「判菅びいき」宣言・・・改めて、国民のために、安定した菅民主党の政権運営を願う : 日本がアブナイ! より。
私がたびたびこのブログを引用するのは、目配りが良くて面白い情報を提供してくれるからということもあるが、社民連支持から出発しているところが私と共通しているからだ。私の場合は、選挙権を持つ前の1977年に江田三郎が社会市民連合を発足させた前後に話が遡るが、それについては何度か書いた。そして、菅直人が社市連発足当時の参加者の一人であることは周知の通り。
ところで、いきなり揚げ足を取るが、ブログ主が
と書いているけれども、ちょっと違うんじゃないか。過去には今回の改選分に当たる2004年参院選が2003年衆院選の翌年に当たっているけれども、その前が2001年参院選が2000年衆院選の翌年に当たった例で、この時は「純ちゃんブーム」でかなり盛り上がった*1。
それ以前となると、1980年の衆参同日選挙が1979年の衆院選の翌年に行われた例にまで遡らなければならず、この時もダブル選挙ということもあって盛り上がったし、さらにその前が1977年の参院選が1976年の衆院選の翌年に当たった例だ。そして、この時は「与野党逆転」を賭けた選挙戦となり、社市連の他に「革新自由連合」も立ち上がって、「クイズダービー」回答者の座を擲って(?)出馬した明治大学教授・鈴木武樹*2の演説の過激さが、革自連を応援していた同番組の司会者・大橋巨泉*3を震え上がらせるなど、話題も豊富で大いに盛り上がったものである。この参院選で自民党が過半数を辛うじて守り、党勢の退潮に歯止めをかけたところから、日本の政治の右傾化が強まった。そういう意味でも歴史的な参院選だった。これと対をなすのが、それから30年後、自民党政治の「終わりの始まり」を告げた2007年の前回参院選であり、なんと投票日の7月29日は江田三郎生誕100年の記念日だった。それ以降の政治を、私は「失われた30年」を取り戻すための道のりだと位置づけており、鳩山由紀夫政権も菅直人政権も過渡的な性格を持つ政権だと考えている。おそらく、避けがたい流れとして、もう一度、より新自由主義色の強い政権が誕生して失敗を経験しない限り、左派政権は生まれてこないだろう。そして、その前に日本の社会が大混乱した場合、左派政権ではなく「国家社会主義」が台頭する恐れを常にはらんだ危なっかしい状態が続く。
今現在の「小沢信者」のカルト化は、まさにその「国家社会主義」台頭の前兆ではないかと私は考える。その露払い的な言説は既に現れ、それに影響を受けた人たちも多い。
かつて、ヨースタイン・ゴルデルの『ソフィーの世界』の翻訳で楽しませてくれて、のちには『やさしいことばで日本国憲法』という本を出した池田香代子さんのブログも、その一例に挙げざるを得ない。
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「池田香代子」を検索語にしてGoogle検索をかけると、『やさしいことばで日本国憲法』を紹介した『きまぐれな日々』初期の記事*4が、いまだに検索結果の最初のページ(上位10件以内)で引っかかる。
だから、あまり悪く書きたくはないのだが、池田さんが書いた下記ブログ記事はあまりにひどい内容だ。
池田香代子ブログ : 成熟過程のもやもや選挙 - ライブドアブログ
池田さんは、森永卓郎が『マガジン9条』に載せたコラム*5を引用して、次のように書く。
森永さんによると、民主にも自民にもウハッとサハッがいて、その比率は民主で4:6、自民で6:4、ウハッは「日米同盟重視・法人税減税・消費税UP」、サハッは「基地移転反対・経済的安定と平等・財政出動」に色分けされるそうです。
鳩山・小沢時代の民主党は、多数派のサハッが順当に党を引っぱっていたのが、菅・枝野になって少数派であるはずのウハッが実権を握ったからややこしい。「民主党政府は、財源が厳しくて、施策を打てないのではない。左派から右派へと、政策を根本から切り替えてしまったのだ」(森永さん)。
これ自体、あまりに単純化した、問題の多い括り方だ。鳩山由紀夫や小沢一郎が「左派」であるかのように読めるが、もちろんこれは誤りである。鳩山由紀夫のバックにいた「旧民社」は、「サハッ」どころか「自民党よりさらに右」として悪名高い勢力である。
但し、菅政権を支える人たちの中に新自由主義者が多いのは事実だから、森永−池田の前提についてはこれ以上突っ込まないことにする。しかし、この前提に立ってさえ、下記はあからさまな事実誤認だ。
たとえば国会議員定数削減をうちだしている民主のウハッが権力の座にある以上、こちらが民主党サハッに肩入れしたつもりでも、当座はかれら民主党ウハッに力をあたえてしまい、結果、議員数が減らされ、ますますカレーのメニューが固定化される虞(おそれ)も大です。
いったい池田さんは、「衆院比例定数80削減」のもっとも強硬、というより獰猛な推進者が小沢一郎であることをご存じないのだろうか。
「衆参で120議席定数削減」小沢幹事長が明らかに : 田中龍作ジャーナル
鳩山由紀夫が、かねてからの持論だった衆議院の比例区定数削減を、昨年の衆院選における民主党のマニフェストに盛り込む意向を示した時、私は『きまぐれな日々』でこれを厳しく批判した。
きまぐれな日々 百害あって一利なしの「比例区定数削減」にこだわる民主党
この選挙制度改悪については、もちろん菅直人も枝野幸男も前原誠司も、要するに民主党国会議員のほぼ全員が賛成しているが、小沢一郎や鳩山由紀夫は、彼ら以上に熱心な「衆院比例定数80削減」の推進者だったのである。
これほど明白な事実がありながら、それに目をつぶって「小沢・鳩山」を「サハッ」に位置づけた俗説の流布に協力しているとしたら、知識人としての良心が疑われるし、小沢・鳩山が「衆院比例定数80削減」の強硬な推進者であることを知らないとしたら、それは無知に過ぎる。いずれにしても、今回の池田さんのブログ記事は、世論をミスリードするものとして厳しく批判せざるを得ない。どう控え目に評しても、今回の池田さんの記事からは、「易きに流れる」という言葉しか思い浮かばない。
私から見ると、『ソフィーの世界』を翻訳した頃にはまだノンポリだったとどこかで告白されていたように記憶している池田香代子さんよりも、社民連時代から20年来菅直人を応援してきたという『日本がアブナイ!』の管理人・mewさんの政治感覚の方がはるかにまっとうであると思えるのである。現在では、mewさんと私の立場はかなり離れてしまっているが、それでもそう思う。
ところで、今回の『日本がアブナイ!』の記事を、なぜ取り上げようと思ったかというと、
今回、以前から応援している菅直人氏が首相になったので、喜んで応援を強化しようとしたら、何故か、mew周辺の政治ブログの世界では、超少数派になってしまっていることから、このタイトルにしてみた。^_^;
というくだりに共感したからだ。「判菅びいき」の心意気やよし。私もまた、社民主義志向の人間として、30年もの間、「高福祉高負担の政策など論外」という時代を経験して、やっとまともな議論ができる時代がきたと思っているところだから、少数派であることなど全く恐るるに足らずである。私は、菅直人が「まず景気回復のための財政出動、次いで直接税の税収増、しかる後に環境税や消費税」という、福祉国家建設のあるべき手順を踏まないで、いきなり財政再建や法人税減税の穴埋めに悪用されかねない消費税増税を持ち出したから批判しているのであって、「小さな政府」志向の「みんなの党」や、何も考えていない小沢信者による菅直人批判と一緒にしてもらっては困ると考えている。
mewさんには、今後も自ら信じるところを貫いてほしいと、エールを送る次第である。