kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

ドラマも良かったが、村上龍の原作はなお良かった「空を飛ぶ夢をもう一度」

村上龍のこの中篇集も、消費税率引き上げ直前の3月に買ったものだと思い込んでいたが、今年4月発売だったらしい。だとしたら、河出文庫版のコナン・ドイル『バスカヴィル家の犬』を買った時に一緒に買ったものだったのかもしれない。



帯に、「ドラマ化決定! 6月14日よりNHK土曜ドラマ(放送予定)」とあるので、NHKでドラマが放送されることは知っていたが、昨夜(7/12)放送された最終回だけ見た。というのは、最終回の原作「空を飛ぶ夢をもう一度」*1が、この中篇集に収められた5篇の中でも出色の出来だったからだ。私は普段よほどのことがない限りテレビドラマは見ないが、最終回だけは見てみようかと思ったのだった。

この記事ではあらすじは紹介しない。感想を一言だけ書くと、「ドラマも良かったが、村上龍の原作はなお良かった」ということだ。

ところで、ドラマの最後に流れていた音楽は、バッハの『ゴルトベルク変奏曲』であって、アリアと30の変奏曲とからなる、チェンバロのために書かれた音楽を、作曲家にしてサキソフォン奏者の清水靖晃サキソフォン5本とコントラバス4本のために編曲したものらしい。流れていたのはその「アリア」だったが、前半部分・後半部分それぞれのリピート及び後半部分の前半で短調に転調する部分が省略されていた。この曲は、最初アリアが演奏され、30の変奏曲が奏でられたあと、最後にアリアが回帰する構成なのだが、おそらく作中人物の福田貞夫の少年時代の思い出が生涯の最後によみがえるストーリーと重ね合わせたものであろう。


NHK土曜ドラマ「55歳からのハローライフ」オリジナルサウンドトラック 音楽:清水靖晃 | SOUNDTRACKS | IDEAL MUSIC LLC. アイデアルミュージック より

清水靖晃 プロフィール

作曲家、サキソフォン奏者、音楽プロデューサー。1990年代後半、バッハの無伴奏チェロ組曲をテナーサキソフォンで取り組んだアルバム『チェロ・スウィーツ』が高い称賛を得る。2007年、五音音階作品『ペンタトニカ』を発表。2010年には、すみだトリフォニーホールからの委嘱でサキソフォン5本とコントラバス4本の為に編曲したバッハの『ゴルトベルク変奏曲』を初演。また、作曲家、編曲家としての活動範囲も多岐に渡る。その他、映画やマルチメディア作品の音楽も多数手掛け、最新作『キューティー&ボクサー』(13年)では第86回アカデミー賞ドキュメンタリー部門ノミネート、そして、シネマ・アイ・オナーズ2014では音楽賞を受賞した。

*1:本では、最後ではなく2番目に収録されている。