kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

第2次安倍内閣の支持率は毎日52%、朝日59%、日経62%、共同62%、読売65%。そしてFNN産経は55%(笑)

各種マスメディアの第2次安倍内閣の支持率調査で最初に目にしたのは毎日新聞だった。52%という結果に、ま、そんなもんだろうと思った。ところが次に読売の調査で65%をいうのを見つけて、いくら何でも高すぎるんじゃないかと思った。朝日新聞は数日前の朝刊を見て知った。59%だった。日経と共同通信はともに62%だった。

私の記憶では、第1次安倍内閣の支持率調査は読売>毎日>朝日の順だった。小泉人気と、安倍晋三の総理大臣就任直前にマスコミが作り上げた大人気からすれば、意外に低い数字だとされていたはずだ。そう思って調べてみたが、当時は朝日63%、毎日67%、読売70%、日経71%、共同65%だった。第1次と第2次を比較すると、毎日の下げ幅がもっとも大きく15ポイント減、次いで日経の9ポイント減、読売、朝日と共同はいずれも3〜5ポイント減の微減だ。だから毎日の読者は「やっぱり安倍晋三は前回よりも期待されてないんだな」と思い、読売、朝日や地方紙の読者は「なんだ、前回と同じ程度か」と思ったかもしれない。

なお、私の実感からしたら、内閣支持率なんかたいていの内閣では30%台か40%台くらいが当たり前というか、その程度の批判的な感覚は有権者がチェック機能を果たすために本来持っていてしかるべきだと考えているから、毎日調査の52%でさえ「高すぎる数字」としか思わない。

それにしても、下が52%で上が65%とはずいぶん差があるものだとは思った。案の定、それをあげつらった記事が夕刊フジに載った。


http://blog.sugawarataku.net/article/61104112.html

安倍内閣支持率、メディアによってこんなに違う!!


 安倍晋三首相率いる「危機突破内閣」の発足を受けた、報道各社の世論調査が出そろった。注目の内閣支持率は、読売新聞が65%で、毎日新聞が52%となるなど、開きが見られた。傾向として、安倍内閣の経済・外交政策に好意的なメディアは高く、批判的なメディアは低く出る、興味深い結果となった。

 内閣を支持する理由としては、読売では「これまでの内閣よりよい」(41%)がトップで、「政策に期待できる」(20%)、「自民党中心の政権だから」(12%)。共同通信では「経済政策に期待できる」(29・7%)が最も高く、「他に適当な人がいない」(27%)、「首相を信頼する」(11・9%)と続いた。

 閣僚・党役員人事について、日経新聞は「評価する」(51%)、「評価しない」(26%)。朝日新聞は「評価する」(46%)、「評価しない」(22%)。毎日はなぜか、麻生太郎副総理兼財務相太田昭宏国交相の名前を挙げて、「こうした大臣の顔ぶれを見て、期待できますか、期待できませんか」と聞き、結果は「期待できる」(45%)、「期待できない」(49%)だった。

ZAKZAK 2012.12.28)


ところが、なぜかこの記事には自グループのはずのFNN産経グループの世論調査結果が載っていない。それを突いたのが菅原琢東京大学先端科学技術研究センター准教授のブログだった。以下引用するが、エントリの趣旨は当ダイアリーが時々やるようなフジサンケイグループに対する揚げ足とりをするようなふざけた記事ではなく、マスメディアの世論調査に関する俗説を批判する真面目な記事である。


http://blog.sugawarataku.net/article/61104112.html より

安倍内閣に批判的なメディアは内閣支持率が低いという俗説について


■残念な世論調査攻撃
 一部のフリージャーナリスト、あるいは週刊誌やスポーツ紙の記事執筆者は世論調査を毛嫌いしている。それなりに適切な世論調査を行うためには、それなりの資金力が必要であり、現代において世論調査報道は大手メディアの独占物であるかのようになっている。こうした大メディアへの対抗心、悪く表現して嫉妬が、近年の世論調査叩きのベースにあるのは間違いないだろう。もちろん、それを読んで喜ぶ読者が向こう側にいてのことである。

 もっとも、こうした業界内ルサンチマン的な批判は、結局自らの調査不足、無知などをさらけ出すだけに終わることが多い。たとえば2012年の衆院選期間中に大量にRTされた週刊ポスト「鳥越俊太郎氏 若者ら除外する世論調査結果の信憑性に疑問」という記事では鳥越俊太郎氏が「選挙に関する世論調査の結果を発表する前に選挙の担当者が数字を"調整"するのをしばしば見てきた」と述べているが、事前情勢報道と通常の世論調査の区別がついていないように見受けられる(事前予測でどのような「調整」を行うかは、吉田貴文『世論調査と政治―数字はどこまで信用できるのか』講談社プラスアルファ新書)を参照)。

 同じく週刊ポスト「大手新聞 世論調査は質問の仕方で結果を操作できると認める」という記事では、「操作」という言葉を用いているが、単に回答者の意見の強さと質問の仕方の組み合わせによって数字が異なるというだけである。新聞各社の質問文は維新の会の国政進出表明前から変わっておらず、意図して質問文を作っているわけではないことは明らかであり、まして人々の意見を変えたりできるわけではない。本当に操作したいなら、普通に考えて自民党の支持率を変えるだろう。携帯電話しかもたない若者層が反映されていない、主婦と年金生活者しか回答しないなどと、世論調査手法に欠陥があると吹聴してまわる人物も多いが、それらが実際にどれくらい歪んでいるかを計算して示した例は見たことがない(簡単に読めるものとしては福田昌史「世論調査「固定電話対象」は正確か」毎日新聞』2010年11月26日を参照)。


内閣支持率の相違をめぐる俗説
 さて、こうした残念な世論調査批判の新しい例が、夕刊フジ「安倍内閣支持率、メディアによってこんなに違う!!」である。エクスクラメーションマークを2つも付けていることから、「傾向として、安倍内閣の経済・外交政策に好意的なメディアは高く、批判的なメディアは低く出る、興味深い結果となった」という事実を、読者にも同様にびっくりしてもらいたいということなのだろう。2ちゃんねるまとめを見る限り、その思いは通じているようである。

 日経や読売で内閣支持率が高く、毎日新聞で低いといった結果は、たしかに「経済・外交政策に好意的なメディアは高」いという指摘に一致するように見える。だが残念なことに、この夕刊フジの記事執筆者は、親会社である産経新聞世論調査結果を忘れていたようである。もしくは、「想定通り」高い数字を出してくれると信じていたのかもしれない。しかし、FNN産経新聞合同世論調査内閣支持率は55%と毎日新聞に次いで低い値であった。さて、いつから産経新聞安倍自民党に批判的になったのだろうか?

 この、政府に近いと内閣支持率が高く、批判的だと低いという俗説は、自民党政権時代にしばしば聞かれたものである。だが、民主党政権に代わっても、日経、読売は高く、毎日、朝日は低いという傾向は変わらなかった。調査社ごとの支持率の傾向は、政府への態度は無関係に決まっているのである。支持率の高低の傾向は、調査の設計、つまり質問文・選択肢や聞き方によってほとんど決まっていると考えられる。たとえば日経新聞世論調査では、日経リサーチの質問文を見てのとおり、「(「いえない・わからない」と回答した方に)お気持ちに近いのはどちらですか」と重ね聞きし、結果を内閣支持率としているため、数値は高くなる。一方、毎日新聞は「関心がない」という選択肢があるため、支持率は低くなる。

 このような議論は「内閣支持率が新聞ごとに違うのは、新聞の論調によって回答拒否(あるいは迎合回答)が発生するからだ、という説について」というエントリですでに書いている。このときは麻生内閣鳩山内閣の異なる時期の支持率を朝日と読売で比較している。この議論をネタにしたレポート課題を授業でも出しており、これは「データで政治を可視化する」荻上チキ編『日本の難題をかたづけよう』光文社新書)で練習問題として採録し、簡単に解説している。


上記引用部分に続いて、野田内閣と第2次安倍内閣のそれぞれについての初回世論調査の相関をプロットしたグラフが出ていて非常に興味深いので、興味がおありの方はリンク元記事を参照されたい。引用しなかった部分に、思わず吹き出してしまうくだりがあるので、是非おすすめである(笑)。

菅原准教授のブログ記事の末尾に「追記」として書かれた文章に説得力があるので、再び引用する。

(追記)なお、第2次安倍内閣支持率が最も低かった毎日新聞「内閣支持率:世論調査 「無関心」反映、各社で差 重ね聞きも影響」という記事を掲載している。「今回の衆院選が戦後最低の投票率だったこと」と第3の選択肢「関心がない」の割合の高さの相関を指摘し、説得的である。今回の支持率の動きに関しては、毎日新聞の選択肢のほうが実情を反映することができているように感じられる。


以下に、菅原准教授がリンクを張った毎日新聞記事を引用する。

内閣支持率:世論調査 「無関心」反映、各社で差 重ね聞きも影響


 第2次安倍内閣発足を受けた報道各社の世論調査が28日、一斉に発表されたが、報道機関によって内閣支持率に差が生じた。最も高い読売新聞(65%)と最も低い毎日新聞(52%)とでは13ポイントの幅があった。毎日新聞内閣支持率は、質問の仕方から他社より低く出る傾向がある。内閣の評価が定まっていない段階だったため、よりその傾向が強く出たとみられる。

 毎日新聞は、内閣への支持・不支持を聞く場合、「支持する」「支持しない」に加えて「関心がない」という選択肢がある。この3択方式は、1969年の第2次佐藤内閣からで、以来継続して「無関心層」を調べている。

 今回、「関心がない」と答えた人は21%で、他社の「その他・無回答」より高くなった。不支持率のばらつきは各社でそれほど大きくないため、支持か不支持を決められない人の多くが「関心がない」を選び、毎日新聞の調査では相対的に支持率が下がったとみられる。これは、今回の衆院選が戦後最低の投票率だったことと矛盾しない。

 ちなみに、民主党政権が誕生した09年の前回衆院選後の世論調査では、鳩山内閣の支持率は77%で、「関心がない」は9%にとどまっていた

 このほか、「重ね聞き」をするかしないかの違いもある。「支持する」か「支持しないか」の質問にはっきり答えず、考え込んでいる対象者に、「強いて選ぶとすれば」や「気持ちに近い方は」と問いかけて、どちらかを選ぶように促す調査方式だ。毎日新聞は採用していないが、無回答をできるだけ減らすために採用している報道機関もある。こうした聞き方の違いも、支持率に差が生じた要因の一つとみられる。【福田昌史】

毎日新聞 2012年12月29日 東京朝刊


なお、世論調査については衆院選投票日の少し前に書かれた下記の記事もマークしておく。
単純想起? - Living, Loving, Thinking, Again(2012年12月12日)

この記事にも、「小沢信者」の激怒を買ったり、「言葉狩り」趣味者たちが目を剥いたりしそうな表記があって、そのいずれにも吹き出してしまったことを告白しておく(笑)。