kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「消費増税 vs. 歳出削減」という二択の議論にしてしまう最低のNHK報道

「きまぐれな日々」にTBいただいた下記ブログ記事を読んで、NHKの最低な報道ぶりに呆れた。

ニコブログ 6月21日 NHK「ニュースウォッチ9」 消費増税VS歳出削減


番組の内容はリンク先をご覧いただくとして、私は『ニコブログ』管理人さんの下記のコメントに共感した。

素晴らしく最低なVTRでした。
NHKは最初から「消費増税VS歳出削減」という二択の議論にしていました。
増税=消費増税」「消費税ありき」はもう当たり前の前提条件になっています。ちなみに所得税の話はまったくありませんでした。消費税率をなるべく早く引き上げるか、歳出削減を国民が納得する程度まで行ってから引き上げるか、その違いだけです。どちらを選択しても、消費税の引き上げという結論は変わりません。

(中略)

日本の税収が25年前の水準に留まっているのは、なぜでしょうか。もっと言えば、消費税を導入し、5%に引き上げても、25年前の水準に留まっているのは、なぜでしょうか。そもそも消費税は、社会福祉目的で導入されたはずなのに、いまだに最低限のセーフティネットさえ整備されず、それでも税収不足なのは、なぜでしょうか。おかしいと思いませんか。「税収不足の構造」の理由は、所得税法人税の減税です。これまでの法人減税は消費増税でほぼ穴埋めされています。税収が増えないはずです。私はブログを開設してからずっと所得税の分離課税と累進課税の見直し、法人税の見直し(課税ベース拡大など)を主張していますが、それは富裕層と大企業への優遇税制になっているからです。政府も国民も企業も応分の負担をしない限り、公平な税制にはならないからです。

英国人トレーダーの「欧州では20%が普通の消費税率だ」という発言も恣意的でしたね。たしかに欧州では20%は普通ですが、生活必需品は無税、または低税率なことが多く、低所得者層への逆進性に配慮されています。また、社会保障や教育では日本と比べものにならないほど充実しているので、子育てや老後の生活にかかる負担(不安)も少ないです。日本とは根本的に社会のあり方が違います。そして、NHKは分かった上でこの発言を流しているので悪質なのですが、税収に占める消費税の比率は日本も欧州もだいたい同じくらいです。もし10%にすると、低所得者層への逆進性を考慮して軽減措置をとっても、日本国民の消費税の負担はとんでもなく重いものになり、特に低所得者層の「租税負担能力」をはるかに超えてしまいます。私は国民も企業もそれぞれの「租税負担能力」に見合った負担をしろと主張しているだけです。それぞれが応分の負担を分かち合い、社会を支えていく、社会とはそういうものだと思います。

増税の前に徹底した歳出削減を行うべきという農業法人経営者、橋本さんの主張もよく分かります。まだまだ手をつけていないムダはたくさんあります。無駄なものは削減することは当然です。しかし、「日本の歳出規模の圧縮する」ことに今は反対です。家計や企業の経理と国の財政を同列で語っても意味はありません。「会社の経理も国の経理も同じ」ではないです。不景気の時に支出を減らす、家計や企業ではそうでしょう。不景気に同じことを国がやると、景気はどうなるでしょうか。さらに不景気になりますよね。国の財政の役割には「再分配」があります。不景気の時には財政出動をして、冷え込んだ民需を「官需」が支え、景気の下支えをします。どのように国民や企業から公平に税金を集め、その税金をどのように公平かつ効果的に再分配するか、それが国の役割です。その当たり前のことをちゃんとやれと私は主張したいだけです。

NHKは勝手に参院選の争点を「財政再建」や「消費税引き上げ」にしないで欲しいものです。


そう、「ムダの削減」は当然だけれども、それを「歳出の削減」なんかにつなげるのではなく、正しい金の使い方に振り替えていかなければならない。

「消費税の議論をする前に徹底したムダの削減をせよ」という言い方をする人は多いが、なぜか再分配という財政の役割に触れない人が多い。先日、『反戦な家づくり』が提唱したアンケート*1の設問からも、その観点が抜け落ちていたので、私は賛同しなかった。同ブログは、結局設問には手を加えずにアンケートを実施するようだが*2普天間基地移設問題はともかく、税制についてはあの設問では、新自由主義政党「みんなの党」の躍進に手を貸すだけだろう。

発足直後の高支持率を過信して消費税増税を打ち出した菅首相の発言で、いちばん得をしたのは「みんなの党」である。菅首相が消費税増税を言い出す前には、渡辺喜美は消費税増税やむなしに傾いていた。臆面もなく「小さな政府」を目指し、公務員叩きで集票する「みんなの党」は最低である。再分配を重視する政治勢力は、「右」の国民新党と「左」の共産党社民党だけであり、参院選で勢力を伸ばすべきはこの3党だと思っているが、財政による再分配の意義を広く知らしめる努力なくして、この3党が議席を伸ばすことはないだろう。

だから私は、皆さんもっと堂々と「金持ち増税を行え」と主張しなさいよ、と言ってるのだけれど、「金持ち増税」を主張するのって、そんなに後ろめたいのだろうか。