kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

なぜ自民も、維新も、小池氏も勝てなかったのか…衆院3補選が示す「自民にすり寄る野党勢力」の終わり(尾中香尚里)

 これは、立民への評価が高すぎるという難点はあるが、共感できるところが少なくない記事だ。記事のタイトルを見ただけで著者が誰かはわかった。

 

president.jp

 

 著者は元毎日新聞記者の尾中香尚里氏。

 私が特に共感したのは下記の部分だ。

 

希望の党騒動」がようやく終焉を迎えた

 

東京15区は自民候補不在のなか、9人が乱立する混戦を立憲が制した。維新は3位に沈んでおり、長崎3区同様「立憲vs維新」の構図での評価も可能な選挙だが、筆者はこの選挙を別の観点から注目していた。2017年秋に当時の野党第1党・民進党民主党から改称)を大きく分裂させ、政界に「多弱野党」状態を生み出した「希望の党騒動」が、この選挙でようやく終焉を迎えた、と思えたのだ。

 

東京15区補選は「希望の党騒動」をめぐる主要登場人物が、ほぼオールスターキャストで登場した選挙だ。希望の党を結党した小池百合子東京都知事、当時の民進党代表として希望の党への全党合流を決めた教育無償化を実現する会の前原誠司代表、のちに希望の党の共同代表を経て国民民主党を結党した玉木雄一郎代表。そして希望の党から「排除」された枝野幸男氏らが結党した立憲民主党の議員たち――。

 

騒動の震源地だった東京で、立憲が再び「希望の党」側を退けて勝利した。勝敗より注目すべきはその構図だ。「排除」された側の立憲が、その後さまざまな仲間を迎え入れ「野党結集の軸」となりつつあるのに対し、「改革保守勢力の結集」を模索した希望の党側は、無所属と維新の二つの陣営に分裂した。

 

野党結集の軸が「非自民・非共産の改革保守勢力」から「連合から共産党まで幅広く包含する『改革保守からの脱却』勢力」に移った。それを「希望の党騒動」の終焉という形で見せてくれたのが、東京15区補選だったと筆者は考える。

 

URL: https://president.jp/articles/-/81308?page=2

 

 そうだな。昨年末から今に至るまで、私が住む東京都江東区で起きた政治に関する一連の出来事は、まさに「希望の党」騒動の再来だった。だから4月はそれにずっと熱狂し続け、月が変わってもまだ記事を打ち止めにできずにいる。

 尾中氏の記事の引用に戻る。

 

自民にすり寄る小池氏の敗北

 

東京15区補選に戻ろう。

 

小池氏はこの選挙で、自らが特別顧問を務める地域政党都民ファーストの会」が国政進出を目指して設立した「ファーストの会」が作家の乙武洋匡氏を擁立する、と発表した。乙武氏推薦に動いたのが、玉木氏率いる国民民主党だった。

 

小池氏と玉木氏。「希望の党騒動」後に同党の共同代表を務め、たもとを分かった2人が再びタッグを組んだ。だが、当時と違うのは、希望の党が「政権交代」を目指したのに対し、現在の2人はともに自民党に色目を使っていることだ。

 

玉木氏は言うに及ばず、小池氏も最近の都内の地方選挙を「自民+公明+都民ファースト」の枠組みで戦って勝利し、裏金問題に苦しむ自民党に恩を売ってきた。乙武氏についても、小池氏は当初、両党に支援を求める腹づもりだった(この経緯については4月15日公開「『与党でも野党でもない候補』は結局、自民党になびく…乙武洋匡氏の『無所属出馬』にみる拭いがたい違和感」をお読みいただきたい)。

 

URL: https://president.jp/articles/-/81308?page=4

 

 赤字ボールドにした、小池百合子が都内の地方選で最初に自民党に恩を打ったのも、ほかならぬ江東区で昨年12月に行われた区長選だった。

 この時の都ファ・自公側の選挙事務所は、江東区役所のすぐ隣の居酒屋跡に設けられた。告示直前に貼られたポスターには、小池百合子の顔写真だけが大々的にあった。候補者の大久保朋果現江東区長も自民党公明党も完全な脇役だった。小池の小池による小池のための選挙だったのだ。ポスターは告示日に差し替えられたが、差し替えられる直前の異様な大久保選挙事務所予定地に何十枚も貼りめぐらされたポスターの禍々(まがまが)しい印象は、今も鮮烈に残っている。ああ、写真を撮っておけば良かったな。私は事務所開きの日の夕方に、大久保朋果氏とも接近遭遇した。氏は戦う前から余裕綽々の表情だったように見えた。その時の事務所は、来月中旬に丸亀製麺うどん屋になる。

 その区長選で大久保朋果に敗れた4候補のうち、一番得票が多かったのが酒井菜摘氏だった。2位とはいっても大久保氏には大きく水を開けられた。今回の補選での酒井氏のポスターには「区長選惜敗」と銘打たれていたが、あれはどう考えても完敗だったよなあと思ってしまった。でも今回の勝利にはあの選挙での完敗の経験が生きたようだ。

 小池はその後八王子市長選でも自民、特に萩生田光一に恩を売った。しかし江東区長選のような圧勝にはならず結構な接戦だった。

 3月に都議会では都ファと自公が一体となって、立民と共産の都議が発した小池批判の発言を議事録から削除する動議を出すなど、都ファと自公とが一体となって立共に襲いかかってくる構図がはっきりしてきた。そんな中で行われた衆院東京15区補選だったから、立民は共産や社民の支援、それに新選組櫛渕万里氏の個人支援などを得て*1選挙戦を戦うほかなかったのである。立民右派支持者の中にはこの構図を良く思わない人たちがいるようだけれども。

 尾中氏の記事の引用に戻る。

 

一方、この選挙区ではすでに、維新の金沢結衣氏が出馬を表明していた。前原氏率いる「教育無償化を実現する会」は金沢氏を推薦。ここに着目すれば「希望の党騒動」の中心人物だった小池氏と前原氏が敵対することになった、と言える。

今もなお「野党を結集して自民党から政権を奪う」構えを崩さない前原氏にとって、自民党に近づく小池氏の姿はどう見えたのだろうか。

 

改革保守」政治からの脱却

 

希望の党」で改革保守を結集しようとした勢力が、分裂して戦った東京15区補選。両陣営とも、かつて自らが「排除」しようとした勢力から誕生した立憲の酒井菜摘氏に及ばなかった。金沢氏は3位、乙武氏は5位に沈んだ。

 

選挙戦最終日の27日、酒井氏の最終演説に駆けつけたのが、立憲の創設者である枝野氏だった。「民間に委ねればうまくいく、というのは『昭和の政治』だ。『自己責任だ、小さな政府だ』なんて、いつの時代の話だ」と訴える枝野氏の演説は、明確に「改革保守」の政治を切り捨てていた。

 

URL: https://president.jp/articles/-/81308?page=4

 

 私は豊洲で行われた酒井氏の最終演説には行かなかった。東陽町門前仲町の間を往復して、飯山陽や金沢結衣の街頭を横目に見ながら歩いていたのだった。酒井氏は最終演説のあと、江東区役所前でマイク納めをやったらしいから、東陽町門前仲町の間の散歩などやらない方が家からはずっと近くて酒井氏のマイク納めと遭遇することができたかもしれない。しかしそこまではやらなかったというかやれなかった。前日の26日まで仕事がハードだったためにかなり疲れていたからだ。やっと少し元気が出てきたので散歩する気になったのだった。そしたら、たまたま飯山陽や金沢結衣の最終街宣や、最終街宣を終えて門前仲町にあったらしい選挙事務所に戻ってくる乙武洋匡陣営が永代通りを練り歩いてくるのと遭遇した。乙武氏とは接近遭遇したが、昨年12月に大久保朋果氏と接近遭遇したのと同じくらいの距離ですれ違った。そして選挙結果は真逆だった。

 尾中氏の記事のうち、最後の部分には少し異論がある。

 

「従来保守vs改革保守」の構図は無理筋

 

「非自民・非共産の改革保守勢力の結集」というお題目は、小選挙区制度の導入以降、野党陣営に重くのしかかっていた。希望の党騒動に沸き立ったメディアは、騒動が惨めな失敗に終わった後は、今度は維新にその役目を背負わせ、ここ2年ほどは明らかに歪んだ「維新上げ、立憲下げ」を繰り返してきた。

 

しかし、自民党が2大勢力の一翼に厳然と存在するなか、彼らは常に「自民党との距離感」を問われ続け、やがて「与党寄り」「野党寄り」に分裂していった。

 

そろそろ「従来型保守vs改革保守の保守2大政党制」は無理筋だ、と認めるべきではないか。政界の自然の摂理に反している。「自己責任」の社会を志向する自民党vs「再分配を重視する支え合いの社会」を掲げる立憲民主党、という大きな対立軸をつくり、衆院選有権者が「日本の目指すべき社会像」を選択する。こちらのほうが「非自民・非共産の改革保守より、政界の構図としてはるかに安定するはずだ。

 

もっとも現在、筆者は「改革保守勢力の結集」それ自体が、全く意味を失ったとは考えていない。筆者が想像したよりはるかに早く、自民党が崩壊過程に入っているからだ。

 

いつか自民党が分裂するとか、派閥解散どころか党自体が解散するとかいう事態になれば、もしかしたらその時には「自民党に代わる新たな保守勢力の再編」が必要になるかもしれない。立憲民主党中心の政治勢力との対立軸となるために。

 

URL: https://president.jp/articles/-/81308?page=5

 

 異論は、記事中で青字ボールドにした部分にある。私には今の立民を「再分配を重視する支え合いの社会」を掲げる政党だとは思えないのだ。そういう人たちもいるが、そうではなくそれと対立する、引用文中で赤字ボールドにした「自己責任」の社会を志向する人たちとか「非自民・非共産の改革保守」を目指す人たちが少なからずいるのではないかと思うのである。もちろん衆院選小選挙区制が中心だから、そういう人たちも含んだ政党の中で「再分配を重視する支え合いの社会」を目指すことが大事だろうとは思う。「再分配を重視する」といえば、私はこのスローガンを銘打った共用ブログを立ち上げようとしてうまく行かなかった経験があるので特に強くこだわるのだが、そういう立場の人間として思うのは、旧希望の党泉健太代表を党首にいただいている今の立憲民主党において、党内での同調圧力が強すぎるのではないかということだ。党内で主導権を握っているのは泉氏が属する保守系であって、少し前までは「ホップ、ステップ。5年後の政権交代を目指す」などと悠長に構えていた泉氏のグループに属する「広島立民の独裁者」であるらしいさる参院議員が、衆院広島3区支部長だった千葉県からこられた方を一度落選しただけで総支部長から外すという、どこかの東京15区を思い出さずにはいられないような冷酷非情な人事をやったとの話も聞いた。しかも新任された総支部長は「誰それ。立民は勝つ気があるのか」と思わせるような人だという。このような党保守派による権力工作をブログ記事で指摘することなどで、弊ブログはおそらく少なくない立民支持の方々に反感を持たれているのではないかと思うが、事実を直視したり、党内で忌憚なく議論することなどが立憲民主党という政党内で果たしてできているのだろうかとの疑問を禁じ得ない。そういうことができないような政党が果たして「再分配を重視する支え合いの社会」を目指すことなど本当にできるのだろうか。

 このような異論も持っているが、全体としては良い記事だった。

 記事についた「はてなブックマーク」のコメント(ブコメ)より。

 

なぜ自民も、維新も、小池氏も勝てなかったのか…衆院3補選が示す「自民にすり寄る野党勢力」の終わり 次期衆院選は「政権選択選挙」になる

今回の東京15区補選を“希望の党騒動の終焉”と総括するのは慧眼であり、納得感がある→“2017年秋に当時の野党第1党を大きく分裂させ、政界に「多弱野党」状態を生み出した「希望の党騒動」がようやく終焉を迎えた”

2024/05/03 06:11

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なぜ自民も、維新も、小池氏も勝てなかったのか…衆院3補選が示す「自民にすり寄る野党勢力」の終わり 次期衆院選は「政権選択選挙」になる

これは余りに楽観が過ぎると思うが、希望以降の"非自民・非共産"が結局、「ジェネリック自民」もしくは自民の下請けに堕し、結集を謳った挙句に四分五裂したのは事実で、彼等の言う"現実主義"は空虚そのものだった。

2024/05/03 05:35

b.hatena.ne.jp

 

なぜ自民も、維新も、小池氏も勝てなかったのか…衆院3補選が示す「自民にすり寄る野党勢力」の終わり 次期衆院選は「政権選択選挙」になる

今回でそこまで潮目が変わったとも思えない / 立憲は活動歴の長い候補を揃えてたし、自民の候補によるここ数年間のやらかし続きのせいで、東京15区では与党やそれに類する政治勢力への忌避感は特に大きかったろう

2024/05/03 06:22

b.hatena.ne.jp

 

 最後のブコメネガコメだが、「立憲は活動歴の長い候補を揃えてた」という文章を見て目が点になった。島根と長崎の2人はそうかもしれないが、東京15区の酒井菜摘氏は2019年江東区議選初当選でまだ5年しか活動歴はない。そりゃ乙武洋匡や飯山陽よりは長いけれども、活動5年で「活動歴が長い」といえるのだろうか?

 私は最初、酒井氏は来年の都議選(あるいは今年の都議補選)に出て、彼女なら定数1の都議補選はともかく*2、定数4の来年の都議選本選には当選できるだろうし*3、その方が良いのではないかと言って、最初は彼女の補選への出馬にブログ記事中で反対したほどだ。

 ブコメ主は「そこまで潮目が変わったとも思えない」と書いているが、私は潮目はとっくの前に、昨年夏あたりに岸田内閣支持率が長期低落し始めた頃にはもう変わり始めていたと思っている。だから昨年は4月の5補選には自民4勝1敗、維新1勝、立民4戦全敗だったのが10月には参院徳島・高知で野党圧勝、衆院長崎4区で自民辛勝にまで変わっていた。それなのに泉健太はその2補選が終わったばかりの11月初めに「ホップ、ステップ。5年後の政権交代を目指す」などと悠長なことを言っていたのでブログ記事で批判したわけだが、潮目なんかとっくの昔に変わっていて、今回の3補選はそれが一気に噴出しただけだと思っている。

*1:同じ新選組でも山本太郎は酒井氏に敵対して須藤元気を応援した。この構図は2020年都知事選の再現である。酒井氏の選挙事務所には、告示日前日までは酒井氏と宇都宮健児氏と立民都連会長の長妻昭氏の三連ポスターが貼られていた。一方山本は都知事選で宇都宮氏と戦うとともに、須藤元気の応援を受けた。

*2:この補選には酒井氏の宿命のライバルになるかもしれない都ファ分派系つまり反小池百合子にして保守系の三戸安弥と、「江東御三家」の山崎家の××息子であられるらしい自民党山崎一輝が出るらしい。

*3:とはいえ江東区では普通の立民候補ではこの定数4の選挙区で議席を獲ることができないくらい立民の党勢は弱い。