kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

星野仙一らしい采配だった

いかにも、星野仙一らしい采配だった。
接戦になったら、また岩瀬仁紀を救援に送るだろうと思っていたら、本当にそうした。そして岩瀬は、打たれるべくして打たれた。
これは、阪神タイガースの大投手だった村山実にも似た、星野仙一の現役時代から続く、滅びの美学のような生き方から来ているように思えてならない。

思い出すのが5年前の日本シリーズだ。ダイエー阪神の間で行われたシリーズは、福岡での最初の2戦にダイエーが連勝したのだが、中でも第2戦に先発した伊良部秀輝(先日暴行事件を起こして逮捕された)は序盤から打ち込まれ、阪神は13対0という屈辱的なスコアで敗れた。

しかし、本拠地ではめっぽう強い阪神は、甲子園でダイエーに3連勝して対戦成績を3勝2敗と逆転し、再び福岡に乗り込んだのだった。阪神の先発は、第6戦がムーア、第7戦がエースの井川慶と予想されていた。第2戦で乱打された伊良部は、もうシリーズでは使われないだろうと誰もが思った。

ところが、星野監督は、第6戦の先発に伊良部を起用したのである。伊良部は星野の期待に応えることができず再び打ち込まれて阪神はまたも大敗、これでダイエー打線を勢いづかせてしまい、阪神は続く第7戦でもムーアが打たれて一方的な敗戦を喫し、18年ぶりの日本一を逃したのである。

この時の相手、ダイエーの監督は王貞治だった。王もまた、短期決戦に強い監督とはいえない。巨人監督時代の1987年には西武、2000年の「ON対決」では巨人にそれぞれ2勝4敗で完敗したほか、2004年と2005年には、2年連続でシーズンを首位で終えながら、プレーオフで敗れてリーグ優勝を逃した。

しかし、王には運がある。2006年のワールド・ベースボール・クラシックでは、2次リーグで敗退かと思われたところに、アメリカがメキシコに敗れる大番狂わせで決勝トーナメントに出場する命拾いを得た。そして、同大会の初代王者の監督という栄誉を得たのである。

もう一つ、王貞治が幸運だったと思うのは、過去二度も日本シリーズ星野仙一と対戦したことだ。前記の2003年のダイエー阪神の4年前、1999年にダイエー対中日の日本シリーズで両者が対戦した時も、王貞治率いる福岡ダイエーホークスが勝った。

王監督が短期決戦を制したのは、星野仙一を破ったこの二度と、前記ワールド・ベースボール・クラシックの計三度だけだ。

逆に星野仙一が短期決戦を制したことは一度もない。「悲運の闘将」といわれた西本幸雄は8度も日本シリーズに敗れたではないかという人もいるだろうが、西本は阪急監督時代、「強い巨人」に挑んでその度に跳ね返された人だ。一方星野仙一が監督として出場した三度の日本シリーズは、いずれも星野が率いるチームに分があるという下馬評だったが、星野はそのすべてに敗れた。今回だって、韓国のプロ野球が日本より強いと思う人は誰もいないだろうが、それでも星野は敗れたのである。

前回のアテネ五輪に続いて、日本の野球チームは「監督で負けた」と言われても仕方ないだろう。