kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

後藤健二氏殺害さる

湯川遥菜氏に続いて、後藤健二氏も殺害された。

http://www.asahi.com/articles/ASH1T5RC5H1TUHBI01G.html

後藤健二さん殺害か 「イスラム国」が新たな動画

 過激派組織「イスラム国」による人質事件で、拘束されたフリージャーナリスト後藤健二さん(47)=東京都港区=とみられる男性が殺害される様子の動画が日本時間1日早朝、インターネットに公開された。

 映像の左上には、「イスラム国」のメディア部門のロゴが映し出されていた。

 菅義偉官房長官は1日午前6時に首相官邸で記者会見を開き、「このような非道かつ卑劣きわまりないテロ行為が再び行われたことに、一層激しい憤りを禁じ得ない」と述べ、関係省庁に情報収集などの対応を指示したと述べた。

 (中略)

 後藤さんは昨年10月、トルコ経由でシリアに向かい、「イスラム国」の支配地域に入ったとみられ、その後、連絡が取れなくなっていた。

 1月20日に公開された映像では、後藤さんと会社経営者湯川遥菜(はるな)さん(42)=千葉市=が人質になっている様子が確認された。黒ずくめの男が日本政府に対し、72時間以内に身代金2億ドル(約236億円)を支払わなければ殺害すると警告。同24日深夜には男性の遺体の写真を持つ後藤さんの画像が公開された。「イスラム国」側は、遺体を「湯川さんだ」と説明、後藤さん解放の条件を変更し、2005年にヨルダンで起きた爆破事件に関与した女性死刑囚の釈放を求めた。

 27日深夜には、改めて女性死刑囚を24時間以内に釈放するよう求める内容がネット上に投稿された。29日にも、イラク時間の同日日没(日本時間同日午後11時半ごろ)までに釈放を用意するよう要求する音声が公開されていた。

 日本政府は、ヨルダン政府などと連携して解放を目指していたが、31日まで、事態が膠着(こうちゃく)していた。

     ◇

後藤健二さんの足取り(関係者の証言などによる)

 2014年4月 シリアで取材中に湯川遥菜さんと知り合う。その後、いったん帰国

 10月2日 トルコ経由でシリアに再入国

   3日 シリア北部で取材した動画をツイッターに投稿。「『イスラム国』が街を取り囲み、攻撃を仕掛けています」と解説

   6日ごろ 日本に帰国

   8日 東京でテレビ番組に出演

   22日 友人に「海外出張に行く。29日午前中に帰国する」とメール

   同日ごろ 日本を出国。シリアへ

   23日 ツイッターへの投稿が途絶える

   24日 日本のニュースサイトの担当者にコラムをメール送信

      シリア北部で現地の関係者に「『イスラム国』に行く」と話す

   25日 「イスラム国」の支配地域近くで別の現地関係者と会う

 2015年1月20日 オレンジ色の服を着た後藤さんと湯川さんが映った動画が公開される。ナイフを振りかざす黒ずくめの男が2億ドルを要求

 24日 湯川さんが殺害されたとみられる場面の写真を持つ後藤さんの画像が公開される

 27日 ヨルダン軍パイロットとみられる男性の写真を持った後藤さんの画像が公開される。後藤さん解放の条件である死刑囚解放まで「期限は24時間」とされる

 29日 「イラク時間の29日日没までに死刑囚がヨルダン軍パイロットと交換されなければパイロットが殺害される」と話す後藤さんとみられる音声が公開される

2月1日 後藤さんが殺害されたとみられる動画が公開される

朝日新聞デジタル 2015年2月1日08時08分)


上記引用文中「(中略)」とした部分については、湯川遥菜氏殺害さる - kojitakenの日記(2015年1月25日)に準じる扱いとした。

ワウリンカとバブリンカ、エドベリとエドバーグ、ムハンマドとマホメットなどなど

突如として暇ネタだが、先日テニスの全豪オープン錦織圭を破ったスイスの選手を、朝日など新聞は「ワウリンカ」と表記しているのに対し、NHKは「バブリンカ」と表記し、アナウンスしている。

調べてみたところ想像通り"w"の読みに関するもので、粗っぽくいえば英語式かドイツ語式かどちらの発音をするかの解釈で表記が分かれるものだった。スイスにおける彼の出身地方では、英語の"v"に近い発音をするとのことで表記が分かれるものだが、しょせん日本語で正確に表記できるものではないから、どちらでも構わないとは思う。ただ、英語式発音だと「ワウリンカ」に近くなるのかもしれない。

それだけなら記事を起こす気にはならなかったのだが、気づいたのは、かつてNHKの方が英語読みっぽい表記を採用していたことを思い出したからだ。それは、1990年頃のトッププレイヤー、Stefan Edberg についてであって、スウェーデン出身のこの選手を、新聞は「エドベリ」と表記したのに対し、NHKは「エドバーグ」と言っていた。

昔と今とでマスメディアの表記が違う例として、イスラム預言者ムハンマドを、かつてはマホメットと表記していたことが挙げられる。類似の例として、ボクシング選手の Muhammad Ali は、大部分のマスメディアに「モハメド・アリ」と表記されていた。70年代の毎日新聞は「ムハマド・アリ」と表記していたが、いつの間にか他紙に倣って「モハメド・アリ」の表記に変えていた。ただ、ネット検索をかけると、最近のスポーツ紙は「ムハマド・アリ」と表記しているようだ。これは新聞社の系列別ではなく、「一般紙対スポーツ紙」の違いになっている。日刊スポーツもスポーツニッポンサンケイスポーツも「ムハマド・アリ」表記になっている。それは、スポーツ紙各紙が配信を受けている通信社の表記がせいかと思って調べてみたら、やはり共同通信は「ムハマド・アリ」表記だった。時事通信は「モハメド・アリ」表記だが、スポーツ紙は大部分共同通信の配信を受けているようだ。

なお、ボクシング選手とは関係なく、イスラム預言者マホメット」の表記を毎日新聞が「ムハンマド」の表記に変えたのは1996年らしい。下記の登録者でなければ全文を読めない毎日新聞記事をみつけた。

http://mainichi.jp/shimen/news/m20150131ddm007070132000c.html

布施広の地球議:ムハンマドの研究

 日本人人質事件は多くのことを考えさせるが、「やはりイスラムは日本と縁遠いなあ」と思った方が多いのではなかろうか。

 そもそもイスラム教の預言者ムハンマドと呼ぶかマホメットと呼ぶか−−。還暦を過ぎた私はマホメットと習ったが、先日、書店で高校世界史の教科書を片っ端からめくるとムハンマドの表記が圧倒的で、初出のみムハンマドマホメット)とする教科書が一つだけあっ...


以後は登録していなければ読めないはずなのだが、Google検索をかけた時に、下記の文言が表示された。

そこで、信者の発音を優先しましょうと上司に提案し、了承を得て1996年からムハンマドマホメット)と書き始めた。この表記が定着し、今はカッコが外れた。毎日新聞のデータベースを見ると、それまでは外部の寄稿者を除いてマホメットと書く ...


毎日以外の新聞がいつ頃から現在の「ムハンマド」表記に変更したかはわからない。というかそこまで調べる気にはならなかった。

トマ・ピケティが「トリクルダウン」を否定した

久々にトマ・ピケティの話題。先週、朝日新聞社と在日フランス大使館の招きで来日しており、いくつかニュースも流れているが、「イスラム国」の日本人人質事件の影響で報道が目立たなかった。

昨年末、このウェブ日記のコメント欄で、OECDがトリクルダウンを否定したかどうかという議論が出た時、ピケティに言及するコメントもあった。私は年末の12月20日から今年の1月2日まで、2週間かけて『21世紀の資本』を読んだが、「トリクルダウン」という文字列は1箇所も出てこなかった。


21世紀の資本

21世紀の資本


しかし、今朝(2/1)の朝日新聞は、ピケティが「トリクルダウン」を否定したと報じた。

http://www.asahi.com/articles/ASH1034ZCH10ULFA003.html

ピケティ氏、東大で熱弁 格差の世襲化に危機感

青山直篤、鯨岡仁


 低成長下の社会で不平等が広がることに警鐘を鳴らし、世界的な論争を巻き起こしている「21世紀の資本」の著者、トマ・ピケティ・パリ経済学校教授(43)が31日、来日を機に東京都文京区の東京大学で講義した。学生や教員ら約500人が参加し、活発な議論になった。

 ピケティ氏は、資産家が得る運用益は、経済成長に伴って一般の人にもたらされる所得より大きく伸びると主張。低成長下の先進国では、放置すれば「持てる者」と「持たざる者」との格差が広がる、と訴えて注目された。

 講義では、人口減少が進む日本や欧州では特に、相続する資産がものを言う「世襲社会」が復活していると指摘した。学生から望ましい税制について問われると、資産家であればあるほど高率の税を課す「累進課税」によって「若い人が資産を蓄えやすくなる一方、最上位の富裕層に富が集中しすぎないようにすることができる」と主張。比較的資産の少ない若い世代を優遇する税制にすべきだとの考えを示した。

朝日新聞デジタル 2015年2月1日12時49分)


無料で読める記事はここまで。しかし、記事には続きがあり、その部分に「トリクルダウン」に関するピケティのコメントが出ている。紙面より手打ちして引用する。下記引用文は、東大での講義に先立って行われた日本記者クラブでの会見を報じたもの。

 また、大企業やお金持ちが潤い、じわじわと中小企業や低所得者に及ぶとする「トリクルダウン」の主張に対し、ピケティ氏は「過去を見回してもそうならなかったし、未来でもうまくいく保証はない」と否定。不平等が政治に与える影響については、「経済的な不平等は政治的な発言力の格差にもつながる。民主主義が脅威にさらされる」と語った。

朝日新聞 2015年2月1日付3面掲載記事より)


これで、「ピケティがトリクルダウンを否定した」ことが確定した。ここにメモするとともに、議論に加わっていた id:suterakusoさんをIDコールしておく。

なお、私自身の感想を言うと、ピケティは『21世紀の資本』の中で、トリクルダウンという言葉こそ用いていないが、その議論がトリクルダウン効果を否定するものであることは明白だと考えていたから、ピケティが「トリクルダウン」を明確に否定したことには全く驚かないどころか、当然の発言だと思った。