kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

親小沢も反小沢も「政治改革」を総括しない欺瞞

勢力を増す小沢一郎支持の言説と、それを煽る山口二郎の妄言 - kojitakenの日記山口二郎を批判したが、この件に関して『きまぐれな日々』にいただいたぽむさんのコメント*1が納得できるものだったので、以下に紹介する。コメントの前半は、防衛大綱の改定に関するものである。

今回の防衛大綱の意義を「官僚主導の歴代自民党政権ではできなかったことをやる」と語る長島昭久に「自民党以上に危険な民主党」が象徴されているように思えます。

従来の「基盤的防衛力」が、『特定の脅威』を想定せず、自衛隊配置を全国に平均化していたのに対して、今回閣議決定した防衛大綱が掲げる「動的防衛力」は中国・北朝鮮など周辺国をはっきりと敵視、海外活動の日常化や沖縄に今以上の負担を押しつける「南西地域」の軍事態勢強化を打ち出しています。中国・北朝鮮の脅威をあおることで自民党政権ですら大義名分としてきた「専守防衛」さえかなぐりすて、再び「戦争ができる国」へと大きく踏み込んだものと言わざるをえません。
特に、中国の軍事力・近代化を「地域・国際社会の懸念事項」としたことは、ただでさえ冷え込んでいる日中関係を更に悪化させることになるでしょう。
なによりも周辺アジア諸国を「仮装敵国」としたその姿勢からは、アジア・太平洋戦争への反省から出発した戦後の平和主義そのものさえ踏みにじるかのような感すらあります。
決定までのプロセスも先日のTBS「サンデーモーニング」であの岸井成格ですら「戦後の防衛体制の大変換であり、こんな重要なことをろくに国会で討論もせずに決定してしまうとは」と批判していたくらいの強引さです。

山口二郎は最近いくつかのメディアで、民主党政府のふがいなさに対して「政権交代を支持してきた私はリフォーム詐欺の片棒を担いだような責任を感じている」とか言っているそうです。しかし、Kojitakenさんが日記で書かれていたNHK日曜討論」での発言からすると、自分が旗振りをつとめた政治改革がもたらした弊害への責任はほとんど感じられませんね。鳩山政権と菅政権の断絶性を強調することで、政治改革そのものは正当化し、責任は菅政権に全て転嫁しているわけです。池田香代子さんなどが「鳩山政権=善、菅政権=悪」みたいなずれた発言をするのは、この90年代の政治改革がわかっていないことが一因と思いますが、山口氏の場合はわかっているからこそ自己弁護のために言っていると受け止められても仕方ないでしょう。

「日本がアブナイ!」さんの防衛大綱に対する評価がどうにもずれてると思えるのも、そもそもこのブログ主さんが政治改革肯定・小選挙区制での政権交代肯定のスタンスに立っているからでしょう。この方に限らず、「自民党政権の元で憲法改悪寸前までいったのが、政権交代によって救われた」と政権交代の意義を挙げる護憲派の人は多いですが、そういう人にはそもそもなぜ憲法改悪寸前までいってしまったかを考えてほしいです。さらに護憲派を自認しながら、「危ないところで自民党を野に下して憲法を守った」と小沢一郎氏を評価する人もいますが、これって火種をまいておきながら全焼寸前で火消しに加わった人を英雄ともちあげているみたいなものだと思うのですけど。

批判してしまいましたが、それでも「日本がアブナイ!」さんは、防衛大綱に関するエントリをちゃんと書いているだけ一部の自称「リベラル・左派ブロガー」たちよりず〜〜〜っとまともです。防衛大綱も税制改正法人税減税も諫早湾開門もCOP16も都の漫画規制条例も取り上げず、ひたすら小沢氏をめぐる検察、検察審査会、政倫審招致に明け暮れる自称「リベラル・左派ブロガー」ってなんなのでしょう。

2010.12.20 22:32 ぽむ


そうなのだ。

NHKにおける山口二郎の戯言を聞いていて、「あ、この男、すべてを菅執行部のせいにして逃げてやがるな」と思った。

もうみんな、民主党自民党と同じだと知っている。菅ならダメだが、小沢なら良かったというものではない。

私は、小沢でもダメだということをはっきり証明するために、9月の民主党代表選では、いっそ小沢一郎が勝った方が良いと思ったし、繰り返しブログにそう書いた。さらに遡れば、西松事件小沢一郎民主党代表の座を追われず、政権交代小沢一郎が総理大臣になった方が良かったと思っている。

そうなっていれば、参院選で審判を受けたのは、小澤征爾ならぬ小沢政治*2だったはずで、今頃「小沢幻想」などきれいさっぱり吹き飛んでいただろう。

もしかしたら、私が呪って止まない90年代の「政治改革」に対する見直しの機運が起きていたかもしれない。

「政治改革」の結果現出した「保守二大政党制」こそ諸悪の根源だ、と私は考えている。

だが、「政治改革」の批判者は少ない。数少ない批判者だった某有名ブロガーも、今年小沢信者に転向した。

たとえば、来年早々に「小沢政局」が原因で衆院解散総選挙になったらどうなるだろうか。

掲示板を見ていたら、過去数回の自民党民主党の獲得議席を平均するとほぼ同じになるから、自民党民主党も勝てず、両党が拮抗するだろう、などと書いていた人がいた。

私は爆笑してしまった。この人は、小選挙区制の何たるかを知らない。ちょっとした民意の振れを極端に増幅するのが小選挙区制であって、2005年の郵政総選挙では自民党に、2009年の政権交代選挙では民主党に、それぞれ使えない衆院議員が大量に発生し、政治家の質が大きく低下した。2005年の郵政総選挙のあと、自民党の政治家は小泉純一郎に何も言えなくなったし、民主党でも、一時鳩山由紀夫が談合で代表選を回避しようとするなど、ボスたちによる寡頭政治の弊害が強まっている。小沢一郎は、民主党内反主流派のボスだが、民主党代表選で菅直人との政策の違いを際立たせることができなかったことは、何度でも指摘しておく。

そして、来年早々に解散総選挙にでもなれば、これは間違いなく自民党が圧勝する。しかも、「郵政総選挙」を上回る議席数になる可能性もあると私はにらんでいる。「郵政総選挙」当時には、それでもまだ野党・民主党への期待も多少はあったが、今はそれさえもないからである。

今度自民党が圧勝したら、どんな政治家たちが台頭するかは火を見るより明らかで、それは右翼と新自由主義者である。彼らから見れば「ぬるま湯」的に違いない谷垣禎一はたちまち党内から批判の集中砲火を浴び、衆院で圧倒的な多数となった自民党は党内抗争に明け暮れ、政局はさらに混迷するだろう。その結果、権力を握りそうな人間として私が思い浮かべるのは、安倍晋三である。あるいは、安倍の頭の悪さを突いて、稲田朋美あたりが一気に頂点に躍り出る可能性もあるかとも思ったが、稲田には主要ポストの経験はないから、やはり安倍晋三だろう。

これが、「政治改革」の目玉である小選挙区制の行き着く先なのだ。

最近思うことは、自民党が小泉・竹中の「構造改革」を総括することなくして党の再生がないのと同じように、民主党は小沢・菅・鳩山の「政治改革」を総括することなくして党の再生はないということだ。

それこそ、親小沢も反小沢もない。親小沢も反小沢も「政治改革」を総括しないのは、とんでもない欺瞞である。