kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

東京電力会長が「会社の存続は厳しい」と認める

東電社長の「ミスターコストカッター」・清水正孝は入院してしまったが、昨日、同社会長の勝俣恒久が記者会見した。


asahi.com(朝日新聞社):東電会長、1〜4号機の廃炉言明 「会社、厳しい状況」 - 東日本大震災

東電会長、1〜4号機の廃炉言明 「会社、厳しい状況」

2011年3月30日22時30分


 東京電力勝俣恒久会長(71)が30日、入院した清水正孝社長(66)に代わって記者会見し、福島第一原子力発電所の事故について陳謝。同原発の1〜4号機について「廃止せざるをえない」と言明した。勝俣会長は「原子炉が安定するには、かなり時間がかかる」とし、会社の存続が「大変厳しい状況」にあるとの現状認識も示した。

 東電の経営トップが記者会見したのは、13日の清水社長以来17日ぶり。

 1〜4号機は水素爆発などで大きく損傷。冷却作業がうまくできない状況が続いている。勝俣会長は、「今の状態をみると、おそらく廃止せざるを得ない」と認めた。東電が公式の場で廃炉方針を示したのは初めて。廃炉にかかる費用については「まだ試算までいかない」とした。

 一方、被害が比較的少ない5、6号機や福島第二原発廃炉については「国や地域の皆様方のご意見をうかがいたい」と、言及を避けた。

 「東電が今の姿で存続できるか」との会社存続問題に関する問いには、「一言で言えば、大変厳しい状況」と答えた。金融機関から2兆円超の緊急融資を受けるが、「いくらあっても足りない状況。何とか資金不足に陥らないよう努力する」と説明した。

 東電は、原子力損害賠償法に基づいて、原発周辺の避難住民や、出荷停止などに追い込まれた農家への損害賠償を求められる。

 勝俣会長は「誠意をもって補償に向けた準備をする」と述べた。ただし、「最大限の補償、おわびをしたい」としながらも、法律ではどういう場合に東電の責任が免除されるかはっきり決まっていないことを挙げ、「政府と考えていきたい」と、補償範囲・程度については明言を避けた。

 夏には再び深刻な電力の供給不足に陥ることについては、「供給力の確保に全力を挙げる。夏の計画停電は最小限にとどめる」と発言した。


朝日新聞東京本社発行最終版の見出しは、「東電会長 廃炉認める 1〜4号機 『会社存続厳しい』」となっている。

東電の一時国有化、原発の国営化、電力会社の解体及び再編成へと進む道筋がはっきり見えてきた。私にはそう思える。

東証では東電株は連日のストップ安であり、昨日はついに株価が466円になった。東電株は昔でいう「500円株」だから、額面割れしたことになる。

東証の株価を見ると、電力会社では東電株が突出して安く、次いで東北電力が1435円、他はすべて1500円以上だが、2000円を超えているのは四国電力の2334円だけである。

「東電は大きすぎて潰せない」とよく言われる。東電会長の勝俣も、それを意識してか「民間企業としての存続を目指す」と言ったらしいが、福島県に人の住めない地域を作り、日本の産業に計り知れない大ダメージを与えた東電の民間企業としての存続など、もってのほかだろう。東電は、憲法25条に定められた日本国民の生存権を侵す大罪を犯したのである。

よく「既得権益」がどうのと言われるが、電力業界は戦時体制の10社のまま手つかずにきて、原発推進政策によって原発利権を貪ってきた。1998年以降、民間給与所得が激減し続けても、東電など電力会社の給与水準はほとんど下がっていない。これも、「原発利権」あればこそだったはずだ。ところがあれほど「既得権益」を叩くマスコミは、電力会社や「原発利権」をほとんど批判してこなかった。それは、電力会社がマスコミの大スポンサーだからだ。福島原発事故後の現在でさえ、「電波芸者」と呼ばれる田原総一朗は、「原発推進を続けるのは当然」という前提に立ってテレビ討論を仕切っている。

また、これまで原発推進政策を進めてきた自民党への批判が、メディアはほとんど行っていない。だから世論の自民党に対する批判も弱いのだが、これはおかしい。枝野官房長官に続いて菅首相も、これまでの原発推進一本槍の政策を見直す発言をしたが、民主党はこの方向性を強め、小沢一郎代表時代の2006年に「原発積極推進派」へと転換した政策を再転換して「小沢以前」に戻し、原子力発電の是非のみならず、エネルギー政策に関する国民的議論を喚起する方向性をとるべきだ。その際、原発を推進してきた自民党を批判するスタンスを、民主党は今ならまだとれる。政策転換以降5年間の誤りは、自民党の長年の誤りに比べればまだ罪は軽いからだ。もちろん、共産党社民党には民主党を厳しく批判する資格がある。

私は、「白猫黒猫論者」なので、自民党総裁谷垣禎一原発推進見直し論もそれなりに評価している。「保守本流」にとっては、原発を推進してきた中曽根康弘や読売新聞(正力松太郎から渡邉恒雄に至る)といった「保守傍流」から主導権を奪還するチャンスでもある。


なお、民主党トロイカのエネルギー政策に関するスタンスについて、昨日、id:kemouさんから、下記のコメントをいただいたので、以下に紹介する。
http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20110330/1301438091#c1301483681

kemou 2011/03/30 20:14
菅のサイトを「エネルギー」で検索したところ、2006年あたりからバイオマスエネルギーに強い関心を持ってたことがうかがえます(原発についての言及はほとんどなし)。同様に鳩山・小沢のサイトも検索してみたところ、鳩山は原発を過渡的なエネルギーと位置付けたうえで、脱原発に対しても一定の意識を持っていた様子で、小沢に関してはエネルギー政策がほとんど見当たりませんでした(出てくるのは党のマニフェスト掲示板の書き込みばかり)。


要するに3人のもともとの立場は、鳩山由紀夫がもっとも先進的で、「原発を過渡的なエネルギーと位置付けた」2006年以前の民主党の政策は、旧社会党に一定の配慮をしたという以上に、鳩山由紀夫の思想が強く反映されていたと見られる。鳩山由紀夫は、もともと環境派国会議員として売り出した人だから、うなずける話だ。

菅直人には鳩山由紀夫のような脱原発の意識は希薄だったにせよ、再生可能エネルギーに関心を持っていた。

上記2人の理系政治家に対し、文系の小沢一郎はエネルギー政策にはほとんど関心がなく、だから日立のエンジニアとして原発の設計にもかかわった職歴を持つ元社会党社民党大畠章宏を通じて、連合(電力総連や電機労連を抱える)が強く働きかけた「原発積極推進派」への政策転換をあっさりのんだ、というのが本当のところだろう。

だが、小沢一郎は当時の党代表だから、「小沢一郎民主党のエネルギー政策を『原発積極推進』に転換した」と表現することは間違っていない。

私が今立ち上がるべきだと考えているのは鳩山由紀夫だ。鳩山は、連合や大畠章宏小沢一郎によってねじ曲げられた民主党のエネルギー政策を元に戻すべく発言すべき時ではないのか。鳩山は初心を忘れてしまったのか。

鳩山由紀夫にも「小沢離れ」が求められると思う今日この頃である。