kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

植草一秀氏への疑念

政治の対立軸(2)三つのトピックス: 植草一秀の『知られざる真実』

において、

政治の対立軸として私は三つの問題が重要だと述べてきた。第一は市場原理と弱者保護についての考え方。「市場原理至上主義」対「弱者保護重視」と置き換えてもよい。第二は官僚利権に対する考え方。「官僚利権温存」対「官僚利権根絶」と捉えられる問題だ。第三は外交の基本姿勢。「対米隷属外交」対「独立自尊外交」と置き換えることができる。

と書かれている。最初の2つには異論はない。私が問題にしたいのは第三だ。

独立自尊外交、それ自体は良いだろう。しかし、植草氏は

 福田政権は北朝鮮拉致被害者についての再調査を開始すると表明したことを受けて、北朝鮮に対する経済制裁を一部解除する方針を示した。その背後に、米国の北朝鮮に対するテロ支援国家指定解除の意向が存在することは明白だ。

 グリーンピース関係者を逮捕までする日本政府が、拉致問題の全面解決を棚ざらしにしたまま、経済政策解除に動くのは、日本の「対米隷属」を象徴する以外の何者でもない。

と書く。

この件に関しては、植草一秀氏は山崎拓より安倍晋三を支持する立場だと考えて間違いなかろう。しかし私は、当ブログにトラックバックいただいた、

エロ拓の対話政策に一票 : かきなぐりプレス

が主張する、

世論は安倍前首相の発言を支持するかもしれないが、政治家は「機を見て敏なり」。アメリカの動きに同調しながら、拉致問題でも北朝鮮側の譲歩を引き出し、何人か帰国させるほうが得策である。

アメリカがテロ支援国家を解除したら、タカ派路線では拉致問題を解決できない。

という意見を支持する。

『世界』7月号に「対北朝鮮 いまこそ対話に動くとき」という特集が出ている。その中で、あの超タカ派で知られた蓮池透氏へのインタビュー記事が掲載されている。

蓮池氏は、

日本の世論は、最近は少し鎮まったかもしれませんが、安倍政権の時代に、拉致問題による北朝鮮に対する対する怒りと憎しみが、ピークに達したと思います。それによって、私に言わせれば、偏狭なナショナリズムのような雰囲気が日本社会に醸成されていった。

(『世界』 2008年7月号より)

と言っている。蓮池氏の変貌には驚くばかりだが、安倍晋三の強硬路線が何らの結果をもたらさなかったことが、蓮池氏のスタンスを変えたのではなかろうか。経済制裁の一部緩和も、蓮池氏は容認している。私も、この件に関する日本政府の動きが間違っているとは思わない。間違っていたのは安倍政権の頃の政策だ。結果を出せなかった安倍晋三の「対北強硬路線」は間違いだった。政治家も国民も、それを共通認識にすべきだ。

植草氏のブログに掲載されているリンク集を見ると、右派民族主義系のブログが非常に多い。平沼赳夫一派への強い親和性をもつブログ群だ。

彼らの困ったところは、「独立自尊」を「反米」かつ「反中反韓」に容易に置き換えやすいことだ。アメリカの押し付けるグローバリズムに反対したり、政府の方針によって反日感情を高まらせた中国や韓国の「言いなりにならない」(いやなことばだが)のは当然だが、それが夜郎自大ナショナリズムに化けてしまうのでは危険きわまりない。

最近は、「自End」にTBされる記事の中にも、福田政権の「媚中媚朝政策」を批判し、「民主党のほうが中国や北朝鮮に対して強硬だ」と称揚している者さえ見かける。とんでもない話だ。

もし、次の総選挙のあと、民主党を中心として平沼一派を取り込んだ連立政権が成立して、その政権が「反米」「反中」「反韓」「反北朝鮮」の主張をするのであれば、日本は国際的に孤立する。現在の北朝鮮の位置に、日本が追いやられることになる。そんな状態で、反グローバリズムだの反新自由主義だのと主張しても、何の意味もない。そんなことになるくらいなら、現在の福田政権のほうがよほどましだろう。

もっとも、平沼一派に共鳴するような政治家は、民主党の中ではごく一部だと私は考えているのだが、とはいえ、植草氏の言説の中にポピュリズムが感じられるのは、非常に気になる。

[参考記事]
『世界』の蓮池透氏のインタビューまとめ - 解決不能