先月読んだ本。当ダイアリーでこれまでに取り上げた本は除く。
- 作者: 秦郁彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/04/17
- メディア: 単行本
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秦郁彦は右派の学者。この人の名前でググると、「きまぐれな日々」の下記記事が上位で引っかかる。
きまぐれな日々 「つくる会」の右派学者・秦郁彦が田母神俊雄論文を徹底批判(2008年11月13日)
以下引用する。
秦郁彦は『諸君!』を主な舞台にする歴史家で、「つくる会」のメンバーにして、従軍慰安婦問題を教科書から削除せよと主張するゴリゴリの右派である。その秦郁彦までもが、11日付の朝日新聞(ウェブでは読めないようだ)と上記毎日新聞で田母神論文を徹底的に批判しているのだ。
参院で行われた田母神の参考人招致について、秦は上記毎日新聞記事で、
マンガ的な低レベルのやりとりで不快でした。肝心の国防について、『これでは国を守れないから困る』といった注文が出ているわけでもない。戦争を巡るコミンテルン陰謀説は、徳川埋蔵金があるとかないとかいったレベルの話です。懸賞論文で最優秀賞を取ったのが不思議でならない。
とコメントしている。また、11日付朝日新聞記事では秦は、「日本はルーズベルトの罠にはまり真珠湾攻撃を決行した」とする田母神の主張を、
これも、バージョンを変えて繰り返し出てくる「ルーズベルト陰謀説」の一種だ。ルーズベルト大統領は日本側の第一撃を誘うため真珠湾攻撃を事前に察知していたのに現地軍に知らせなかった、という筋書きのものが多い。こうした話はミステリー小節のたぐいで、学問的には全く相手にされていない。
とあっさり退けている。コミンテルン陰謀説についても、最近産経新聞が躍起になって広めようとしている「張作霖爆殺コミンテルン陰謀説」を、
「極めて有力になってきている」などと田母神論文は書くが、歴史学の世界では、問題にされていない説だ。張作霖爆殺事件が関東軍の仕業であることは、首謀者の河本大作はじめ関係者が犯行を認めた。このため田中義一内閣が倒れ、「昭和天皇独白録」でも、「事件の首謀者は河本大作大佐である」と断定されている。他にもコミンテルン謀略説が論文に出てくるが、根拠となる確かな裏付け資料があいまいで、実証性に乏しい俗論に過ぎない。
とコテンパンに批判している。
上記は田母神俊雄批判だが、著者は本書でも田母神を批判しており、それに加えて江藤淳、渡部昇一、小堀桂一郎、中西輝政、藤原正彦、西尾幹二らも俎上に上げている。櫻井よしこへの批判的言及もある。実証的な「親米保守」と自らを位置づけているらしい著者から見ると、たとえば江藤淳などは妄想に満ちた「反米保守」ということになるようだ。
江藤は1999年に自殺したが、渡部、小堀、中西、藤原、櫻井らは安倍晋三や安倍と同系列の政治家を熱烈に応援する人たちだ。たとえば渡部は稲田朋美の後援会長を務めている。
一方、江藤で思い出されるのは、下記「小沢信者」のブログ記事だ。
http://blog.livedoor.jp/hanatora53bann/archives/51366974.html
江藤淳は小沢一郎を応援していた。1993年といえば当時自民党に属していた小沢一郎が「政治改革」における「右」側の旗振り役だった頃だ。「左」側からは社会党、「中道」からは公明党やさきがけなどが乗ってきた。
現在、『週刊ポスト』あたりは橋下徹が安倍晋三や小沢一郎と組んで一大勢力を形成することを夢想しているようだが、「親米保守」である民主党主流派や自民党主流派(このあたりに著者の親和性が高いと思われる)がともに日に日に支持を失っている現状では、『ポスト』の妄想とばかりも笑い飛ばせないものがある。但し小沢一郎の場合は政治生命の残りが少ないので、時間との戦いになる。いずれにせよ、橋下、安倍、小沢の「アブナイ」トライアングルは監視していく必要があるだろう。
安倍晋三に近い上記人士らの場合は「歴史認識」に自らの願望や妄想を混入させる「トンデモ」だが、「小沢信者」の場合はもっとハチャメチャであり、その極端な例が梶川ゆきこであるといえるかもしれない。
梶川ゆきこ ツイ発言集4/30-5/1 - Togetter
他に読んだ本。
- 作者: 三木義一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2012/03/23
- メディア: 新書
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- 作者: 湯浅誠
- 出版社/メーカー: 山吹書店
- 発売日: 2007/07
- メディア: 単行本
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後者は、2008年の反貧困キャラバンが当時住んでいた高松(香川県)に来た時、シンポジウムの会場で買ったもの。読んでいなかったのだが、最近しばしば「変質」してきたといわれる湯浅氏の5年前の本で、「かつての湯浅誠」を再確認しようと思い立って読んだ次第。2009年に違う版元から「第2版」が出ている。