kojitakenの日記

古寺多見(kojitaken)の日記・はてなブログ版

「脱原発」運動に求めたい「三本の柱」

袴田事件再審決定の件、むろん喜ばしいことだが、事件発生・逮捕から再審決定まで実に48年を要し、最近になってDNA型鑑定によって捜査の捏造がほぼ明らかになり、これが決め手となってやっとのこと元プロボクサーが釈放されたのだった。袴田巌氏は既に78歳。失われた半世紀を取り返すことはできない。

このことは、日本の社会がひとたび権力によって作られた既成事実にいとも簡単に流されてしまい、これを覆すのが困難極まりないことを示すものだろう。原発推進の動きが、東電原発事故を経てさえもなお止まらないこともその一例だと思う。


きまぐれな日々 「脱原発」には老朽原発廃炉と新規原発建設阻止が不可欠だ(2014年3月24日)のコメント欄より*1

再稼働阻止=原発即ゼロに力を割きすぎて支持を失っている感。政治的に見ると菅内閣末期の責任が大きい気がする。そもそも浜岡は即時停止するのに、その他の原発は従来の安全基準でフル回転して恩恵を受けていたのだから、その隙間はかなり幅が広かった。しかしストレステストを持ちだして、ある時期から再稼働と闘うことで政権浮揚を狙うようになり、それが一部で喝采されて今に至る反原発運動の軸の一つになった。菅自身も今でも変わっていないようだ。

もっとしたたかに、再稼働については柔軟に対応した上で、まさに新規建設の問題や、廃炉時期について、いずれも各原発それぞれの事情に応じてきめ細かに判断し、将来に楔を打つやり方もあったのではないか。

2014.03.27 15:04 吉見


原発再稼働へのハードルが高くなっている現状は、2011年5月に中部電力浜岡原発を停止したあとの、同年8月の九州電力玄海原発の再稼働を、菅直人が認めなかったことに端を発しているのは確かでしょう。ただ、菅直人がストレステストを言い出したのは2011年7月であって、その前月に菅は政権を降りることを明言していた*2ので、「再稼働と闘うことで政権浮揚を狙うようにな」ったというのは、当を得ていないと思います。それはおそらく、「東電原発事故で日本が終わるかもしれない、原発対応をアメリカに任せたら占領されてしまうようなものだ」という、菅直人が抱いた恐怖心に発する、「原発なんかもうこりごりだ」という思いから発した政策でしょう。

その時点から、「再稼働については柔軟に対応した上で、まさに新規建設の問題や、廃炉時期について、いずれも各原発それぞれの事情に応じてきめ細かに判断し、将来に楔を打つやり方」なんかをしていたのでは、現在安倍政権が進めている原発推進政策は、もっと東電原発事故前の状態に近く進んでいたのではないかと思います。現在原発が1基も稼働していないことも、「ひとたび権力によって作られた既成事実にいとも簡単に流されてしまう」ことの表れであって、その慣性力を当時の権力者・菅が作ったことはそれなりに評価すべきだというのが私の意見です。

そうはいっても、現在電力会社や経産省(や電力総連)の意を受けた安倍晋三が、ずっと以前から続いている「原発推進」の流れを、東電原発事故前のように太く強く大きな流れに「トリモロ」そうとしているわけですから、それに対して「せーんだーいげーんぱーつ、さいかどーおはーんたーい」、「やっぱりダメだったあ」、「いーかーたげーんぱーつ、さいかどーおはーんたーい」、「やっぱりダメだったあ」というようなパターンを延々と繰り返すだけでは、「脱原発」運動に未来はない、と私は言いたいわけです。もちろん、その批判の対象には菅直人自身も含まれます。

当面再稼働されようとしている原発への再稼働反対のデモも必要でしょうけど、勝算の高い戦いを早期に勝ち取ることを考えなければなりません。たとえば運転開始後既に44年が経過し、過去にもトラブル隠しで悪名の高い関電の美浜原発1号機が今後再稼働される可能性は1%もないでしょうが、これを早く廃炉に追い込むことを考えねばなりません。電力各社が廃炉に必要な費用の捻出に苦しめば、沖縄電力を除く9電力会社のうち、もっとも原発依存度が低かった中国電力に上関原発の建設を断念させることにもつながります。中国電力には、原発依存度が低いことが他社と比較しての自社のメリットであることを認識させる必要があります。

さらに、今後日本社会の高齢化が進むにつれて、遠くない将来必ず中止に追い込まれると私が確信しているのが核燃サイクルですが、安倍晋三は核燃サイクル推進をうたった政府のエネルギー基本計画案が閣議決定もされる前から、ハーグで開かれた第3回核安全保障サミットで、勝手に日本の「核燃サイクル推進」を明言しました。下記はその直前の東京新聞の記事。


http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014032102100003.html

首相 了承なく「推進」 核燃サイクル 与党協議の中


 安倍晋三首相が二十四、二十五両日にオランダ・ハーグで開かれる第三回核安全保障サミットで、原発の再稼働を前提に、使用済み核燃料から取り出した核物質プルトニウムを再利用する「核燃料サイクル」の推進を表明することが分かった。核燃料サイクルを「推進する」と明記した政府のエネルギー基本計画案に対しては、与党内で反対論が根強く、まだ閣議決定がされていない。政府・与党の意思決定前に、世界に向けて日本が将来も原発を維持する方針を発信することになる。

 プルトニウム核兵器の材料となるため、利用目的がはっきりしないまま大量に保有していれば、テロや核拡散を招くとして国際社会から疑念を持たれる。日本は長崎に落とされた原爆の五千発以上に相当する四十四トンものプルトニウム保有している。

 首相は核サミットで「利用目的のないプルトニウムはつくらず、保持しない」との方針を表明。安全が確認された原発は再稼働させて、核燃料サイクルによりプルトニウムを使っていく考えを示す。

 ただ、大量のプルトニウムを消費するのに何年かかるかの見通しは立っていない。再利用を名目に長年にわたって原発を動かし続けることになりかねない。

 核燃料サイクルに関しては、取り出したプルトニウムを利用するはずだった高速増殖原型炉もんじゅ福井県)はトラブル続きでほとんど動いていない。通常の原発で使用済み核燃料のプルトニウムを使うプルサーマル発電も、通常の核燃料に比べて二倍の高レベル放射性廃棄物が発生するなど問題が多い。

東京新聞 2014年3月21日)


この「核燃サイクル」に対する関心が、一般国民のみならず、政治家の間でも低いことは、一昨年、「生活の党」の議員たちの多くが原発再稼働に反対しながら核燃サイクルを容認していた*3ことからも明らかでしょう。

私は今後、「脱原発」運動は、下記の3点を強く求めてもらいたいと思います。

  • 老朽原発の早期廃炉
  • 新規原発建設の絶対阻止
  • 核燃サイクルの早期中止

これらを伴ってこそ「再稼働反対デモ」にも意義が生じるのであって、現在の「脱原発」運動には、いささか上滑り気味ではないかとの懸念を持っています。

*1:http://caprice.blog63.fc2.com/blog-entry-1339.html#comment17776

*2:当時から当ダイアリーで推測していたように、菅直人は最初から3か月程度、すなわち2011年8月末を目処に総理大臣を辞めるつもりだったと思われる。その3か月すら待てずにギャーギャー騒いでいたのが「小沢信者」どもだった。

*3:さすがに現在では「生活の党」は核燃サイクルに反対している。