kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

小渕優子は何も「『脱原発』を推進したから潰された」わけではない

本記事は、今週の初め頃に書き始めたものの、気が乗らなかったので放置していたが、完成させて公開することにした。

少し前、10月17日の毎日新聞記事。

http://mainichi.jp/select/news/20141018k0000m020066000c.html

小渕経産相:老朽原発廃炉早期決断を」…電事連に要請

 小渕優子経済産業相は17日、電気事業連合会八木誠会長(関西電力社長)と経産省で会談し、運転開始から40年を迎える老朽原発廃炉にするかどうかの判断を早急に示すよう要請した。老朽原発廃炉を促し、原発依存度を減らす姿勢を示すことで、九州電力川内原発(鹿児島県)などの再稼働に対する国民の理解を得たい考え。政府の要請を受け、老朽原発を抱える電力各社は年内にも廃炉について判断するとみられる。

 原発の運転期間は原則40年に限定され、原子力規制委員会が認めた場合は最大20年延長できる。2016年7月までに運転開始から40年を迎える原発で、運転を延長したい場合、15年7月までに原子力規制委に延長を申請する必要がある。該当するのは、全国の原発48基のうち、関電美浜原発1、2号機(福井県)▽関電高浜1、2号機(福井県)▽中国電力島根1号機(島根県)▽九州電力玄海1号機(佐賀県)▽日本原電敦賀1号機(福井県)の7基。

 小渕経産相は会談で「7基の取り扱いの考え方を早期に示してほしい」と事実上、廃炉の早期決断を要請。八木会長は会談後、記者団に「電事連として電力各社の判断を取りまとめたい。回答期限の指示はなかったが、できるだけ早く回答できるように検討したい」と述べた。

 老朽原発の運転延長は容易ではない。これまで電力各社は原発20基の再稼働を原子力規制委に申請したが、審査基準をクリアするための対策工事費は1基当たり1000億円規模。老朽原発を運転延長する場合の安全対策費はさらに増加するとみられ、運転延長をしてもコストを回収できず、損失となる可能性がある。

 このため、関電は美浜1、2号機の廃炉の検討に入り、中国電と九州電も「廃炉も選択肢」との姿勢を示してきた。しかし、廃炉を正式に決断することも簡単ではない。

 廃炉にした場合、原発の資産価値がなくなるため、多額の損失が発生する。仮に7基をすべて廃炉にすると、全部で2000億円規模の損失が一度に発生する可能性がある。原発停止で経営が悪化している電力各社にとって負担が重い。さらに16年の電力小売り全面自由化で電力会社は厳しい競争にさらされる。八木会長は17日の記者会見で「財務面のリスクをできるだけ合理的な範囲にしてほしい」と述べた。

 また、立地自治体への補助金減少や原発関連の雇用消失で地域経済にも影響を与える。小渕経産相はこうした課題について「政府として必要な対策を検討する」と述べ、廃炉を円滑に進めるための制度整備を図る考えを示した。

 経産省は、廃炉によって電力会社の財務が一気に悪化しないように、損失を複数年に分けて電気料金に上乗せできる会計制度を導入することを検討している。だが、料金に転嫁する形での廃炉支援には利用者の反発が予想され、政府は難しい判断を迫られる。【中井正裕、安藤大介、浜中慎哉】

 【キーワード】廃炉

 運転を終了した原発について、電力会社は原発を解体・撤去し、跡地を利用できる状態にするよう義務づけられており、この一連の作業を廃炉と呼ぶ。廃炉は、使用済み燃料の搬出や放射性物質の除去、解体・撤去を順次行い、終了まで20〜30年かかるとされる。

 現在は日本原子力発電東海発電所茨城県)や中部電力浜岡原発1、2号機(静岡県)が廃炉作業中。東京電力福島第1原発1〜6号機(福島県)も廃炉が決まっている。

 2012年の原子炉等規制法改正で、原発の運転期間は原則40年に限定され、1回に限り最長20年の延長が可能となった。運転開始から40年超となる老朽原発は運転を延長するか廃炉に踏み切るかを電力会社が判断する必要がある。

毎日新聞 2014年10月17日 20時58分(最終更新 10月18日 00時06分)


この記事についた「はてなブックマーク*1には呆れるほかないコメントがちらほら。

morimori_68 原子力発電 こういうことをすると金銭スキャンダルが掘り返される。闇。 2014/10/18

sekirei-9 政治 あっ(察し) 2014/10/18

dekigawarui なるほど、こういうことか。 2014/10/18

lyricalmikurunosuke 金の問題で潰される政治家、裏ではまともなことやってるじゃないか。 2014/10/19


違うよ。

今年の早い時期から、電力会社が老朽原発経産省は「老朽」と言わずに、「高経年化」なんて言ってた)の廃炉の検討に入ったと報じられていた。下記はNHK科学文化部(かぶん)のブログ記事。

http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/200/184150.html(2014年3月29日)

古い原発廃炉可能性を検討

原子力発電所を抱える電力各社は今後の電力供給計画を国に提出し、供給力について原発の運転再開が見通せないため3年連続で「未定」とするとともに、一部の古い原発について、廃炉にする可能性を検討し始めていることが分かりました。

原発を抱える電力会社9社は、毎年、年度末にまとめる今後10年間の電力供給計画を、28日までに経済産業省に提出しました。
このうち北陸電力を除く8社が、運転再開の前提となる安全審査を原子力規制委員会に申請していますが、審査終了のめどが立たず再開が見通せないため、9社全社が電力の供給力について3年連続で「未定」としました。
また国が、去年新たに原発の運転期間を原則40年としたうえで、例外的な延長には特別な点検が求められる制度を導入したなか、電力各社は古い原発についての対応を迫られています。
このうち中国電力苅田知英社長は、運転開始から40年の島根原発1号機について、「廃炉にするという選択肢もある」と述べ、延長に必要なコストなどを検討する考えを示しました。
また四国電力の千葉昭社長は、運転開始から36年の伊方原発1号機について、「あらゆる可能性を捨てずに検討していく」と話すなど、電力会社が古い原発について、40年を境に廃炉にする可能性を検討し始めていることが分かりました。


同じ頃の日経の記事。

「島根1号機廃炉も」 中国電社長、投資負担重く (写真=共同) :日本経済新聞

「島根1号機廃炉も」 中国電社長、投資負担重く

 中国電力苅田知英社長は27日の記者会見で、29日に運転開始から40年を迎える島根原子力発電所1号機(松江市)について「廃炉という選択肢もある」と述べた。国は法律で原発の運転期間を原則40年としており、延長には原子力規制委員会の認可が必要となる。東日本大震災後の規制基準厳格化で稼働延長には巨額投資が必要なため、廃炉も視野に検討を進めることにした。

 安倍晋三政権は原子力規制委が安全と認めた原発の再稼働を進める方針。一方、古い原発は厳格な規制基準を満たすのは難しい。全国48基の原発のなかで再稼働できる原発廃炉を迫られる原発の選別が進みそうだ。

 2014年度の経営計画を発表した席上で、記者の質問に答えた。苅田社長は「40年を過ぎて運転するためにいろいろな設備対応をするには投資がかかる」と発言した。今夏までに判断を下す見通し。

 島根原発1号機は国内で4番目に古い原子炉。1号機の出力は46万キロワット。規制委に再稼働に向けた安全審査を申請中の2号機(82万キロワット)や、ほぼ完成済みで最新鋭の3号機(137万キロワット)に比べ規模も小さい。

日本経済新聞 2014/3/28 0:41)


要するに東電原発事故後、老朽化原発の運転を延長するためには、余分なコストがかかるようになって、それが経営を圧迫するから、電力会社も廃炉を検討せざるを得なくなっている。

「お飾り大臣」だった前経産相・小渕の発言は、そういう流れに乗って、しかも川内などの原発を再稼働させることとセットで行われたものだ。最初の毎日新聞の記事にも

老朽原発廃炉を促し、原発依存度を減らす姿勢を示すことで、九州電力川内原発(鹿児島県)などの再稼働に対する国民の理解を得たい考え。

って書いてあるだろ。ちゃんと記事読めよ。

しかも、小渕がこの発言をした10月17日は、既に週刊新潮の記事が出たあとで小渕は既に「死に体」になっていた。最初に小渕の「政治と金」をめぐる共産党の調査が9月のことだ。小渕は、政治と金の問題が騒がれて「死に体」になったあと、廃炉を促す発言をしただけで、しかもそれは原発再稼働とセットになった意図を持つ発言だった。小渕は辞任直前まで紛れもない「原発推進派」だったということだ。

陰謀論めいたブクマコメントをつけた人たちが「脱原発派」かどうかは知らないが、陰謀論としてもレベルが低くつまらない。というよりはっきり言って不愉快千万だ。こんなこと言ってるから「脱原発派」がバカにされるんだよ。そのことをよく自覚してもらいたいものだ。

最初の毎日新聞記事についたブクマでは、下記のコメントが本質を突いている、というより至極まっとうだ。

questiontime 現段階で、この話と資金団体のスキャンダルを結びつけて考える人、陰謀論に片足突っ込んでるからご用心。 2014/10/18