まず、せめてもの朗報から書くと、星野仙一が結局オールスター戦の監督出場を辞退した。ネットでは、「マー君の故障に責任を感じたのではないか」との憶測も流れていたが、あり得る話だと思った。星野の病気には同情すべきだとしても、楽天の最下位及び田中将大の故障には、星野の責任も少なくないとは多くの人が感じるところだろう。さすがの星野も損得勘定をして、「出ない方が得だ」と思ったのではないか。
田中の故障発覚後、マスコミは「スプリットの投げ過ぎ」を言うのだが、スプリットの投げ過ぎは、既に昨年の日本シリーズでも認められた。シーズン終盤からの先発とリリーフの兼任で(星野に酷使されて)ストレートの球威が落ちていた田中は、日本シリーズではスプリットに頼った。その結果、第2戦ではなんとか抑えたものの、変化が甘くなった第6戦では打ち込まれなかった。それにもかかわらず連投でリリーフした第7戦でのヘロヘロなピッチングに目を覆ったのは私だけではあるまい。MLB移籍前のチェックでは異常がなかったと言って、星野の責任を否定しようとする人もいるが、私は星野の責任は免れないと思う。
さらに、星野仙一が昨年の日本シリーズできっかけを作った田中将大の故障は、その兆候が見えていたのにヤンキースが手を打たなかったことによって悪化した可能性が高い。思うのだが、ヤンキースに入って野球人生を狂わせた選手は少なくないのではないか。
あたかも成功例の見本みたいに言われる松井秀喜にしたところで、キャリアハイは移籍2年目の2004年で、しかもこの年のプレーオフで、MLBではただ一度しかない「3連勝後4連敗」の戦犯となった。さらに、2006年以降は故障で目立った活躍ができなくなった。ようやく2009年にワールドシリーズのMVPに選ばれたが、シーズンオフにトレードされた。
さらに、パドレスを蹴飛ばしてゴリ押しでヤンキース入りした伊良部秀輝は、球団が期待したほどの活躍ができず罵倒され、帰国後阪神で一時期活躍したものの、翌年には通用しなくなって退団。そして再度渡米したものの復帰はかなわず、引退の数年後に自殺してしまった。
同様に、日本シリーズやペナントレースの首位攻防戦で決まって打たれる頼りないエースだった元阪神の井川慶も、ヤンキース入りが大失敗で、帰国後はオリックスで一軍と二軍を往復する選手に成り下がった。
野手でも、イチローはなぜか試合に出たり出なかったりで、MLBでの最多安打記録達成が怪しくなってきた。私は以前から、イチローはヤンキースを出て他球団でプレーすべきだと主張し続けているのだが、残念ながらなかなか実現しない。
一部のファンは、「イチローは個人記録の達成よりも優勝が味わいたいのだろう」とイチロー及びヤンキースを弁護するが、ヤンキースは昨年地区4位、今年も現在3位と、優勝を狙える球団とはいえない。今年に至っては、古巣マリナーズの方が勝率が高いのである。
張本勲は、イチローに記録を作らせないためにわざとやっているのだと憤るが*1、私はそうではなく、ヤンキースというのは単に投資が下手で、補強に金を使う割にはなかなか結果を出せない球団なのではないかと思う。まさにアメリカの読売。これでは選手はたまったものではない。
正真正銘の活躍を見せているのは黒田博樹だが、この人は最初からヤンキースに入ったわけではなく、ドジャースで4年間プレーしている。
田中の場合、当初はヤンキース入りを希望していたわけではなかったにもかかわらず、本命の球団と条件が折り合わず、結局ヤンキース入りしてしまった。星野による酷使の次は金力だけのダメ球団ヤンキース入りとは、巡り合わせが悪かったというほかない。