五輪の柔道を見ていて思ったこと。
競技の結果が金メダルではなく、銀メダルだろうが銅メダルだろうがメダルなしだろうが、そのこと自体をどうこういうつもりは全くない。昨日の日本代表2選手は、銀メダルとメダルなしだったが、両選手ともよく健闘したと思う。
しかし、これまでの経緯を思い返して、いろいろ考えさせられるものがあったことも確かだ。
男子60キロ級の平岡拓晃選手は銀メダルを獲得したが、決勝戦で負けた相手は、準決勝で「絶対的な本命」と見られていた選手に勝った選手だった。その「本命」相手ではなかったにせよ、結果の「銀メダル」は実力通り。TBSの『サンデーモーニング』に出ていたかつての「女三四郎」山口香氏もそう言っていた。そのあとのテレ朝の番組になぜか出演していた「国民の生活が第一」の谷亮子参院議員は、「前回北京五輪に出た時(1回戦敗退)の経験を活かした」と言った。
谷参院議員の言葉を借りるなら、女子48キロ級の福見友子選手は「前回北京五輪に出られなかったから経験を活かすことができずに負けた」といえるかもしれない。前述の山口香氏は福見選手を「モスクワ五輪をボイコットしてロス五輪で負けたマラソンの瀬古利彦選手」にたとえた。
福見友子 - Wikipedia より。
2007年
4月、北京オリンピックを翌年に控え迎えた全日本選抜柔道体重別選手権大会48kg級の決勝で、出産のため2年ぶりの復帰となった谷亮子と再び対戦し、出足払いで有効を奪って勝利、初優勝を果たした。しかし、実績を重視した全日本柔道連盟の意向でこの年の世界柔道選手権大会代表には選ばれなかった。翌年のオリンピックまでに世界的な実績を積むための唯一の大会への出場が叶わず北京オリンピック出場も絶望視されることとなり、この選考は大きな物議を醸すこととなった。
「これはひどい」と言いたくなるような経緯だったようだ。当時、この選考を厳しく批判したのが山口香氏だったという。
テレ朝の番組で、谷参院議員がこの経緯に全く触れなかったことは言うまでもない*1。
「情実選考」は競技そのものを弱体化させてしまう例といえるのではないか。過去には男子の柔道でも感心できない選考があったし、マラソンの瀬古が1988年のソウル五輪に出た時の選考にも無理があった。瀬古の場合は、モスクワ五輪のボイコットがその後2大会にわたってたたってしまった形ではなかったか。