kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

九電・川内原発(鹿児島)、10月以降再稼働へ

ずっと前には6月頃決定されて今夏にも再稼働するとみられていた九電・川内原発(鹿児島)が、今秋にも再稼働する見通しとなった。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140716/k10013045621000.html

川内原発 安全対策 事実上“合格”取りまとめへ


鹿児島県にある川内原子力発電所について、原子力規制委員会は、九州電力の安全対策が事実上、審査に合格したことを示す審査書の案を、16日、取りまとめる見通しです。今後、一般からの意見募集を経て正式な審査書が完成すると、住民への十分な説明がなされるかや地元自治体がどのような判断をするのかが焦点になります。

川内原発1号機と2号機で進められている九州電力の安全対策を審査してきた原子力規制委員会は、「原発の新たな規制基準に適合している」とする審査書の案を16日の会合で取りまとめる見通しです。
審査書の案は、事実上、審査に合格したことを示すもので、今後、一般からの意見募集を経て正式な審査書が完成すると、川内原発は、原発事故を受けて見直された新しい基準に適合する初めての原発となります。
その後は、再稼働の必要性や重大事故への対策などを住民が十分納得できるように国や九州電力の説明がなされるのかや地元自治体がどのような判断をするのかが焦点になります。
一方、原発に設置された機器の詳しい設計の資料など、今後、九州電力が提出して規制委員会の認可を受けなければならない手続きが残されていて、九州電力が目指す川内原発の再稼働は10月以降になるとみられます。


再稼働までの流れは

原子力規制委員会は、「審査書案」に対しておよそ1か月にわたり一般からの意見を募集します。
寄せられた意見を反映させた審査書が正式に決定すると、九州電力に再稼働に必要な「設置変更許可」という許可を出します。これを基に、九州電力は立地自治体である鹿児島県と薩摩川内市から再稼働の同意を得たいとしています。
一方、地元の鹿児島県は、川内原発の30キロ圏内にある薩摩川内市いちき串木野市など合わせて5つの市と町で住民説明会を開き、原子力規制委員会から審査結果の説明を受けたいとしています。その後、薩摩川内市と地元市議会、それに県議会の意向を確認したうえで、県知事が再稼働に同意するか判断するということです。
こうした動きと並行して、九州電力は、安全設備や機器が地震の揺れに耐えられるかを計算した膨大な資料や重大事故対策の体制や訓練に関する規定を提出し、規制委員会の確認を受けるとともに、新しい設備については完成後の検査を受ける必要があります。


再稼働に向けた課題は

川内原発の再稼働に必要な今後の手続きには課題もあります。
(十分な説明)
まずは、地元自治体をはじめ社会への説明です。規制委員会は「安全対策が規制基準を満たしているからといって事故のリスクがゼロになったとはいえない」として、電力会社のさらなる安全性向上の取り組みとともに、原発周辺地域の十分な防災対策を求めています。国や電力会社は「安全神話」と決別し事故は起こりうるという前提に立ちながら、再稼働の必要性や事故が起きた場合の対策を住民が十分理解できるよう丁寧な説明が求められます。
(同意の範囲)
また、電力会社が同意を得る自治体の範囲も議論になっています。原発の再稼働に際して、地元自治体の同意は法律の義務づけはありませんが、九州電力は安全協定を結んでいる立地自治体の薩摩川内市と鹿児島県の同意を得たいとしています。しかし、立地自治体ではないものの、周辺にある自治体からは「事故が起きた際に対応を求められる30キロ圏内の自治体も同意の対象とすべきだ」という意見が出ています。福島第一原発の事故では周辺自治体の多くの住民が避難を迫られただけに、こうした声に真摯(しんし)に応えていく必要があります。
(防災対策)
そして、周辺自治体に課せられた大きな課題が重大事故に備えた防災対策です。住民からは「原発の安全対策とともに“車の両輪”であるはずの自治体の防災対策が不十分だ」という声が上がっています。具体的には、風下になりやすい場所が避難先に選ばれているほか、病院や介護施設で避難計画の作成が進んでいないということです。アメリカでは、国が自治体の避難計画を審査し認可しないかぎり、原発を運転できない制度を取り入れていて、日本でもそうした制度を求める意見が出ています。
(再稼働判断)
こうした課題があるなかで、最終的な再稼働をどう判断するのかが焦点になります。法律上は、必要な許認可が下りれば、電力会社の判断で原発は再稼働できます。一方、ことし4月に閣議決定されたエネルギー基本計画で、政府は、「規制基準に適合すると認められた原発の再稼働を進める。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう取り組む」としています。おととし、前の政権の下で再稼働した関西電力大飯原発のケースでは、政府が再稼働を決めましたが、今回、同じような手順を踏むかどうかは明らかにされていません。

NHKニュース 2014年7月16日 4時11分)

原子力規制委員会の田中俊一は、わけのわからない言い訳をゴニョゴニョ言っている。

http://mainichi.jp/select/news/20140717k0000m040063000c.html

川内原発:田中規制委員長「安全だとは私は言わない」

 原子力規制委員会は16日、九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)について、「新規制基準に適合している」とする審査書案を定例会で了承した。今後、30日間の意見公募などを経て審査書を決定する。川内1、2号機は、東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえ、安全対策を強化した新規制基準をクリアする初の原発となる。地元同意手続きや設備の使用前検査なども必要となるため、再稼働は10月以降になる見通しだ。

 ただ、規制委は「基準に適合しているかどうかを審査するだけで、稼働させるかどうかには関与しない」との姿勢を崩さず、政府も「稼働させる政治判断はしない」との立場だ。実質的に再稼働の判断は電力会社と立地自治体に委ねられ、国策でもある原発が、国の責任があいまいなまま稼働する可能性もある。

 現在、川内1、2号機を含め、12原発19基が規制委の安全審査を受けている。事実上の「合格」第1号が出たことについて、田中俊一委員長は「基準への適合は審査したが、安全だとは私は言わない。これがゴールではないので、(九電は)努力していく必要がある」と述べた。

 審査書案は約420ページ。九電が示した地震津波の想定、事故対策などを個別に検討した。九電が想定する地震の最大の揺れ「基準地震動」を従来の540ガル(ガルは加速度の単位)から620ガルに、想定する最大の津波の高さ「基準津波」を約4メートルから約6メートルに引き上げたことを、いずれも妥当とした。

 また、九電が周辺14火山の過去の噴火間隔やマグマだまりの膨張傾向などから「安全性へ影響する可能性は小さい」と判断したことを受け入れた。ただし、規制委は継続的な火山の監視を求めた。

 また、福島第1原発で起きた炉心損傷や全電源喪失などの過酷事故への対応は、幅広い事故の想定▽事故時の作業要員の確保方法▽機能喪失を防ぐ設備の準備▽対応手順−−などを求め、九電が示した対応策をいずれも了承した。航空機が施設に落下した場合やテロ対策についても対応の手順書や体制、設備の整備方針を認めた。

 九電は昨年7月に川内1、2号機の安全審査を申請した。当初は基準地震動を原発事故前のままとするなど、安全対策に消極的な姿勢も見られたが、いち早く基準地震動の引き上げに応じたため、3月から優先的に審査が進められた。

 審査書案は今後のモデルケースとなるため、他原発の審査が加速するとみられる。川内1、2号機に続き、基準地震動が決まった関西電力高浜原発3、4号機(福井県)の審査が先行している。【鳥井真平】

毎日新聞 2014年07月16日 20時18分(最終更新 07月16日 21時13分)

上記記事の最後の行が示唆しているように、安倍晋三原発再稼働を一気に再稼働させる腹だろう。

私が気にしているのは、「脱原発」に関する小熊英二の楽観的な見通しと、私の悲観的な予想のどちらが当たるかということだ。昨年10月31日に書いた記事を、以下に再掲する。但し文字の強調箇所を初出時と変えた。

今朝(10/31)の朝日新聞オピニオン面に「『脱原発』実現しつつある日本」と題した小熊英二の文章が載っている。以下冒頭部分を引用する。

 福島第一原発事故後に、もっとも劇的に脱原発した国はどこか。そう質問すると、多くの人が「ドイツ」と答える。しかしドイツは、政府が脱原発を宣言したが、実際には多くの原発を動かしている。
 では、政府は宣言していないが、実質的に脱原発した国はどこか。いうまでもなく日本である。いま日本では、一基の原発も動いていない。
 ではこの状況を作ったのは誰か。政治家がリーダーシップをとったのか。賢明な官僚が立案したのか。財界やマスコミの誘導か。アメリカの「外圧」か。いずれでもない。答えはただ一つ、「原発反対の民意が強いから」だ。それ以外に何かあるというなら、ぜひ挙げてみてほしい。

朝日新聞 2013年10月31日付「オピニオン面」掲載「あすを探る - 思想・歴史」小熊英二「『脱原発』実現しつつある日本」より)

そこまで楽観的に言い切ってしまって良いのかと危惧もするけれど、大飯原発4号機が停止した9月16日以降、原発稼働ゼロが1か月半続いていることが、ともすれば忘れられがちになっているのは事実だろう。

ところで、このコラムを当ダイアリーに取り上げようという気が起きたのは、下記の部分にウケたからだ。

 昨年来の選挙結果は何か、と思う人々がいる。即席で脱原発を唱えた政党が信用されなかったのは、むしろ健全というべきだ。自民党比例区得票数は大敗した2009年の数を回復しておらず、09年の民主党の約6割である。自民党は棄権の多さと野党の分裂で、少ない得票で漁夫の利を得たにすぎず、基盤強固とは言えない。しかも自民党の得票の7割は脱原発支持者のものだ。(小熊英二著『原発を止める人々』参照)
(前掲記事より)

即席で脱原発を唱えた、というと、「小」と「一郎」のつく政治家がすぐ連想されるが、そんな輩が信用されないのは当然だろう。

原発再稼働に躍起になる安倍晋三をはじめとする原発推進派の「火力発電の燃料輸入増が国富を損ねている」という説には、こう反論する。

(前略)近年の貿易赤字は、火力発電燃料の輸入増の影響というより、スマートフォンの輸入急増に象徴される、日本の貿易構造と世界経済に占める位置の変化によるものだ。市場規制と補助金に依存した重厚長大産業である原発は、震災以前から斜陽産業で、廃炉促進に転換した方が優秀な人材も産業も育つだろう。一部業界の利権と、思考停止の惰性のほかに、将来も原発を維持する理由があるというなら、これもぜひ説明してもらいたい。
(前掲記事より)

いちいちお説ごもっともではあるが、どうしても気になることが一つある。それは、現在の「脱原発」には、浜岡原発停止によって作られた流れが「惰性」で続いている面が多々あるということだ。経産省海江田万里は、浜岡原発スケープゴートにして、他の原発の再稼働をもくろんだが、九電の玄海原発再稼働を阻止された。原発再稼働のバリアが高くなったのはこの時からであり、この点だけは、首相在任中功績が極めて少なかった菅直人の数少ない功績に数え入れて良いだろう。

しかし、強引に事を進めて悪しき「既成事実」を作ることを得意とする安倍晋三が総理大臣に返り咲いていることを、間違っても甘く見てはならない。2006年に安倍が改悪した「教育基本法」は今もそのままである。現在では「秘密保護法案」の強行突破を図っている安倍だが、今後原発に関しても再稼働をどんどん推進して、それによって作られた「既成事実」を国民は再び黙認してしまうのではないか。その懸念から私はどうしても離れられない。