今回の大震災をNHKが「東北関東大震災」と呼び、そちらの方が新聞社や通信社の大半が用いている「東日本大震災」よりも定着しそうな勢いだったが、私はこの名称を嫌っていた。その理由はまず、1923年の関東大震災と紛らわしいからだ。茨城県や千葉県の太平洋沿岸部など、関東地方でも大きな被害があったが、九段会館の天井崩落による死亡事故などを除いて本当に大きな被害を受けたとはいえない東京の人間が「被災者面」をすることを誘発しかねない「東北関東大震災」という呼称に、私は強い違和感を持っていた。
今回の地震では、東京電力の福島第一原発事故が注目されているし、私もブログでずっと取り上げ続けているが、そもそも福島第一原発のある地域は東京電力の管内ではない*1。福島を前線とする東北地方は、東京電力というか関東地方に侵略されたあげくに、東電の歴史的犯罪によって多大なダメージを受けているのに、首都圏の人間はなぜ東京電力の原発が福島県にあるのかという根本的な問題に触れようとはしない。
「東北関東大震災」という呼称を聞くたびに、私はそのことを思い出したものだ。西日本から出てきて首都圏に住む者なら誰しも、首都圏に居心地の悪さを感じるのではないかと私は常々思っているが、「東北関東大震災」という呼称は、その居心地の悪さをいやでも思い出させるものであり、だからこそ私はこの呼称を大いに嫌っていた。
だから菅内閣が震災名を「東日本大震災」とすると閣議決定したことに少し安堵した。
もっとも、菅内閣は、常日頃から民主党政権に批判的な、というより自民党びいきのNHKが用いている「東北関東大震災」より、政権にやや親和的な朝日新聞や毎日新聞が用いている「東日本大震災」という名称をひいきしたのではないかという気もしないでもない。
ともあれ、NHKが「東北関東大震災」という呼び方を止めるのは良いことだ。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20110401/t10015049201000.html
震災の名称 東日本大震災に
4月1日 17時48分
政府は、1日午後、持ち回り閣議を開き、今回の震災の名称を「東日本大震災」とすることを閣議了解しました。政府は、今後、震災関連の特別措置法や基金を創設する場合などについて、この名称を使用することになります。
今回の地震災害について、NHKはこれまで「東北関東大震災」としてきましたが、政府が閣議で名称を正式に決めたことから、今後は「東日本大震災」とすることにします。