kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「米国で使用制限された農薬が日本で解禁に」(サステナブル・ブランドジャパン)

アメリカでも規制をされている農薬が日本で解禁 : 広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)

あまりにもひどい。酷すぎる。
アメリカでも規制をされている農薬が日本で解禁されるそうです。
安倍政権というのはカイシャの利益のためには何でもする。
そういう開発独裁丸出しの政権と言うことでしょう。

米国で使用制限された農薬が日本で解禁に | SUSTAINABLE BRANDS JAPAN


リンク先の記事を以下引用する。

米国で使用制限された農薬が日本で解禁に
2017.12.28

国連が設置した科学者組織「IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)」の報告書によると、ハチなどの生物がもたらす経済的利益は、世界全体で最大年5770億ドル(約64兆円)に上るとしている。農林水産省は12月25日、ネオニコチノイド系農薬の一種である殺虫剤スルホキサフロルを農薬として新規登録した。同剤は、ミツバチへの毒性が強いことから、米国では厳しく使用制限され、フランスでも一時禁止とする予備判決が下されている。これを受け、国際環境NGOグリーンピース・ジャパン(東京・新宿)は声明を発表し、厳しく批判している。(オルタナ編集部=吉田広子)

20年ほど前から、世界各地でミツバチが大量死する蜂群崩壊症候群(CCD)という現象が起きている。15カ国53人の科学者からなる「浸透性農薬タスクフォース」(TFSP)は2014年、ネオニコ系農薬をはじめとした浸透性農薬がミツバチ減少の要因であると結論付けた。ネオニコ系農薬は「神経毒性」「浸透性」「残留性」の特徴を持つ。農作物の受粉を助けるミツバチの大量死は、食糧問題にもつながる。

国連が設置した科学者組織「IPBES(生物多様性及び生態系サービスに関する政府間科学政策プラットフォーム)」の報告書によると、ハチなどの生物がもたらす経済的利益は、世界全体で最大年5770億ドル(約64兆円)に上るとしている。

世界各国で規制が進む

欧州委員会は2013年から、ネオニコ系農薬3種(クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム)の使用の暫定禁止措置を継続している。2018年春をメドにネオニコ系農薬3種は全面使用禁止(温室を除く)になる予定だ。

今回日本で農薬に登録されたスルホキサフロルは、ネオニコ系農薬と同様の浸透性農薬でありながら、物質の構造から別系統に分類するという見方がある。2018年9月からすべてのネオニコ系農薬が全面禁止されるフランスでも、スルホキサフロルは承認を受けていた。だが、環境NGO行政訴訟を起こし、2017年11月に一時禁止とする予備判決が下された。

米国では一時禁止されていたものの、2016年10月に使用条件を厳しくしたうえで再登録された。特にミツバチへの影響が懸念されるかんきつ類やウリ科野菜(キュウリなど)への使用は禁止され、リンゴやナス科野菜(トマトなど)の開花期の使用を禁止されている。

日本でスルホキサフロルが使用される作物は、キャベツ、だいこん、きゅうり、トマト、ミニトマト、レタス、かんきつ、なし、りんご、稲である。米国のように開花期の使用制限は設けられていない。

日本でスルホキサフロルの登録申請を行ったのは、ダウ・アグロサイエンス日本(東京・品川)、日産化学工業(東京・千代田)、北興化学工業(東京・中央)の3社だ。

パブリックコメントに多くの反対意見

これまでスルホキサフロルの残留基準値に関するパブリックコメントは2回実施され、第1回は537件、第2回は386件の意見が寄せられた。その多くが反対意見で、第2回のうち賛成意見は16件にとどまった。

グリーンピース・ジャパン「食と農業担当」の関根彩子氏は、「私たち消費者や養蜂家、科学者を含む市民は、1000件以上のパブリックコメントや約8000筆の署名を通し、厚労省に対して危険な農薬はいらないことを何度も訴えてきた。今回の決定は、その市民の度重なる声や科学的意見を無視するもので、容認しがたい結果である」と批判する。

関根氏は「スルホキサフロルは、ミツバチに毒性が強いことから米国でも使用が制限されている農薬であり、発達段階にある子どもにも悪影響を及ぼす可能性がある。厚労省は、無視できないリスクがあるにも関わらず広範囲にわたる残留基準を決め、また、農林水産省は、ミツバチへの毒性に関する情報を充分開示しないまま登録を決めている。政府は市民への説明責任、そして、健康や環境を守る責任を果たしていない。政府は、危険な農薬の使用拡大をやめ、生態系の力を生かす農業を支援するべき」と訴えている。


吉田 広子 (よしだ・ひろこ)

サステナブル・ブランドジャパンより)

株式会社オルタナ オルタナ編集部 オルタナ副編集長
大学卒業後、ロータリー財団国際親善奨学生として米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。2007年10月に株式会社オルタナに入社、2011年から現職。

オルタナ」は2007年に創刊したソーシャル・イノベーション・マガジン。主な取材対象は、企業の環境・CSR/CSV活動、第一次産業自然エネルギー、ESG(環境・社会・ガバナンス)領域、ダイバーシティ障がい者雇用、LGBTなど。編集長は森 摂(元日本経済新聞ロサンゼルス支局長)。季刊誌を全国の書店で発売するほか、オルタナ・オンライン、オルタナS(若者とソーシャルを結ぶウェブサイト)、CSRtoday(CSR担当者向けCSRサイト)などのウェブサイトを運営。サステナブル・ブランドジャパンのコンテンツ制作を行う。このほかCSR部員塾、CSR検定を運営。運営。


人口が減少期に入って久しい日本において、1950〜60年代(岸信介が総理大臣をやっていた時代)を思わせるアナクロな「開発独裁」の政策を進める安倍晋三
当然ながら、その政策は "sustainable" に真っ向から反している。

昨年の総選挙前後のゴタゴタにかまけて、この日記にも読書ブログにも書く機を逸したが、昨年秋に半世紀以上前に書かれた歴史的名著であるレイチェル・カーソンの『沈黙の春』(新潮文庫)を遅ればせながら買って読んだ。


沈黙の春 (新潮文庫)

沈黙の春 (新潮文庫)


この本の中に、昨年ニュースで大きく取り上げられたヒアリの話が出てくる。カーソンはヒアリの害を過小評価していたところがあった。

で、ネット検索をかけてみたところ、産経が鬼の首を取ったようにこの件を取り上げ、下記の記事を垂れ流していた。

【産経抄】「沈黙の春」がヒアリの拡大を許した 7月12日 - 産経ニュース

産経抄
沈黙の春」がヒアリの拡大を許した 7月12日

 クラムチャウダーという料理がある。貝のむき身にジャガイモやタマネギなどの野菜を加えて作る。発祥の地である米国の東海岸では、現地でよく採れるホンビノス貝が使われる。

 ▼ハマグリを大きくしたような貝が平成12年ごろから、東京湾でも見られるようになった。外国貨物船のバランスを取るために注入されるバラスト水に紛れ込んで運ばれてきたらしい。今では、江戸前の新顔として定着している。

 ▼こんな外来生物なら大歓迎だが、そうは問屋が卸さない。17年に施行された「外来生物法」で指定された、日本の生態系を乱す生物との戦いは終わりが見えない。22年前に大阪府で発見されて大騒ぎとなったセアカゴケグモは、今も生息域を広げている。

 ▼国内各地で発見の報告が相次いでいるヒアリは、この毒グモと比べても攻撃性と毒性ともに高いというから、恐ろしい。アルゼンチン原産の凶暴なアリは、1930年代に貨物船の積み荷に潜んで、米国南部に侵入した。被害を大きくしたのは、環境汚染の告発者として知られる米国の生物学者レイチェル・カーソンとの指摘もある。62年に発表した『沈黙の春』で、ヒアリの被害を否定し、農薬の危険性を強調していた(『アリの社会』東海大学出版部)。

 ▼その後もオーストラリアや中国、台湾へと「密航」を続け、ついに日本にたどり着いたというわけだ。まさにグローバル時代を体現している生き物である。米国ではヒアリに刺されて年間約100人が死亡し、5千億円もの経済損失が出ている。

 ▼専門家によれば、ヒアリが巣を作って数年後、羽を持った女王アリが飛び立ってしまえば、駆除が難しくなる。テロとの戦いと同じように、水際作戦を成功させるしかない。

(産経ニュース 2017.7.12 05:03更新)


私はこの記事を読んで、ああ、日本の右翼にはとことん「科学リテラシー」が欠けてるんだなあと思った(阪大教授の菊池誠などは左派の科学リテラシーばかり問題にしつつ安倍政権やネトウヨにすり寄っているようだが、私見では科学リテラシーの悲惨さにかけては右派は左派の比ではないと思う)。理由は後述する。その前に、『沈黙の春』の「アマゾンカスタマーレビュー」から、あるレビューを挙げておく。やや古く、2003年に書かれたレビューだ。

https://www.amazon.co.jp/gp/customer-reviews/R1AYT4CTKHPAHT/

★★☆☆☆ 必読書?
投稿者 小田k 2003年11月5日

原題「生と死の妙薬」が示すとおり
農薬や殺虫剤等の化学薬品がもたらした実際の環境(生態系)破壊について書かれた言わずとしれた啓発書です。
事例はよく調べられており、表現力豊かに書かれていて読みやすい文章、訳もいいと思います。
化学薬品がどのような影響を及ぼすか実感をこめて理解することができるでしょう。
しかし同じような例がこれでもかこれでもかと出てくるので段々飽きてくるのですね。
最後まで読む方が大変でした。
そしてもう一つ。古い(本の宿命ですが)。
40年前の本です。もはや環境問題の質も激変しています。
最終章でカーソンが出した解決策も、あとがきによって解決策と成りえなかったと一蹴されてますし。
この本が鳴らした警鐘には大きな力と意義があったようですが、有名だしちょっと読んでみようか、という人には、おすすめしません。


レビュー主は「原題『生と死の妙薬』」などと書いているが、これは1964年に新潮社が日本語訳*1を出した時に、誰に「忖度」したのかわからないが勝手につけた頓珍漢な邦題だ。英語の原題は "Silent Spring" であり、「沈黙の春」こそその直訳になる。本の中身を読めばわかるが、「生の妙薬」に該当する記述などほとんどない。

また、「最終章でカーソンが出した解決策も、あとがきによって解決策と成りえなかったと一蹴されてます」という部分についても、評論家・筑波常治が1973年3月に書いた新潮文庫の解説文を参照すると、カーソンが推奨した「天敵の利用(による害虫の駆除)にしても、自然界のバランスの破壊であることにはかわりなく」というごく常識的な指摘に過ぎない。

どうも日本では、邦訳本のタイトルを細工したり、変なやり方で本の印象操作を行ったりして、結果的に製薬会社に塩を送って、自らを含む日本に住む人間に害をもたらそうとする自虐的な風潮が強すぎるように思う。

だから産経の破廉恥な記事や安倍政権の破廉恥な政策がまかり通ってしまうのだろう。

産経の記事についていえば、アメリカでは50年代から60年代にかけて、有機塩素系や有機リン系の農薬をヘリコプターで空から散布するという野蛮なことをやっていて、そのために自然破壊はおろか人体へも悪影響を与える一方、「害虫」の中でも薬剤に抵抗力を持つ遺伝子を持った個体のみが生き延びてその子孫が繁殖した。結局「百害あって一利なし」であることは今や常識だ。私は『沈黙の春』に出てくる農薬の名前について、ネットで構造式を調べながら読んだが、有機塩素系だの有機リン系だの、こんなのをヘリで空から大量に撒いてたのかよ、と空恐ろしくなると同時に、そんな時代のアメリカに生きてなくて良かったと思った。

産経の記事は、それら一切合切を無視して、「カーソンの『沈黙の春』がなければヒアリの日本上陸もなかった」と言わんばかりの程度の低い印象操作を行っているものであって、これを書いた「産経抄」の著者(産経新聞論説委員が交代で書いているらしい)の馬鹿さ加減には開いた口がふさがらない。まさしくネトウヨ並みの知性だ。

そんな産経の熱烈な支持に支えられて、高い内閣支持率を誇る安倍晋三が時代錯誤の「開発独裁」の政策を進めるのが日本という国だ。

かつてこの国には開発独裁時代のツケとして「四大公害病」を引き起こした歴史があるが、70年代の成熟期に入ると、アメリカの厳しい自動車の排ガス規制に相当する厳しい基準を国内の各自動車メーカーに課し、それをクリアさせた歴史もある。

岸信介が総理大臣をやっていた「昭和30年代」(1950年代後半から60年代前半)を理想とする安倍晋三は、その1970年代の進歩さえ逆戻りさせる、どうしようもなく「持続不可能」な政策をゴリ押しし続けているのだ。人口減少でこれからどんどん電力が不要になる国で昔ながらの原発推進に猛進するのもそうだし、「アメリカでさえ規制されている」ネオニコチノイド系農薬を認可するのもそうだ。

もういい加減この馬鹿な宰相を引きずり下ろさないと、日本の再生には気の遠くなるほどの時間が必要になってしまう。

*1:余談だが、訳者の青樹簗一(あおき・りょういち)はドイツ文学者・南原実(1930-2013)のペンネーム。南原繁の子で、ロベルト・シンチンゲルらと共編の独和辞典の編集者として知られる。その人がアメリカの生物学者が書いた英語の本を翻訳していたのだった。