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古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「トランプ政権の『事実』と『代替的事実』」(WSJ)/「『1984年』の売り上げ急増、トランプ政権が影響?」(CNN)

ジョージ・オーウェルの『1984』がアメリカで突如ベストセラーになっていると知ったのは一昨日だったか。

それはともかく、『1984』が注目されたきっかけになったのは、下記の一件らしい。

トランプ政権の「事実」と「代替的事実」 - WSJ

トランプ政権の「事実」と「代替的事実」
新政権が生んだバズワードSNSでも話題に
2017年1月27日 12:59 JST

 ドナルド・トランプ米大統領の上級顧問を務めるケリーアンコンウェイ氏は22日に米NBCテレビ「ミート・ザ・プレス」に出演した際、「代替的事実(alternative facts)」という表現を使った。この言葉は米政治が事実を重視しない「脱真実」の新時代にあることを象徴するとの見方もある。

 コンウェイ氏はホワイトハウスのショーン・スパイサー報道官による一連の誤った発言に関して番組内でコメント。報道官がトランプ氏の就任式に集まった人数について事実より多く話した点について、コンウェイ氏は番組司会者のチャック・トッド氏に「あなたはそれをうそだと言うが、われわれの報道官であるショーン・スパイサー氏は代替的事実を述べたにすぎない」と釈明。トッド氏はそれに対し、「代替的事実は事実ではない。誤っている事実だ」と応じた。

 コンウェイ氏は翌日、FOXニュースの番組にも出演。司会のショーン・ハニティ氏は、代替的事実とは単純に「異なる視点」を提供しているだけだと語り、より寛容な受け止め方を示した。だが、時すでに遅し。「代替的事実」はソーシャルメディアSNS)上で瞬く間に広まり、ツイッターでは「おまわりさん、私は酔っていません。代替的にはしらふです#alternativefacts」といったハッシュタグがつく投稿も見られるなど、冷やかしも拡散している状況だ。

 事実が代替的であるとはどういう意味か。そもそも代替的という言葉は16世紀のフランス語から英語に取り入れられて以降、何度も意味が変化している。語源はラテン語の「alternare」で、「ひとつのことを行ったあとに次のことをする」という意味だ。これは英語の「alternate」という単語に引き継がれた。しかし時の流れと共に「alternative」は「alternate」とは異なる使い方をされるようになり、今では「選択肢や可能性として置き換え可能なもの」という意味になった。語源に近い意味で使われるべきだとする厳格な意見もあるが、現代ではどちらの意味でも使われている。

 20世紀初期には多くのSF作家が自身の描く空想世界を「代替的現実」と呼ぶようになった。作家キャサリン・ルシール・ムーアの1939年の作品「Greater Than Gods」では、登場人物が「代替的未来が存在していた」と悟る場面もある。

 1960年代にカウンターカルチャー運動が徐々に広まると、「alternative」は既存文化に挑戦する型破りなものを指すようになる。オクスフォード英語辞典には「オルタナティブ社会」、「オルタナティブ・ライフスタイル」、そして「オルタナティブ・プレス」といった言葉は1960年代後期に誕生したものだと書かれている。そして1980年代になると、「オルタナティブ医療」や「オルタナティブ・コメディー」、そして「オルタナティブ・ミュージック」といった表現も使われるようになっていった。オルタナティブ系と呼ばれる音楽ジャンルは、オルタナ系ロック(alt-rock)やオルタナ系カントリー(alt-country)など「オルタナ系」として分類されることもある。

 やがて接頭辞の「alt-」は音楽以外の分野でも既存体制に挑む非主流派を指す際に利用されることになる。例えば白人至上主義者や単に共和主義の主流派に抵抗する人が集まった極右勢力は「オルタナ右翼」と呼ばれることもある。

 コンウェイ氏が使った「代替的事実」は、SNS上で「alt-facts」と省略されるケースも見られる。ニューヨークを拠点とするジャーナリストのアンドレア・チャルパ氏は揚げ物など不健康な食事の写真を撮影し、「この代替サラダを今から楽しむところだ」とツイッター上に投稿している。

(ウォールストリートジャーナル日本版より)


CNN.co.jp : 「1984年」の売り上げ急増、トランプ政権が影響? - (1/2)

「1984年」の売り上げ急増、トランプ政権が影響?
2017.01.25 Wed posted at 12:46 JST

(CNN) トランプ新大統領が就任した米国で、ジョージ・オーウェルの小説「1984年」がベストセラーランキングの上位に浮上している。

米ネット通販大手アマゾンの売り上げランキングでは、24日午前に1984年が6位に浮上。23日のランキングでも5位〜7位で推移していた。

近未来の全体主義国家を描いた同小説は1949年に出版され、20世紀有数の影響力を持つ小説と評されている。全体主義国家「オセアニア」が「ニュースピーク」という言語を使って思考の自由を統制するという筋書きで、政府は監視を張り巡らし、宣伝文句を用いて絶対君主「ビッグ・ブラザー」の正当性を強要する。

トランプ政権のショーン・スパイサー大統領報道官は20日に行われた就任式の聴衆の規模について、就任式の「期間」としては史上最大だったと発言した。しかし写真や統計が裏付ける現実はその逆だった。

トランプ大統領側近のケリアン・コンウェイ氏はその後、スパイサー氏が誤った説明をしたことについて「alternative facts(代替的事実)」だったと弁護した。

この発言は、1984年の小説に登場する「真実省」を思い起こさせる。オーウェルによれば、真実省では「うそ」を操っていた。

注目されたのはトランプ政権のためだけとは限らない。米国内では多くの学校が同小説を必読書と位置付ける。米中央情報局(CIA)元職員のエドワード・スノーデン氏が米政府による国民監視の実態を暴露した2013年にもベストセラーに浮上していた。

(CNNより)


1984』は1984年を迎えようとしていた1983年末に話題になったことがあった。私は本当の「1984年」の元旦に新庄哲夫訳のハヤカワ文庫版で初めて読んだが、その後処分してしまい、2012年に高橋和久のハヤカワ文庫新訳版で再読した。オーウェルでは他に『動物農場』を3人の訳者の本で読んだ。1984年に高畠文夫訳の角川文庫版、2012年に川端康雄訳の岩波文庫版、2013年に開高健訳のちくま文庫版。「すべての動物は平等である。しかしある動物はもっと平等である」という名文句は忘れがたい。『1984』は読みにくいと感じる読者も少なくないらしいから、興味のおありの方は『動物農場』を先に読まれた方が良いかもしれない。『動物農場』はスターリントロツキーレーニンらを直接のモデルにしているが、トランプも負けず劣らずの「オーウェル的人物」であるあたりが権力(者)の性なのであろう。

私は正直言って、最初に総理大臣になる5年も前の2001年にNHK教育テレビの番組を改編させたことを皮切りに、2014年にはNHK会長に籾井勝人を送り込み、昨年には自らにとって不都合なキャスター3人の首を相次いで飛ばした(陰険な)安倍晋三こそ『1984』的権力者であって、気に入らないマスメディアの報道にいちいち噛みついている(陽性の)トランプなど『1984』的権力者になるための入り口に立っているに過ぎないと思う。

ただ、面白いと思うのは、安倍晋三は権柄ずくでNHKをはじめとするマスメディアを屈従させたのに対し、トランプを大統領に押し上げる過程で数多くSNSなどで撒き散らされたという「偽(嘘)のニュース」は、日本でいうネトウヨのようなアメリカの草の根右翼によって流布した方が権力者(トランプ)に先行しているように見えることだ。もちろん日本でもネトウヨによるでたらめな風説の流布は昨今目立つが、それよりも2001年に安倍晋三NHKの番組を改変させた方が早かった。「4年遅れの安倍晋三」トランプ(ことメディア工作に関しては、トランプは安倍晋三より4年どころか15年も遅れているとさえ思われる)の場合は草の根の動きが権力者のそれに先行しているかのように見える。

なお、トランプがよく言う「不正選挙」については(これにはトランプ陣営自身が本当に不正投開票を行っていた疑惑が指摘されているが)、2012年の衆院選で「小沢信者」がトランプに先行して同様の風説を撒き散らしていたことも指摘しておこう。そんな「小沢信者」たちがいま「トランプ擁護」の論陣の先頭に立っていることは決して偶然ではない。「小沢信者」どもを揶揄する「ネットde真実」という言葉も、数年前から日本にはあった。