「報道の自由」は世界で大きく低下、日本は61位に後退 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
「報道の自由」は世界で大きく低下、日本は61位に後退
2015年02月12日 17:28 発信地:パリ/フランス
【2月12日 AFP】(一部更新)「報道の自由」は2014年に世界的に大幅に低下し、その一因は「イスラム国(Islamic State、IS)」や「ボコ・ハラム(Boko Haram)」といった過激派組織の活動にあるとする報告書を、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団(Reporters Without Borders、RSF)」が12日、発表した。
「世界報道の自由度ランキング(World Press Freedom Index)」2015年版では、調査対象の世界180か国・地域で昨年1年間に確認された報道の自由に対する侵害は3719件で、前年比8%増だったと報告している。
RSFのクリストフ・ドロワール(Christophe Deloire)氏は「非常にさまざまな複数の要因によって、(報道の自由度は)全体的に低下した。情報戦争や、非国家主体による専制君主的な報道統制などが挙げられる」とAFPに述べた。
RSFの報告によれば、中東やウクライナでは紛争の当事者が「恐ろしい情報戦争」を展開しており、メディア関係者は殺害・拘束の直接の標的となっているほか、プロパガンダ活動に協力する圧力をかけられたりしているという。
また、シリアとイラクで活動するISやナイジェリア北部と隣国カメルーンで襲撃を繰り返しているボコ・ハラム、イタリアや南米を拠点とする犯罪組織は、いずれも「脅しと報復を手段とし、勇敢に調査に乗り出したり犯罪組織の宣伝活動に利用されることを拒否したりするジャーナリストやブロガーたちの口を封じている」と、報告書は述べている。
さらにRSFは、北アフリカと中東には顕著な「ブラックホール」があると指摘。「非国家主体に地域全体が支配され、独立した情報提供者が全く存在しない」地域があると説明している。
このほか、報告書では宗教を掲げた過激派が神や預言者への敬意が足りないと一方的に断定したジャーナリストやブロガーを標的にする事例を挙げ、「神への冒とくを犯罪とみなすことは、世界の半数近い国において情報の自由を危険にさらす」と訴えている。
■気になる日本の順位は?
報道の自由度が最も低いとされた国には、イラン、中国、シリア、北朝鮮が含まれる。一方、最も自由度が高い5か国は、北欧を中心に上からフィンランド、ノルウェー、デンマーク、オランダ、スウェーデンとの結果になった。
香港は、民主派による路上占拠デモ「オキュパイ・セントラル(Occupy Central、中環を占拠せよ)」の間に「警察の職権乱用」があったとの理由で、70位に順位を下げた。
米国も昨年から順位を3つ下げ、49位となった。内部告発サイト「ウィキリークス(WikiLeaks)」などを標的とした米政府の「情報戦争」が理由の1つだという。
日本は順位を昨年の59位から2つ下げ61位だった。(c)AFP/Marc BURLEIGH
記事を読むと、「調査対象の世界180か国・地域で昨年1年間に確認された報道の自由に対する侵害は3719件で」とある。つまり、「国境なき記者団」が認定した「報道の自由に対する侵害」のランキングと思われる。生の件数をその国の報道の規模を表す何らかの母数で割った数値を比較しているのかもしれない。
日本について言えば、2002年以降の順位の変遷をたどってみると面白い。たとえば、Template:世界報道自由度ランキング - Wikipedia で参照できる。結果は下記。括弧内は時の内閣である。
- 2002年 26位(小泉)
- 2003年 44位(小泉)
- 2004年 42位(小泉)
- 2005年 37位(小泉)
- 2006年 51位(小泉→安倍)
- 2007年 37位(安倍→福田)
- 2008年 29位(福田→麻生)
- 2009年 17位(麻生→鳩山)
- 2010年 11位(鳩山→菅)
- 2011〜12年 22位(菅→野田)
- 2013年 53位(安倍)
- 2014年 59位(安倍)
- 2015年 61位(安倍)
一目瞭然、安倍晋三が総理大臣になると必ず順位が下がるのだ。小泉純一郎の時も低かったが、小泉から安倍に代わった2006年に51位を割り込んだ。2007年は9月まで安倍政権だったが、第1次安倍内閣の後半は、消えた年金問題や松岡利勝農水相の自殺などで内閣支持率が暴落した上安倍晋三自身が「KY」などと言われて激しく批判され、参院選惨敗の1か月半後に突如政権を投げ出した。その2007年に、前年よりも順位を上げたのは実感と合致している。
その後、福田、麻生、鳩山、菅各内閣時代には順位を上げた。特に民主党政権は「情報公開」がウリだったが、実際にはその成果をろくすっぽあげられないまま、野田内閣になると情報公開に消極的な姿勢が目立つようになった。それに呼応するかのように、野田時代には順位を下げた。しかしそれでも22位だった。
それが、政権再交代で安倍晋三が総理大臣に返り咲くや、第1次内閣時代よりも低い53位に順位が暴落し、その後も順位を下げ続けてワースト記録を毎年更新している。
これはもちろん安倍晋三の言論統制好きな嗜好を反映するものだ。安倍晋三の統制体質の象徴は「NHK番組改変事件」であろう。私の実感から言っても、小泉政権末期にライブドア事件解明の機運が「偽メール事件」でしぼんだあと、安倍新政権の発足後3か月くらいは、「物言えば唇寒し」さながら、新聞やテレビの報道で安倍晋三に対する批判に接することがほとんどできない異様な期間だったことをよく覚えているし、現在はその再来で、しかもその程度がさらにひどくなっていると実感する。
安倍晋三が籾井勝人をNHK会長に据えたあと、NHKは完璧な御用放送局になった。新聞では読売がそれに当たる(ネトウヨを煽る極右紙・産経は「極右」を演じることで安倍政権を「真ん中」に見せかける役割を果たしている)。朝日は慰安婦記事の取り消しと「吉田証言『誤報』」問題でゴメンナサイばかりしている。なお朝日は2005年にも「NHK番組改変事件」の報道で安倍晋三と故中川昭一に「謝罪」した前科を持つ。肝心な時に安倍晋三を助けるのは、朝日のお家芸と言っても過言ではない。
2006年の安倍晋三翼賛の流れは、何がきっかけだったかはわからないが、あっけなく潮目が変わって、それまでの翼賛が嘘のように安倍晋三が批判を浴びまくるようになった。NHK特集で「ワーキングプア」が放送されたことに象徴される「格差批判」、新自由主義批判で徐々に流れが変わっていったとしか思えない。
今また、ピケティのブームなどで格差問題がクローズアップされている。朝日新聞(2/13)4面を見ると、安倍晋三の腰巾着・世耕弘成(官房副長官)の言葉を借りてこんなことが書かれている。
世耕氏は、首相は「行き過ぎた再分配は社会の活力を奪うという考え方だ」と語り、演説については「首相自身がチャンスをつくり、誰もが頑張れば報われる社会をつくる決意だ」として「機会」を重視するとした。
「誰もが頑張れば報われる社会」では、当然のことながら世襲よりも実力が重んじだれるだろう。もう何度も何度も書くが、今より格差が小さい社会だった70〜80年代に総理大臣を務めた政治家に世襲の人間は誰もいなかった。それが今では安倍晋三もその腰巾着たる世耕弘成も世襲政治家である。
70〜80年代も再分配の手厚い政府ではなかったが、高成長と(大企業の社員の場合は)会社の福利厚生がそれを補っていた。日本で「行き過ぎた再分配」が行われたことなど一度もないし、現在は明らかに「過少な再分配が社会の活力を奪っている」状態だ。