kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「東電OL殺人事件」の再審開始が決定、ゴビンダ・マイナリ元受刑者釈放

佐野眞一の著作で知られる「東電OL殺人事件」の再審開始が決定され、ゴビンダ・マイナリ元受刑者が刑務所から釈放された。

私が佐野の著書を読んだのは昨年のこと。ちょうど正力松太郎の生涯を描いた佐野の大作『巨怪伝』を読んでいた最中だった昨年7月21日、読売新聞が元受刑者の無罪を強く示唆する新事実を報道したのだった。急遽佐野の『東電OL殺人事件』(新潮文庫)が増刷され、絶版になっていた続編の『東電OL症候群』(同)も復刊された。私はそれらを読んだ。

佐野が書いたベストセラーが読売新聞の報道で再び脚光を浴び、「東電福島第一原発事故」の影響もあってかよけいに注目された。昨年9月に明治公園で行われた「さようなら原発集会」で、「東電OL殺人事件 無実のゴビンダさんを救おう」と書かれた幟を目撃したこともある。あの嘘とレイシズムで塗り固められた記事の数々で悪名高いnikaidouが「東電OL殺人事件の被害者は反原発の為消された?」などと陰謀論かましたこともあった。

先日の菊地直子容疑者逮捕の時の江川紹子と同様、佐野眞一はメディアに引っ張りだこだろうなと思っていたら案の定で、『報道ステーション』にも早速出演していた。

だが、これほど騒がれた事件で新証拠が発見されて初めて、再審が認められたことは見逃せない。テレビで佐野眞一はマイナリ元受刑者が日本語で書いた手紙を紹介し、日本語の読み書きがろくにできなかった元受刑者を日本語に堪能にさせたものに言及していたが、私が思い出したのは「狭山事件」の石川一雄氏だった。しかし、この事件の再審は未だに認められていない。今年4月22日に書いた 鎌田慧『狭山事件の真実』を読む - kojitakenの日記 で私は、佐野眞一の『東電OL症候群』に言及して、

佐野は、「いまや警察のデッチあげだということがほぼ明らかになった狭山事件」(新潮文庫版164頁)と書いている。なぜ佐野が狭山事件に言及したかというと、1999年に狭山事件の再審請求を棄却した東京高裁の高木俊夫(1936-2008)が、2000年12月22日に東電OL殺人事件の二審で、一審で無罪判決を受けたゴビンダ・マイナリ被告に逆転有罪(無期懲役)の判決を下したからだ。当然ながら、佐野は高木を痛烈にこき下ろしている。さらに高木は、一昨年に再審で無罪が確定した足利事件で、1996年に控訴棄却の判決を下した裁判長でもある。本当に腹立たしい男だが、残念ながらもう鬼籍に入っているため、どんなに罵倒してもそれが高木に届くことはもうない。

と書いた。

先日には、「名張毒ブドウ酒事件」の再審請求が棄却された。これらの事件の再審が認められるようになって初めて「司法は変わった」と言える日がくるのではないか。