kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

安倍晋三が改悪した「教育基本法」を鳩山首相は「尊重する」そうだ

政権交代が確実になった選挙前の頃から気にかかっていたのが、3年前に安倍晋三強行採決で成立させた「教育基本法」を新政権はどうするかということだった。

当時、安倍が教育基本法改正を図ったことに反対して、立花隆が月刊『現代』2006年10月号に、「安倍晋三への宣戦布告」と題した文章を発表した。これがきっかけとなって改正反対論がある程度盛り上がったが(立花が声を上げる前は、朝日新聞や読売新聞の世論調査で、同法改正反対論は1桁パーセントに過ぎなかった)、権力の頂点に立っていた安倍晋三は、強行採決で改正教育基本法を成立させたのである。2006年12月15日のことだった。

きまぐれな日々 毎日新聞の報道 - 改正教育基本法は「改憲へのステップ」で、これを報じる2006年12月16日付毎日新聞の報道を紹介したが、これを以下に再掲する。

変わる教育の憲法・上

 「私の目指す『美しい国づくり』において、教育がすべての基本だ」
 安倍晋三首相は13日の衆院特別委員会で、教育基本法改正への意気込みを語った。審議では「規範意識や道徳の重要性も、『美しい人間』として生きるために必要だ」と繰り返し、「美しい国」という政権のスローガンと基本法改正が「密接不可分」と強調した。
 戦後生まれ初の首相は、「戦後レジーム(体制)からの船出」を掲げる。自民党総裁任期は最長で2期6年。この期間内の憲法改正が目標だ。自主憲法制定を唱えた岸信介元首相が祖父。「岸のDNAを受け継ぐ」(塩川正十郎氏の評)首相にとって、GHQ連合国軍総司令部)主導でつくられた憲法の改正は悲願だ。憲法と一体関係の基本法改正は改憲へのステップにほかならない。
 「総裁選のころから急に教育改革を語り出した」。自民党町村派幹部は、そう証言する。首相の教育論は、愛国心規範意識など、戦前に重視された日本の価値観の復活が中心だ。英国のサッチャー元首相が行った教育分野の規制緩和と管理強化にも関心を向けている。英国は88年の教育改革法を契機に、「教育困難校」の廃校を勧告する教育水準局を設置。帝国主義時代を否定的に描いた歴史教科書を見直した。
 首相と下村博文官房副長官山谷えり子首相補佐官の3人は、かつて保守系議員連盟日本の前途と歴史教育を考える議員の会」のメンバーで、従軍慰安婦などの記述を「自虐的」と批判する「新しい歴史教科書をつくる会」と連携。「つくる会」は保守系の運動団体「日本会議」ともつながる。
 サッチャー改革に着目した「日本会議」幹部の橋渡しで、下村、山谷両氏は04年9月、国会議員6人による「英国教育調査団」に参加した。両氏は「サッチャーは教育の英国病を立て直した」と高く評価するが、識者の間では「所得によって受けられる教育の格差が拡大した」(藤田英典国際基督教大教授)との批判も根強い。
 10月、官邸に設置された教育再生会議は保守路線一本やりとはいかず、議論は難航。代わって教育改革の推進エンジンになっているのが、政府の規制改革・民間開放推進会議だ。教員評価の厳格化や学校の管理職の増員など民間企業並みの改革メニューには、経済界の意向がにじむ。
 戦前の価値観と経済効率化の調和。安倍政権は法律改正の歯車を回したが、議論は生煮えで、改革の実感は薄い。
毎日新聞 2006年12月16日付1面記事より)

記事の終わりの方で、新自由主義勢力(規制改革・民間開放推進会議)が安倍の「真正保守(笑)」路線を必ずしも好んでいなかったことが示唆されているが、結局安倍は政治思想右派と経済右派の方向性の違いに引き裂かれた上、改憲にばかりかまけて国民生活にかかわる問題をそっちのけにしたため、教育基本法改正からわずか7か月後の2007年7月に行われた参院選に惨敗し、最後は総理大臣の座を投げ出した。しかし、安倍が成立させた「改正教育基本法」は今も生きているのである。

これに対し、鳩山政権はどういう姿勢を示すか注目していた。そして、鳩山首相は国会の予算委員会における答弁でこの件に触れた。

産経新聞記事*1より引用する。

 首相は答弁の中で、安倍晋三内閣時代に成立した郷土・国への愛情の育成といった「愛国心条項」を盛り込んだ改正教育基本法について「尊重するのは当然のことだ。一気に変えていくと考えているわけではない」と述べた。ただ、「見直すべきものがあれば見直したい」とも言い添えて、将来的な見直しには含みを残した。

産経新聞 2009年11月5日 20時24分)

鳩山内閣の支持者は、鳩山首相が「見直すべきものがあれば見直したい」とも言っていることを重視するかもしれないが、私は、改正教育基本法について、「尊重するのは当然のことだ」と言った時点でアウトだと思う。民主党右派で、ゴリゴリの改憲論者である鳩山由紀夫の地金が現れたと見る。

私は何も解散総選挙など要求しないが、この鳩山発言によって、鳩山内閣不支持を明確にすることにした。総理大臣は菅直人の方が鳩山よりは良いだろう。つまり、民社国の連立の枠組は否定しないけれど、「首相が鳩山由紀夫だから」鳩山内閣を支持しない、というスタンスである。憲法教育基本法の問題のほかに、鳩山由紀夫には官房長官平野博文を、財務大臣藤井裕久をそれぞれ起用した責任もある。鳩山は前者の人事で菅直人と、後者の人事で小沢一郎と対立した。従って、平野博文藤井裕久だけを責めて、鳩山由紀夫を不問に付すという立場はあり得ない。

政治思想的にタカ派で、経済政策では緊縮財政志向の新自由主義では、自民党政権と何も変わらないではないか。