kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「トランプは悪くない」と言うオリバー・ストーンの根拠のない楽観論は全くのダメダメ

昨日(1/24)の朝日新聞オピニオン面に掲載されたオリバー・ストーンのインタビューはダメダメだった。お話にならない。

ネットでも途中まで無料で読める。朝日オピニオン面の無料公開部分としては異例の長さではないか。

http://www.asahi.com/articles/ASK1K5V6BK1KUHMC001.html

トランプ大統領、悪くない」 オリバー・ストーン監督
聞き手・藤えりか
2017年1月24日03時00分

 過激な言動で物議を醸すドナルド・トランプ氏が超大国のトップに就いた。政権批判の映画を世に出し続けてきた米アカデミー賞監督が「トランプ大統領もあながち悪くない」と意外な「評価」をしている。かつてはトランプ氏に手厳しい発言もしていたオリバー・ストーン監督に、真意を聞いた。

 ――米大統領選の結果はショックだったと米メディアに語っていましたが、ツイッターで「トランプを良い方向にとらえよう」とも書いていました。

 「ヒラリー・クリントン氏が勝っていれば危険だったと感じていました。彼女は本来の意味でのリベラルではないのです。米国による新世界秩序を欲し、そのためには他国の体制を変えるのがよいと信じていると思います。ロシアを敵視し、非常に攻撃的。彼女が大統領になっていたら世界中で戦争や爆撃が増え、軍事費の浪費に陥っていたでしょう。第3次大戦の可能性さえあったと考えます」

 「米国はこうした政策を変える必要があります。トランプ氏は『アメリカ・ファースト(米国第一主義)』を掲げ、他国の悪をやっつけに行こうなどと言いません。妙なことではありますが、この結果、政策を変えるべきだと考える人たちに近くなっています」

 ――トランプ政権下で、米国の介入主義は終わりを迎えると?

 「そう願っています。米軍を撤退させて介入主義が弱まり、自国経済を機能させてインフラを改善させるならすばらしいことです。これまで米国は自国経済に対処せず、多くが貧困層です。自国民を大事にしていません。ある面では自由放任主義かと思えば、別の面では規制が過剰です。トランプ氏もそう指摘しており、その点でも彼に賛成です」

 「トランプ氏はまともではないことも言います。かつてないくらいに雇用を増やすなんて、どうやって成し遂げられるのか私にはわからない。だがものすごい誇張だとしても、そこからよい部分を見いださねばなりません。少なくとも米国には新鮮なスタイルです」

 「彼は、イラク戦争は膨大な資産の無駄だった、と明確に語っています。正しい意見です。第2次大戦以降すべての戦争がそうです。ベトナム戦争はとてつもない無駄でした。けれども、明らかに大手メディアはトランプ氏を妨害したがっており、これには反対します。トランプ氏がプラスの変化を起こせるように応援しようじゃありませんか」

 ――プラスの変化とは?

 「例えばロシアや中国、中東、…

朝日新聞デジタルより)


これぞ「根拠のない楽観論」の見本だろう。

これを読むと、オリバー・ストーンは経済政策に関心がほとんどないのだろうかと訝る。自身が紛れもないエスタブリッシュメントの一員であるトランプが掲げる政策は、なるほどグローバリズムには敵対するものではあるけれども、その一方で富裕層を中心とした所得税の減税や法人税率の引き下げを唱えている。アメリカの大企業と富裕層を優遇する経済政策だ。その結果間違いなく、それでなくともどうしようもないほど広がっているアメリカ国内の格差を、トランプがさらに拡大することは火を見るより明らかだ。

そうなると、トランプに期待したものの全く結果を出していないことに白人男性労働者たちは失望する。

その批判の矢を自らからそらすためにトランプがやることは何か。戦争である。都合が悪くなると戦争なり空爆なりで支持率を回復させるのはアメリカ大統領の常套手段だ。ブッシュ(ドラ息子)のイラク戦争などその典型だろうし、民主党大統領でも、モニカ・ルインスキーとの不倫が騒がれたビル・クリントンがアフガンを空爆したことがあった。アメリカに限らない。トランプが崇拝するレーガンと同系列のイギリス首相、マーガレット・サッチャーは、就任後下がる一方だった政権支持率をフォークランド戦争でV字回復させて長期政権(悪政の連続だった)に結びつけた。トランプの経済政策が早晩ボロを出すことは目に見えているから、今後アメリカがまたぞろ外国で戦争を起こす可能性は非常に高いとしかいいようがない。しかも、トランプは「他国がアメリカより強い軍事力を持つことは許さない」と大見得を切った人間だ。

要するに、トランプとは戦争を起こす恐れがヒラリー・クリントン以上に高い、危険極まりない大統領なのである。

まるで日本の「小沢信者」のように、トランプの「反グローバリズム・反エスタブリッシュメント」の看板に幻惑されてトランプに期待するオリバー・ストーンのナイーブさには恐れ入った。

このオリバー・ストーンという人は、もともとはアメリカの愛国主義的右翼で、志願兵としてベトナム戦争を戦った。それがリベラル派へと転向したわけだが、もともと愛国右翼に熱中したような浅はかさが今でも残っているのではないか。失礼ながらそう感じた。

「トランプは悪くない」と言うオリバー・ストーンの根拠のない楽観論は全くのダメダメだ。


おまけ。朝日の記事についた「はてなブックマーク」でも評価は真っ二つだ。下記はもっとも「はてなスター」の多いブコメ

IkaMaru トランプの良かった探しをする人は、必ずと言っていいほど「勝つ前のトランプ」の話しかしないな。既に嘘つきだと実証されている人物が正直者だったらという仮定に何の意味があろう

確かにそうだ。

一方、2番目に「はてなスター」の多いコメントはオリバー・ストーンの見方に一定の評価を与えるもの。

Hige2323 全面的に首肯するわけではないが、サンダースに意見が近いであろう人ならトランプともまた近いという見方がかなり正解に近い解釈だったという事だろう/というか反トランプを掲げて暴徒やるよりは建設的な姿勢じゃね

これには「問題はグローバリズムだけじゃないよ、トランプは国内政策では格差拡大にしかならない政策を掲げてるよ」と言いたい。サンダースはそうじゃない。サンダースとトランプを一緒くたにした議論は危険だ。それこそエスタブリッシュメント(たとえば朝日や日経の記事などが好例)によって「ポピュリズム」としてまとめて切り捨てられてしまう。テレビなどもその見方を垂れ流していて、それに影響されている視聴者は多いから、それだと「左側からの反グローバリズム勢力」を育てる上で阻害要因になるよ、と言いたい。

私は下記の酷評コメントを書いた。

kojitaken このオリバー・ストーンって確か昔は愛国右翼で、ベトナム戦争に志願したんじゃなかったっけ。そういう浅はかさが再び顔を出したんだろうね。フランスのエマニュエル・トッドともども愚かだと思う。


下記のコメントには大筋で同意する。

skasuga クルーグマンも同じようなこと言ってて、私も最初そう思ったけど、政権を見たらきっちりネオコンやコーク人脈が入り込んでいるので、これは願望以上のものじゃないと思う

青字ボールドにした部分は、国内経済政策のみならず軍事政策でもトランプが危険であることを示唆している。これはその通りだろう。

引っかかったのは、「クルーグマンも同じようなこと言ってて」という部分で、これにはびっくり仰天した。私はクルーグマンの激しいトランプ批判しか読んだことがなかったからだ。慌てて「クルーグマン トランプ」を検索語にしてググったが、やはりクルーグマンのトランプ批判を紹介した記事ばかりが表示された。一番下には私自身が書いた記事も表示されていた。やはり朝日のオピニオン面に関する記事だ。


その後クルーグマンがトランプを評価する文章を書いたという情報をお持ちの方がもしおられたら、コメント欄でご教示いただければ幸いだ。

最後に、オリバー・ストーンへの全面的な共感を表明したコメントを掲げておく。もちろん私の意見とは正反対だ。

atsupi0420 この意見には共感する。クリントン氏が大統領になっていたら、大変な事になっていたと思う。