kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

河村たかし辞意表明に関する各紙の社説

日頃、朝日新聞ばっかり読んでるものだから、各紙とも河村たかしマンセーに違いないと思っていたが、そうでもなかった。各紙の社説から。


中日新聞:河村市長へ 民意が望むのは仕事だ(11月27日付)*1

 驚いた。名古屋市河村たかし市長が辞職して、出直し市長選に再出馬するという。議会の解散請求が不成立の見通しとなった責任というが、あなたに期待した大きな民意に応える責任はどうする。

(中略)

 再出馬するとはいえ、重い負託を途中で投げ出すのに、どんな大義名分があるというのか。

(中略)

 辞職は「リコール不成立のけじめ」で、再出馬は「もう一回やらせていただいてもいいですか、ということ」と説明するが、納得する市民がどれほどいるか。

 このまま市長選を行っても、多くの市民の支持を集める河村市長の優位は揺るがないかもしれない。ならば何のための市長選か。果たして、市民のためなのか。

 河村市長は今すぐでなく、十二月下旬に辞職するという。市長選を来年二月の愛知県知事選とダブル選挙にするためだ。知事選に挑む盟友の大村秀章衆院議員(自民)と連携し、ダブル勝利を目指す戦略が見えてくる。

 不可欠な選挙なら、市民もいとわない。けれど市長選を、知事選で盟友の援護射撃に利用しようということなら「選挙の私物化」とみなされても仕方あるまい。

 辞職から市長選までの年末年始は、名古屋市が来年度予算を編成する最も大事な時期だ。なのに肝心の市長が不在となる。

(後略)


毎日新聞:出直し市長選へ 疑問残る河村氏の戦術(11月27日付)*2

(前略)

 そもそも来年2月の愛知県知事選、市議会が解散された場合の市議選に合わせ、市長選も重ねる「トリプル選」実現が河村氏の狙い、との見方はかねてあった。

 知事選には、河村氏と連携する衆院議員の出馬が見込まれている。仮に市議会の解散が実現しなくても、4月には任期満了に伴う市議選が行われる。今回、辞任する直接の理由として河村氏が挙げたのは、署名問題をめぐる引責だが、2月の知事選と市長選をダブル選挙とすることで市議選に影響を与え、地方政治に大きなうねりを生む戦略なのだろう

 河村氏は10%の恒久的な市民減税、議員の報酬半減などを掲げ市議会と対立してきた。議会解散を求める住民の署名に大量の無効署名があると判定されたからといって、30万を超す有効署名の重みが消えるわけではない。無効の判定が妥当かも、議論を呼んでいる。市政の重要課題をめぐり、選挙で住民の声を聞くことを頭からは否定しない。

 とはいえ、市議会との対立を解決するうえで、出直し市長選が最もふさわしい選択か、疑問がある。

 出直し選が行われても、河村氏と対立候補との間で、市議会との争点に沿う形で論争が展開されるかは未知数だ。仮に河村氏が再選しても、市議選の結果次第では対立構図はそのまま維持される。

 数十万の解散署名が集まったことが影響し、市議会の会派には河村氏の主張に部分的に歩み寄る動きも表面化していた。河村氏は議会から不信任や辞職勧告決議を突きつけられたわけでもない。最初から「出直し選ありき」だったのではないか、との疑念はぬぐえない。

(後略)


読売新聞:名古屋市政混乱 住民投票のルール再点検を(11月27日付)*3

(前略)

 河村市長は、出直し市長選を、来年2月投開票の愛知県知事選とのダブル選挙としたい考えだ。知事選に出馬する自民党大村秀章衆院議員と連携して、減税や議会改革を訴え、相乗効果を上げようという思惑がうかがえる。

 自らの掲げる政策を実現するため、民意を問い直すことは否定されるべきではない。

 ただ、市民税減税の恒久化や市議報酬の半減などに反対する市議会との対立を煽(あお)るような河村市長の手法は、大衆迎合的であり、建設的とは言えまい。

(後略)


毎日の批判は中日よりいくぶん甘く、読売はさらに相当河村に甘いが、それでも三紙とも河村の手法を批判している。しかし、批判しているのは河村の政治手法に過ぎず、河村の「減税真理教」を批判した新聞は一紙もない。

一方、朝日、日経、産経の各紙は社説で取り上げていない。日経は、「『まず高所得者増税』には異議がある」、産経は「あす沖縄知事選 安保体制の弱体化は困る」と題した、いかにも両紙らしい論外の社説を掲載しているが、朝日新聞が社説で取り上げず、社会面で河村寄りの記事を掲載したことは全くいただけない。


90年代に政治改革の旗を振った後房雄は、河村のブレーンから離脱した現在、下記*4のように河村を批判している。

河村市長辞職、再出馬へ
愛知知事と同日選に

例によって中日だけへのリークで、思惑通りの1面トップでしたが、その1面解説の見出しが「任期途中 大義なし」でしたから、河村氏もがっくりでしょう。

中日の記事によれば、議会リコールで「必要署名数に足りなかったけじめをつけるため」、来月下旬に辞職し、再出馬する方針を決めた、とのことです。

署名数が足りなかったことや、組織的不正行為が発覚したことなどの「けじめ」なら、ただ辞職すべきで再出馬するべきではありません。

署名運動側がまだ、無効署名に異議申し立てをして成立させようとやっきになっている最中に、親分が白旗を揚げてどうするのでしょう。

最大の思惑がはずれて、どん底まで気分が落ち込んだ中でヤケクソで口走ったというのが真相でしょう。中日でなくても、あまりの大義のなさ、タイミングの悪さに呆然です。

署名が理由なら、前から言っていたように来年4月の市議会議員選挙にぶつける方がまだ理屈があります。立候補予定者たちもそれを願っていることでしょう。

そういうなかで、知事選とぶつけるだけのための辞職ですから、これを支持する人はまずいないでしょう。焼酎を飲みながらの思いつきの作戦もそろそろ限界のようです。


いや、朝日の記事を見てるとそうは思えなかった。でも、平均から逸脱しているのは朝日の方だったと知って少し安心するとともに、朝日のていたらくに改めて呆れた。

ま、他紙や学者の論調がこんな調子だから、朝日も明日あたりには河村に批判的な社説を掲載するのではないか。


但し。

再度強調するが、いずれの新聞も、河村の「減税真理教」を批判してはいない。これは、全く評価できない。