kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

トマ・ピケティが「トリクルダウン」を否定した

久々にトマ・ピケティの話題。先週、朝日新聞社と在日フランス大使館の招きで来日しており、いくつかニュースも流れているが、「イスラム国」の日本人人質事件の影響で報道が目立たなかった。

昨年末、このウェブ日記のコメント欄で、OECDがトリクルダウンを否定したかどうかという議論が出た時、ピケティに言及するコメントもあった。私は年末の12月20日から今年の1月2日まで、2週間かけて『21世紀の資本』を読んだが、「トリクルダウン」という文字列は1箇所も出てこなかった。


21世紀の資本

21世紀の資本


しかし、今朝(2/1)の朝日新聞は、ピケティが「トリクルダウン」を否定したと報じた。

http://www.asahi.com/articles/ASH1034ZCH10ULFA003.html

ピケティ氏、東大で熱弁 格差の世襲化に危機感

青山直篤、鯨岡仁


 低成長下の社会で不平等が広がることに警鐘を鳴らし、世界的な論争を巻き起こしている「21世紀の資本」の著者、トマ・ピケティ・パリ経済学校教授(43)が31日、来日を機に東京都文京区の東京大学で講義した。学生や教員ら約500人が参加し、活発な議論になった。

 ピケティ氏は、資産家が得る運用益は、経済成長に伴って一般の人にもたらされる所得より大きく伸びると主張。低成長下の先進国では、放置すれば「持てる者」と「持たざる者」との格差が広がる、と訴えて注目された。

 講義では、人口減少が進む日本や欧州では特に、相続する資産がものを言う「世襲社会」が復活していると指摘した。学生から望ましい税制について問われると、資産家であればあるほど高率の税を課す「累進課税」によって「若い人が資産を蓄えやすくなる一方、最上位の富裕層に富が集中しすぎないようにすることができる」と主張。比較的資産の少ない若い世代を優遇する税制にすべきだとの考えを示した。

朝日新聞デジタル 2015年2月1日12時49分)


無料で読める記事はここまで。しかし、記事には続きがあり、その部分に「トリクルダウン」に関するピケティのコメントが出ている。紙面より手打ちして引用する。下記引用文は、東大での講義に先立って行われた日本記者クラブでの会見を報じたもの。

 また、大企業やお金持ちが潤い、じわじわと中小企業や低所得者に及ぶとする「トリクルダウン」の主張に対し、ピケティ氏は「過去を見回してもそうならなかったし、未来でもうまくいく保証はない」と否定。不平等が政治に与える影響については、「経済的な不平等は政治的な発言力の格差にもつながる。民主主義が脅威にさらされる」と語った。

朝日新聞 2015年2月1日付3面掲載記事より)


これで、「ピケティがトリクルダウンを否定した」ことが確定した。ここにメモするとともに、議論に加わっていた id:suterakusoさんをIDコールしておく。

なお、私自身の感想を言うと、ピケティは『21世紀の資本』の中で、トリクルダウンという言葉こそ用いていないが、その議論がトリクルダウン効果を否定するものであることは明白だと考えていたから、ピケティが「トリクルダウン」を明確に否定したことには全く驚かないどころか、当然の発言だと思った。