私はイチローに対しては、野茂英雄ほどの強い思い入れはないが、好きな選手ではある。1998年と2000年の二度、倉敷マスカット球場で行われたオリックスのオープン戦を見に行ったことがあるが、その時も目的の半分はイチローのプレーを見ることだった。外野席でイチローの好守を堪能したが、打席でもイチローが巧打を発揮したことはいうまでもない。
この2試合の相手はいずれも阪神で、私はイチローと新庄を比較しながら見ていた。新庄のほうがカッコをつけたプレーをしていたのに対し、イチローのプレーには無駄がないように見えた。最初に見た時、新庄は外野フライを捕球するときに必要もないのにジャンプするパフォーマンスを見せていて、何やってんだこいつ、と思ったが、公式戦に入って新庄はこのプレーでエラーを演じてしまい、以後このバカバカしいパフォーマンスを封印したと記憶している。
野球人としてのイチローと新庄では「格が違う」としか言いようがない。スタンドで二人のプレーを見ていて、はっきりそれがわかった。しかし、それをもって新庄を責めるのはあまりにも酷だ。日米通算3000本安打を記録したイチローと比較できる選手など、そうそういるはずもない。
いつもテレビでイチローに対して憎まれ口を叩いている張本勲が、「あっぱれ」を出したそうだ。それに対して、イチローは「喝」と言ってほしかったと言ったそうで、なかなか笑えるやりとりだ。張本というと、毎週のように番組で新庄に「喝」を入れることで知られていたが、実は新庄の大ファンだった。
イチローですごいと思うのは、今回は違ったけれど、区切りの安打をしばしばホームランで飾ることだ。あれは、絶対に狙っているに違いないと推測していたが、その通りであることを今年の正月にNHKテレビで放送されたイチローの特別番組で知った。本人が認めたのだ。
引き合いに出して申し訳ないが、松井秀喜の日米通算2000本安打は、いったん「エラー」と判定されたのが、記録が覆って「ヒット」(二塁打)と訂正されて達成したものだった。イチローと松井の落差は、あまりにも大きい。