kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「戦争によらない格差是正」は以前からのリベラルの課題だ

id:zenzaburoさんの暴論に対する批判をさらに続ける。前の記事で「(後略)」として留保をつけながら流した部分に対する批判が中心。

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20160204/1454540757#c1454571018

zenzaburo 2016/02/04 16:30
財政金融政策というくくりで見れば、日本は欧米に先駆けてすでに拡大策です。中でも財政をより強く出動させる、というのは争点になるでしょうが、程度の問題ではないでしょうか。また、現政権は分配について税制で対応してくるのではないかと思います。実はそれこそピケティの提案です。逆に財政出動も金持ち増税もできなければリベラルにもチャンスはあるでしょう。それと、分配という時大事なのは労働者の団結権ですので、これを加えれば金持ち増税財政出動、労働者保護というセットになります。ちょっと陳腐です。


http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20160204/1454540757#c1454635599

zenzaburo 2016/02/05 10:26
(前略)
というわけで甚だ微妙なのですが、それはおいといて上記の古典的共産党的スローガンで足りるんですか?とてもこれでは勝てそうにない。いやむしろ、ピケティが言っているように、これらを実現したのは戦争であり、ファシズムなんです。
つまり、分配オンリー信者の理屈では戦争志向、ファシズム志向と同じことになります。それが一部の自称リベラルとやらの正体。
ところで安倍の経済政策を2012に絶賛したのはクルーグマンで、私もその時点では成功するだろうと思いました、消費税増税で失敗したね。


これに対する杉山真大(id:mtcedar)さんの反論。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20160204/1454540757#c1454768029

mtcedar 2016/02/06 23:13
(前略)
>>ピケティが言っているように、これらを実現したのは戦争であり、ファシズムなんです。
>>つまり、分配オンリー信者の理屈では戦争志向、ファシズム志向と同じことになります。
ピケティの主張を誤読しているのでは?彼が指摘したのは戦争や社会主義革命などが起きることで社会政策面への重要性が認識され、結果的に再分配や格差の縮小が実現したというもの。つまり原因と結果を逆に解釈してる。


ていうか、戦争によってそれまでに富裕層が蓄積した富が破壊されて平等な社会になった*1ってことだと思います。

で、「戦争によらない格差の是正」をピケティは課題にしてるってことですね。その処方箋が税制改革中心だというのはzenzaburoさんのご指摘通り、というよりそこを読み間違える人など誰もいないでしょう。もちろんピケティは成長の意義や金融政策を否定したりはしませんが(そんなことはまともな経済学者なら当たり前でしょう)、最も重視しているのが税制の改革ってことです。ところが、zenzaburoさんは先に

現政権は分配について税制で対応してくるのではないかと思います。実はそれこそピケティの提案です。

と書いておきながら、あとのコメントでは

ピケティが言っているように、これらを実現したのは戦争であり、ファシズムなんです。
つまり、分配オンリー信者の理屈では戦争志向、ファシズム志向と同じことになります。それが一部の自称リベラルとやらの正体。

などと書いている。この2つの文章を読めば、ピケティは自分で出した提案を自分で否定していることになります。これはあまりにも滅茶苦茶な言いがかりです。ピケティは、従来の税制では富の再分配が十分なされていないから格差が拡大したのであって、税制を改革することによって、何も戦争によらなくても格差を解消できるのだと言っていると読むべきです。というか、私は昨年『21世紀の資本』を読んだ時そう思いました。しかしzenzaburoさんの論法によると、ピケティは「古典的共産党的」かつ「戦争志向、ファシズム志向と同じこと」になってしまいます。

この「戦争によらない格差是正」というのは、何も最近になってピケティが言い出したことでも何でもなく、リベラルにとっての以前からの課題でした。

そのことは、たとえば坂野潤治が2014年に出した下記の本を読むだけで容易に理解できるでしょう。



この本は3時間くらいで読めます。私がつけている読書記録を参照すると、一昨年(2014年)暮に、ピケティの『21世紀の資本』の読書を中断して一気読みをしていました。

もっとも、坂野潤治はブント(共産主義者同盟)上がりの人です。60年安保当時の新左翼の「闘士」。つまり、それだけでzenzaburoさんにとっては全否定の対象かもしれませんね(笑)。

*1:たとえアメリカのような戦勝国であっても、戦時経済体制によって富裕層の富は国家に吸い上げられた。アメリカではたとえばガルブレイスのようなリベラル派の経済学者が、ルーズベルト政権下でそのために大胆な経済政策を画定した。