kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

『21世紀の資本』第4章「古いヨーロッパから新世界へ」〜「新世界と旧世界 − 奴隷制の重要性」より

http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20150106/1420502880#c1420550096 より

id:pomme1919 2015/01/06 22:14
(前略)本論の主旨とややずれてしまいますが、しばしば言われる「50年代くらいまではアメリカは格差の小さな社会だった」も白人層だけを対象にしたことに留意するべきと思います。


このあたりはピケティもしっかり押さえています。

21世紀の資本』第4章に「古いヨーロッパから新世界へ」に、「新世界と旧世界−−奴隷制の重要性」と題した節があり、

 ヨーロッパと米国の資本の変化の研究を終えるにあたり、奴隷制と、奴隷が米国の富に占めた位置を検証しないわけにはいかない。

と書き出されます(166頁)。

さらに同じ節の末尾。

 南北戦争以前の米国が、先述の資本なき国家とかけ離れていたのは明らかだ。実は、新世界では正反対の現実ふたつが混在していたことになる。北部には比較的平等な社会があった。土地が非常に豊富で、誰もが比較的安く地主になれたため、また新しい移民にはたくさんの資本を蓄積する時間がなかったため、資本が実質的にあまり価値を持たなかった。南部には、所有権の格差がきわめて極端で暴力的な形をとった世界があった。人口の半分が残り半分を所有していたからだ。奴隷資本が土地資本を補い、それを上回っていた。

 この格差をめぐる複雑で矛盾した関係は、現在もなお米国に根強く残っている。一方では平等を約束して、恵まれない境遇の数百万の移民に機会をもたらす国でありながら、その一方で、特に人種に関してきわめて残酷な格差が存在し、その影響がいまだはっきり見てとれる国でもある。(南部の黒人は1960年代まで市民権を奪われており、南アフリカで1980年代まで続いたアパルトヘイトにも一部は通じる法に基づく人種隔離政策の対象になっていた)。これが多くの面で、社会国家アメリカの発展−−あるいが発展の遅れ−−の主な原因となったことはたしかだ。

(トマ・ピケティ著、山形浩生、守岡桜、森本正史訳『21世紀の資本』(みすず書房,2014)169頁)


21世紀の資本

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