kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

懐かしの「B層」資料スクープ(サンデー毎日)

この記事は、毎日新聞社の誇るスクープ記事だろうから、簡単にはリンクが切れないとは思うが、念のために保存しておく。
http://www.mainichi.co.jp/syuppan/sunday/tokusyuu/news/20050713-182250.html

竹中平蔵の「広報疑惑」を暴く−−8月解散説浮上 大量造反で「郵政国会」一寸先は闇

 わずか5票差・。郵政民営化法案は、自民党内の大量造反で衆院でかろうじて可決された。小泉純一郎首相は国会が閉会する8月の衆院解散をにおわせて参院での否決阻止に躍起だ。その一方、野党は竹中平蔵郵政民営化担当相の「広報疑惑」で攻勢を強める構えだ。そもそも、与野党の駆け引き以前に、この疑惑には、根深い問題がありそうなのだ。

 本当だとすれば、言うこととやっていることが違うのではないか・。

 そう思わせるのが、竹中郵政民営化担当相をめぐる「広報疑惑」である。

 竹中担当相は2001年に経済財政政策担当相として入閣して以来、行政の透明性や公正性の大切さを繰り返し訴えてきた。

 だが、衆院郵政民営化特別委員会で民主党が政府の内部資料を暴露して重大疑惑が浮上した。簡単に言えば、政府広報チラシの発注に竹中担当相が「口利き」したのではないか、というものだ。口利きといえば不透明な政官業の癒着の象徴だ。

 政府は郵政民営化に対する国民の関心が低いことから、昨年10月に「広報タスクフォース」を設置してPR戦略を練ることにした。

 問題のチラシはその一環として今年2月20日、全国の地方紙に折り込まれて約1500万部が配られた。「郵政民営化ってそうだったんだ通信」とのタイトルで、テレビディレクターのテリー伊藤氏が竹中担当相に質問する体裁だ。

 竹中氏がまだ経済学者だった00年、電通出身の佐藤雅彦慶應大学教授との共著でベストセラーになった『経済ってそういうことだったのか会議』(日本経済新聞社)を思わせるタイトル。対談形式も同じだ。竹中担当相のセンスを反映したチラシだったことは間違いなさそうだ。

 このチラシの製作を請け負ったのが、有限会社「スリード」(本社・東京都江東区)という広告代理店である。だが、まず不自然なのは、同社が昨年3月に設立されたばかりで実績が少ないにもかかわらず、1億5614万円という巨額の契約が入札によらない「随意契約」だったことだ。

 会計法に基づく政令は、160万円以上の物品契約は競争入札を原則にするよう定めている。例外として、緊急性が求められる時や、独創性があって、その企業にしか発注できない場合に随意契約が認められている。

 政府はスリード社から提案された技法が独創的であり、2月初旬に配るために製作を急がねばならず緊急性があった・と国会で主張。また、スリード社の谷部貢社長を「タスクフォース」に推薦したのは、数年前に博報堂の担当者として出入りしていた谷部社長と面識のあった内閣広報官室の斎藤敦参事官と説明した。

 だが、疑惑追及の口火を切った民主党五十嵐文彦衆院議員(ネクストキャビネット総務相)は、こう指摘する。
「チラシに使われているのは、広告業界では一般的な技法です。しかも、自民党の抗議のため、実際に配布したのは2月20日で、緊急性の論拠も崩れている。また、内部告発によれば、谷部社長を推薦したのは斎藤参事官ではなく、竹中担当相の岸博幸秘書官です」


◆「広報疑惑」をめぐる経緯

(政府が国会に提出した資料や答弁などから作成)

2004年
3月30日 有限会社「スリード」設立
10月22日 「広報タスクフォース」発足
12月15日 スリード社の谷部氏が企画案を提案
27日 谷部氏と竹中担当相の秘書官が電話で打ち合わせ
28日 谷部氏と政府広報室「実質契約合意」
2005年
1月12日 スリード社が最終的な企画書提出
18日 政府広報室がこの契約をめぐる「想定問答」作成
竹中担当相とテリー伊藤氏の対談実施
2月2日 自民党総務部会からチラシ配布中止の申し入れ
8日 04年12月28日付の契約書作成
15日 「郵政民営化に意見募集」の新聞広告掲載
20日 チラシ配布
3月2日 スリード社に代金支払い



■野党の追及に䗪猫の目蟖政府説明

 五十嵐議員は特別委で、政府広報室とスリード社の間で実質的な契約が結ばれたとされる昨年12月28日の前日、谷部社長が政府の担当者に送ったメールを暴露した。そこにはこうある。
〈昨夜、岸秘書官と電話にてお話することができました。大臣の意向として確認できた点は以下の通りです。(1)コンテンツを竹中大臣と対談者との対談で形成する→OK(2)対談者候補・交渉の優先順位は下記の通りとなりました。テリー伊藤氏村上龍氏佐藤雅彦氏……〉

 本来、契約の相手方は政府広報室だが、これを読む限り、竹中担当相の指示に基づいて、岸秘書官と谷部社長の間で話が進んでいたことがうかがえる。
 また、「緊急性」を装うために、政府が契約書の日付を操作した疑惑も指摘された。1月には、このチラシが問題化した時を想定したとみられる「想定問答」も作られていた。広告業界の相場に比べて契約額が高く「水増し」があるのではないかとの疑問も示された。

 こうした野党の追及に、政府の説明はヤ猫の目ユのようにくるくる変わり、答弁の訂正が相次いだ。

 6月23日には、細田博之官房長官が「国会で虚偽の答弁をすることは断じて許されないのが当然であり、今後このような疑惑を招くことのないよう十分監督する」と異例の陳謝をする事態にまで発展しているのだ。

 この背後に一体、何があるのか。

 五十嵐議員は7月4日の特別委で、政府広報室関係者からの内部告発があったことを明かしこう指摘した。
「谷部さんのお父様の関係があるのかな、と思わざるを得ない」

 谷部社長の父親、龍二氏はノンキャリアでありながら、国税局長に出世した実力者で、現在は税理士として活動している。政財界との関係も深いといわれる。五十嵐議員は、こう疑問を呈する。
「元国税庁長官の大蔵省OBとも龍二氏は親しい。一方で、竹中さんは大蔵・財務官僚に引き立てられてのし上がってきた人。背後にこうした大蔵・財務省系の大物がいるからこそ、谷部社長は仕事を取ることができたのではないでしょうか」

 五十嵐議員は特別委で竹中担当相にもこう詰め寄った。
「竹中さん、もしくは個人事務所であるヘイズリサーチセンター、これは奥様が社長をされていると思いますが、龍二氏の事務所に税務の相談等、かかわりを持ったことはございますか」

 竹中担当相は、
「妻がやってることですから、私はよく知りません。私の知る範囲では、私の税務の相談も含めて、その方に何か委託しているとか、そういうことはないと思っております」

 と答弁。契約への疑問も再三問われたが、
「私は決裁権者ではございませんので、どのような経緯であったか、詳細には承知をしておりません」(6月29日、特別委)

 といった答弁を繰り返した。秘書官と谷部社長の関係についても「面識はあるものの利害関係はない」。

 こんな木で鼻をくくったような説明では自ら訴えた「透明性」や「公正性」が色あせるというものだろう。

 さらに、スリード社と随意契約していたのは、政府広報室だけではなかった。

 経済産業省が中心となって編集した04年度版「ものづくり白書」の写真付きコラム15ページ分も1000万円で請け負っていた。

 これも、会計法の原則では入札にすべき契約だ。なぜ、随意契約にしたのか。


法案成立を花道に小泉退陣説も

 本誌は同省ものづくり政策審議室に再三問い合わせたが「担当者に返事をさせる」と言うばかりで、期限までに回答がなかった。

 6月29日の特別委でこの件を追及した共産党佐々木憲昭衆院議員は言う。
経産省は契約の前にスリード社の登記簿すら取っていない。初めて契約する業者なのに、あまりにもズサンな確認です。谷部社長との個人的な関係が先にあったのではないか」

 前述の岸秘書官が経産省出身であることとの関係を指摘する声もある。
「いい加減な随意契約は他省庁にもあるのではないか。行政の姿勢が問われているのです」(佐々木議員)

 本誌は当の谷部社長に取材を申し込むと、文書で回答を送ってきた。詳細は次ページの囲み記事をご覧いただきたい。父親の龍二氏には自宅に取材申し入れをしたが返答はなかった。

 国会で追及されているこれら契約の疑惑に加え、小泉政権の本質をあらわにするような問題も明らかになった。本誌7月10日号でも報じたが、スリード社が政府に提出した広報チラシの企画書問題である。
「ターゲット戦略」として、国民を「IQ(知能指数)軸」で分類。IQが低く「具体的なことはわからないが、小泉総理のキャラクターを支持する層」に「徹底フォーカスする」という方針を示している。この層は「主婦&子供」「シルバー層」とわざわざ例示されているのだ。

 自民党民主党の事務局に勤務した経験のある政治アナリスト・伊藤惇夫氏はこう見る。
「PR対象を階層で分類するのは、よくやる方法です。ただ、普通の広告代理店はここまで露骨な表現は使わない。不慣れな業者が作った企画書という印象を受けます。そんな企画書を政府がすんなり受け入れたことが問題です。それだけに、何かの力で急に仕事が回ってきた可能性を疑わせる」

 前出・五十嵐議員も言う。
「大衆に寄り添うふりをして、実はバカにしている小泉・竹中コンビの体質にぴったりの企画書だからこそ採用されたのでしょう。契約の問題も、あれを許したら何でも随意契約で済む。民主党参院でさらに厳しく徹底追及していきます」
「5票差」に勢いづくのは野党だけではない。

 今後の注目は、参院自民党郵政民営化反対派の動向だ。議員数の少ない参院では、18人が反対に回れば否決だ。反対派の亀井派だけでも18人いる。否決なら小泉首相がほのめかす通り解散・総選挙になるのか。

 政治評論家の浅川博忠氏はこう分析する。
参院で否決して衆院を解散するのは矛盾しているが、法的には可能です。小泉首相の性格から、一か八かで解散のバクチを打ってくる可能性はあります」

 だが、浅川氏は衆院解散よりも小泉首相の「花道退陣」の可能性を示唆する。
青木幹雄参院議員会長がどこまで本気で反対派を説得するかがカギです。青木氏は小泉支持でも、心情的には距離がある。法案成立後に退陣するという交換条件で法案成立に協力する可能性がある。小泉首相には花を持たせて退場してもらい、旧橋本派の復活を図る。森喜朗前首相と連携して『福田康夫首相』で中国との関係修復を図るシナリオも考えられます」

 前出の伊藤氏も「6:4で法案は成立するのではないか」と見る。
自民党には、宮沢内閣の不信任案をめぐって分裂した結果、野党に転落した93年のトラウマが強くある。だから、最終的にはブレーキがかかる可能性は高いと思います。ただ、一方で、小泉・竹中コンビの米国流と、日本的、社会民主主義的な路線のギャップが自民党内ではっきりしてきた。これを機に党を割って出る人たちが出れば、民主党と三つどもえで政界再編に向かうかもしれません」

 まさに「一寸先は闇」。小泉首相の公約通り、「自民党をぶっ壊す」ことが現実になる可能性も出てきた。
本誌・日下部聡



疑惑としてとりざたされるのは不可解   谷部貢・スリード社長

 スリード社の谷部貢社長は、本誌の取材に、文書で次のように回答した。
・父親の谷部龍二氏と竹中担当相は面識があり、その影響で仕事を受注した、あるいは龍二氏が竹中担当相の税務上の相談に乗っていたのではないかとの指摘もあるが。
「父は竹中大臣と面識さえなく、面識がない以上、当然税務相談に乗ったことがないとのことを父本人から確認をとっております。どうしてこのようなことが疑惑として取りざたされるのか、不可解としかいいようがありません」
・竹中担当相の岸秘書官との関係が受注に影響したのではないか、との指摘もある。
「岸秘書官とは、これまでも3回程度しかお会いしたことがありませんし、そもそも今回の契約は、5年前から存じあげている斎藤内閣広報室参事官からのお問い合わせをきっかけに行われたものです。ですので、今回の契約が岸秘書官との特別な関係に基づいてされたかのようなご指摘が、何を根拠にして主張されているのか疑問です」
随意契約になったのはなぜなのか。
「そもそも随意契約かどうかという点は、政府内部の手続問題であって、弊社が関与できる問題ではありません。弊社から随意契約を要望したこともありませんし、弊社が関与できる問題ではない以上、政府内部でどういった経緯があったかは弊社としては知り得ないことです」
・「IQ軸」に基づく「ターゲット戦略」に批判が出ているが。
「企画案については、弊社は、効果的なPRをいかにして行っていくかという観点から作成したものであって、それ以上に特定の支持者層を差別視するような意図は全くありませんでした。ただ、非公開の内部資料として作成したものとはいえ、不適切とも思われる表現により、結果的に一部の方々に誤解を招いてしまった点につきましては、大変残念なことであり、申し訳なく思っております」
・「ものづくり白書」受注の経緯は。
「これについても、岸秘書官との特別な関係に基づいてされたかのようなご指摘がなされているようですが、岸秘書官とは全く無関係な業務であり、何を根拠にしてそのようなことが疑惑として取りざたされているのか疑問です。また、随意契約の経緯についても、前述の通り、政府内部の手続き問題であって、弊社が関与できる問題ではないので、弊社としては知り得ないことです」

サンデー毎日 2005年7月24日号より