飛んだのは、5ページの「実はアメリカもコミンテルンに動かされていた」というくだりである。はてなブックマークのコメントに「これはひどい」というタグをつけるにふさわしい。真珠湾攻撃アメリカの陰謀だったというお決まりの陰謀論も出てくるが、もはや驚くには当たらない。

噴飯もののこの論文が広く支持されるようになれば、アメリカが日本を見る目も変わってくるのではないか。典型的な反米右翼の陰謀史観に基づく妄論だ。しかし注意しなければならないのは、この論文の終わりの方に「改革」批判が出てくるところだ。現在、コイズミカイカクへの批判が強まっているが、左側からだけではなくて、平沼赳夫一派のような右側の国家主義者たちもコイズミカイカクを批判するようになっており、それに対して左側で反新自由主義を唱える人たちも融和的な姿勢を見せたり、中には積極的に右側の「反カイカク」論者を支持する人までいる。だが、右側の「反カイカク」の内実などこの「田母神論文」の程度のものだということだ。

笑えたのは、「日本ではいま文化大革命が進行中なのではないか」というくだりだ。このような反知性的な論文を発表して「文革2008」を推進しているのは、ほかならぬ田母神俊雄である。「お前が言うな」と言いたい。