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東京新聞の記事「教育基本法 『なぜ変える』明答なく」

「教育基本法 『なぜ変える』明答なく」 (「東京新聞」2006年10月26日)
以下引用する。

教育基本法 『なぜ変える』明答なく
 教育基本法改正案の審議が二十五日、衆院教育基本法特別委員会で再開した。先の通常国会で約五十時間審議したことから、与党から「あと二十時間程度の審議で十分」との声も出る。だが、一九四七年の公布以来一度も変えていない基本法をなぜ、今、変えるのかという根源的な疑問にも、いまだに明確な答弁はない。委員会は三十日から、質疑に入る。 (社会部・早川由紀美)

 「なぜ今、改正なのか」。これまでの審議で与野党議員が繰り返し尋ねたが、当時の政府側は「六十年間の時代の変化」(小泉純一郎首相)、「課題に対応するため新たな理念を加えて法体系を整えたい」(小坂憲次文科相)と述べただけ。現行法のどこに欠陥があるのか、言及はなかった。

 これまでの改正運動などで出てきた見直し論を、市川昭午国立大学財務・経営センター名誉教授は、次の五つに分類する。

 (1)主権を制限されていた占領下に立法された法律で、日本人による自主的な見直しが必要とする「押しつけ論」(2)現行法にはまぎらわしい表現があるという「規定不備論」(3)一連の教育荒廃現象が生じるようになったのは、教育勅語にあった愛国心規範意識などが現行法に規定されていないから、とする「規範欠落論」(4)「時代対応論」(5)憲法改正を前提にした「原理的見直し論」−だ。

 市川氏が臨時委員を務めた中央教育審議会は「基本法改正が必要」と答申を出したが、同氏はこれに異議を申し立てた経緯がある。

 国会審議では「現行法制定当時は米国の占領下で、日本人の精神的バックボーンが抜け落ちていたことを修正しようとするのが、本当の理由ではないか」(自民党委員)などと、与野党双方が押しつけ論などを持ち出し、改正の“真意”を引き出そうとした。

 しかし、政府側は「(基本法成立の)経緯について、(米国の)押しつけだったから日本に合わないものができたかといえば、必ずしもそうでない」(小坂氏)と答弁。不登校学力低下など教育が抱える課題についても「改正をしたことで、自動的に今の課題が解決していくわけではない」(同)と認めている。

 そのため、「現行基本法の理念は引き継ぐというのに、法律は全部改正するという。よく分からない」(民主党委員)という当惑を、前回の審議では残している。

 日本弁護士連合会の同法改正問題対策会議事務局長、鈴木善和弁護士は「教育現場に問題があるから基本法から変える、というのは荒っぽい議論だ。普通の人が分かる因果関係が説明されていない」と指摘。「少なくとも、他の教育関連法はどう改正され、現場はどう改善されるのか、というプロセスの説明が必要」と首をひねる。

 また、現行法にある「(教育は)国民全体に対し直接に責任を負って」などの文言が改正案で削られ、これが教育現場にどう影響するかについて、鈴木氏は「国会審議で明確になったかどうか、疑問が残る」とした。

 市川氏は、改正案に盛り込まれた教育振興基本計画について、十分な議論がなかったと指摘。「基本計画は政府が定めるとした点は、教育行政の権限が文部科学省から官邸に移ることを意味する」と分析する。

 教育は国家百年の大計と言われる。鈴木氏は「政治的、党派的対立の中で、強行採決はしてはならない」と訴える。

(「東京新聞」 2006年10月26日)